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新たな出発

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 ルーク様の言葉は、全部嘘だったのですね。
 全く気づかなかったなんてバカですね。
 嘘の言葉で騙され、旦那様を愛してしまうなんて……本当にバカ。

 荷造りしながら、自分のバカさ加減に呆れるシャーロット。
 
 ルークがシャーロットと結婚する前の爵位は、子爵だった。3年前、シャーロットが嫁いで直ぐに、ルークが治めていた国境近くの小さな村に魔物の大群が向かって来たのだが、シャーロットは結界を張り、村は無事だった。
 それまでその村は、魔物に襲われる事が多々あり、ルークは頭を抱えていた。そんな時に、シャーロットと出会ったのだった。
 村を魔物の大群から無傷で守った功績をたたえられ、ルークは伯爵へと陞爵したのだった。小さな村だったが、この村が魔物の大群に壊滅されていたら、王都まで攻め込まれていただろう。
 伯爵になった事で、国王から土地を授かり、治める領土が広くなっていた。シャーロットは毎日広い領土に結界を張り続けていた。そのせいか、寝不足でクマが酷く肌が荒れ、気疲れで顔色も悪く青白い。髪はいつもボサボサで、色気も何もない。

 最近の私は、酷い容姿なのは分かっていました。結界の為とはいえ、女性として、妻としては失格でしょう。ですが、旦那様は最初から私に興味がなかった……欲しかったのは、聖女の力なのだから、これが旦那様の望み通りだったということですね。
 私は……旦那様に、一度も抱かれたことはありませんでした。そんなことをしてしまったら、聖女の力がなくなってしまうかもしれないと、旦那様は私に手を出しませんでした。……興味のない女に、手を出さなかっただけではないですか。 

 もう、過ぎたことを考えるのはやめやめ! これから、どうしましょう。 19歳になったので、孤児院には戻れませんし……とりあえず、王都に行ってみようかな。
 聖女として、何かお仕事があるかもしれません。
 
 シャーロットは離婚の書類にサインをし、荷物を持ち、邸を出て行く為に玄関へと向かっていると……

 「シャーロット様! お待ちください!」

 使用人のトーマスに呼び止められた。

 「トーマス……ごめんなさい。私は、ここを出ていくわ。 」

 トーマスは使用人の中でたった一人だけ、孤児院育ちの私をバカにしなかった。それだけではなく、毎日結界を張り続けていた私を気遣ってくれていた。平和なのが当たり前になった事で、私なんて必要ないと使用人達が噂していた時も、庇ってくれた。
 
 「俺も一緒にいきます!」

 「え? 私はお金もないし、あなたを雇うことも出来ない。だから……」

 「何を言われても、ついて行きます。お金などいりません。友として、今まで俺達を守ってくださった恩返しをさせて下さい!」

 「トーマス……ありがとう。何も持たない私だけど、一緒に行きましょう!」

 「ありがとうございます! さあ、こんなとこさっさと出ましょう!」

 トーマスはシャーロットが持っていた荷物を持ち、歩き出した。

 一人ぼっちになるのはちょっと心細かったから、トーマスに感謝しなくちゃ!

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