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33、好きな人との食事

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 「父上の命について、聞きたいのだったな」

 自分で聞いたのに、忘れていました。

 「ホークダムへ行っていたのだ。ホークダムの王子が結婚する事になったから、その結婚式に行っていた」

 ……え? 
 それのどこが、極秘の命なのでしょう??

 「それのどこが、極秘の命だと思っているな?」

 コクコクと頷きます。

 「極秘の命ではないからな」

 「……えっと……?」

 「シェイドが勘違いをしただけだ。全く、シェイドはそそっかしいからな」

 シェイド様の勘違いだったのですね。
 それじゃあ……

 「国王様が、激怒されていたというお話は?」

 「それは事実だ。俺は、ずっと縁談を断って来たからな。それなのに、伯爵令嬢に執心とはどういう事だ! って、怒鳴られた」

 やっぱり、国王様に叱られたのですね。

 「それを狙って、エリックが噂を流したんだろうな。だが、本気なら好きにせよと、父上は認めてくださった。エリックにとっては、誤算だっただろうな」

 あの噂で、エリック様は私とリオン様を引き離したおつもりだったのですね。でも逆に、国王様公認になれました。

 「リオン様は前に、ご自分に何かあっても気にするなと仰いました。あれは、エリック様が噂を流していると気付いていたからなのですか?」
 
 リオン様からしたら、友を裏切った形になってしまいました。エリック様に記憶が残っていると気付いていたなら、ご自分の身が危ういという事を感じていたのでしょうか。

 「よく覚えているな。エリックを裏切ったのは事実だから、何をされても仕方がないと思っていた。だが、今は違う。あいつが君にした事を許せないし、あいつに君は渡せない」

 「絶対ですよ? 絶対、何があっても、私を渡さないでください!」

 リオン様がエリック様を裏切ったのではありません。私がリオン様を求めているのです。だから、苦しまないでほしいです。


 馬車は街で一番大きなレストランの前で止まりました。

 「初めてのデートだから、記憶に残るように完璧にするぞ」

 差し出したリオン様の手を、しっかりと握りしめてお店の中へ入りました。
 お店の中には、お客さんが誰もいません。これって、貸し切り!?

 「客はいない方が護衛も楽だから、貸し切りにした」

 耳を真っ赤にしてるところを見ると、理由は違うようです。完璧……ということですね。
 テーブルに着くと、注文をしていないのに、次々と料理が運ばれて来ます。

 「美味しい……」

 料理はどれもこれも美味しくて、頬っぺたが落ちそうです。このお店には何度か来た事がありますが、こんなに美味しいと感じるのは、リオン様と一緒だからでしょうか。

 「君はすごく美味しそうに食べるな。その顔をずっと見ていたいくらいだ」

 食べている所を、じーっと見てくるリオン様。そういえば、リオン様とお茶をいただいた事はあっても、食事をご一緒するのは初めてですね。

 「ずっと食べていたら、太ってしまいます。それに、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」

 恥ずかしさから、フォークとナイフを置きました。

 「たとえ君が太ったとしても、変わらず愛する事を誓うよ」

 そんなに見つめないで欲しいです。胸がいっぱいになって、食事どころではなくなってしまいます。

 「女心を分かっていませんね。リオン様が良くても、私が嫌です。
 大好きな人の前では、いつまでも綺麗な姿でいたいのです」
 
 私の言葉に顔を真っ赤にするリオン様。こちらまで赤くなってしまいます。

 この日は、最高に完璧な1日でした。リオン様は、意外と照れ屋だということも知ることが出来ました。こんな日が、ずっと続けばいいのに……
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