33 / 44
33、好きな人との食事
しおりを挟む「父上の命について、聞きたいのだったな」
自分で聞いたのに、忘れていました。
「ホークダムへ行っていたのだ。ホークダムの王子が結婚する事になったから、その結婚式に行っていた」
……え?
それのどこが、極秘の命なのでしょう??
「それのどこが、極秘の命だと思っているな?」
コクコクと頷きます。
「極秘の命ではないからな」
「……えっと……?」
「シェイドが勘違いをしただけだ。全く、シェイドはそそっかしいからな」
シェイド様の勘違いだったのですね。
それじゃあ……
「国王様が、激怒されていたというお話は?」
「それは事実だ。俺は、ずっと縁談を断って来たからな。それなのに、伯爵令嬢に執心とはどういう事だ! って、怒鳴られた」
やっぱり、国王様に叱られたのですね。
「それを狙って、エリックが噂を流したんだろうな。だが、本気なら好きにせよと、父上は認めてくださった。エリックにとっては、誤算だっただろうな」
あの噂で、エリック様は私とリオン様を引き離したおつもりだったのですね。でも逆に、国王様公認になれました。
「リオン様は前に、ご自分に何かあっても気にするなと仰いました。あれは、エリック様が噂を流していると気付いていたからなのですか?」
リオン様からしたら、友を裏切った形になってしまいました。エリック様に記憶が残っていると気付いていたなら、ご自分の身が危ういという事を感じていたのでしょうか。
「よく覚えているな。エリックを裏切ったのは事実だから、何をされても仕方がないと思っていた。だが、今は違う。あいつが君にした事を許せないし、あいつに君は渡せない」
「絶対ですよ? 絶対、何があっても、私を渡さないでください!」
リオン様がエリック様を裏切ったのではありません。私がリオン様を求めているのです。だから、苦しまないでほしいです。
馬車は街で一番大きなレストランの前で止まりました。
「初めてのデートだから、記憶に残るように完璧にするぞ」
差し出したリオン様の手を、しっかりと握りしめてお店の中へ入りました。
お店の中には、お客さんが誰もいません。これって、貸し切り!?
「客はいない方が護衛も楽だから、貸し切りにした」
耳を真っ赤にしてるところを見ると、理由は違うようです。完璧……ということですね。
テーブルに着くと、注文をしていないのに、次々と料理が運ばれて来ます。
「美味しい……」
料理はどれもこれも美味しくて、頬っぺたが落ちそうです。このお店には何度か来た事がありますが、こんなに美味しいと感じるのは、リオン様と一緒だからでしょうか。
「君はすごく美味しそうに食べるな。その顔をずっと見ていたいくらいだ」
食べている所を、じーっと見てくるリオン様。そういえば、リオン様とお茶をいただいた事はあっても、食事をご一緒するのは初めてですね。
「ずっと食べていたら、太ってしまいます。それに、そんなに見つめられたら恥ずかしいです」
恥ずかしさから、フォークとナイフを置きました。
「たとえ君が太ったとしても、変わらず愛する事を誓うよ」
そんなに見つめないで欲しいです。胸がいっぱいになって、食事どころではなくなってしまいます。
「女心を分かっていませんね。リオン様が良くても、私が嫌です。
大好きな人の前では、いつまでも綺麗な姿でいたいのです」
私の言葉に顔を真っ赤にするリオン様。こちらまで赤くなってしまいます。
この日は、最高に完璧な1日でした。リオン様は、意外と照れ屋だということも知ることが出来ました。こんな日が、ずっと続けばいいのに……
27
お気に入りに追加
3,005
あなたにおすすめの小説
今更ですか?結構です。
みん
恋愛
完結後に、“置き場”に後日談を投稿しています。
エルダイン辺境伯の長女フェリシティは、自国であるコルネリア王国の第一王子メルヴィルの5人居る婚約者候補の1人である。その婚約者候補5人の中でも幼い頃から仲が良かった為、フェリシティが婚約者になると思われていたが──。
え?今更ですか?誰もがそれを望んでいるとは思わないで下さい──と、フェリシティはニッコリ微笑んだ。
相変わらずのゆるふわ設定なので、優しく見てもらえると助かります。
お姉さまが家を出て行き、婚約者を譲られました
さこの
恋愛
姉は優しく美しい。姉の名前はアリシア私の名前はフェリシア
姉の婚約者は第三王子
お茶会をすると一緒に来てと言われる
アリシアは何かとフェリシアと第三王子を二人にしたがる
ある日姉が父に言った。
アリシアでもフェリシアでも婚約者がクリスタル伯爵家の娘ならどちらでも良いですよね?
バカな事を言うなと怒る父、次の日に姉が家を、出た
前世の旦那様、貴方とだけは結婚しません。
真咲
恋愛
全21話。他サイトでも掲載しています。
一度目の人生、愛した夫には他に想い人がいた。
侯爵令嬢リリア・エンダロインは幼い頃両親同士の取り決めで、幼馴染の公爵家の嫡男であるエスター・カンザスと婚約した。彼は学園時代のクラスメイトに恋をしていたけれど、リリアを優先し、リリアだけを大切にしてくれた。
二度目の人生。
リリアは、再びリリア・エンダロインとして生まれ変わっていた。
「次は、私がエスターを幸せにする」
自分が彼に幸せにしてもらったように。そのために、何がなんでも、エスターとだけは結婚しないと決めた。
結婚記念日をスルーされたので、離婚しても良いですか?
秋月一花
恋愛
本日、結婚記念日を迎えた。三周年のお祝いに、料理長が腕を振るってくれた。私は夫であるマハロを待っていた。……いつまで経っても帰ってこない、彼を。
……結婚記念日を過ぎてから帰って来た彼は、私との結婚記念日を覚えていないようだった。身体が弱いという幼馴染の見舞いに行って、そのまま食事をして戻って来たみたいだ。
彼と結婚してからずっとそう。私がデートをしてみたい、と言えば了承してくれるものの、当日幼馴染の女性が体調を崩して「後で埋め合わせするから」と彼女の元へ向かってしまう。埋め合わせなんて、この三年一度もされたことがありませんが?
もう我慢の限界というものです。
「離婚してください」
「一体何を言っているんだ、君は……そんなこと、出来るはずないだろう?」
白い結婚のため、可能ですよ? 知らないのですか?
あなたと離婚して、私は第二の人生を歩みます。
※カクヨム様にも投稿しています。
絶望?いえいえ、余裕です! 10年にも及ぶ婚約を解消されても化物令嬢はモフモフに夢中ですので
ハートリオ
恋愛
伯爵令嬢ステラは6才の時に隣国の公爵令息ディングに見初められて婚約し、10才から婚約者ディングの公爵邸の別邸で暮らしていた。
しかし、ステラを呼び寄せてすぐにディングは婚約を後悔し、ステラを放置する事となる。
異様な姿で異臭を放つ『化物令嬢』となったステラを嫌った為だ。
異国の公爵邸の別邸で一人放置される事となった10才の少女ステラだが。
公爵邸別邸は森の中にあり、その森には白いモフモフがいたので。
『ツン』だけど優しい白クマさんがいたので耐えられた。
更にある事件をきっかけに自分を取り戻した後は、ディングの執事カロンと共に公爵家の仕事をこなすなどして暮らして来た。
だがステラが16才、王立高等学校卒業一ヶ月前にとうとう婚約解消され、ステラは公爵邸を出て行く。
ステラを厄介払い出来たはずの公爵令息ディングはなぜかモヤモヤする。
モヤモヤの理由が分からないまま、ステラが出て行った後の公爵邸では次々と不具合が起こり始めて――
奇跡的に出会い、優しい時を過ごして愛を育んだ一人と一頭(?)の愛の物語です。
異世界、魔法のある世界です。
色々ゆるゆるです。
教会を追放された元聖女の私、果実飴を作っていたのに、なぜかイケメン騎士様が溺愛してきます!
海空里和
恋愛
王都にある果実店の果実飴は、連日行列の人気店。
そこで働く孤児院出身のエレノアは、聖女として教会からやりがい搾取されたあげく、あっさり捨てられた。大切な人を失い、働くことへの意義を失ったエレノア。しかし、果実飴の成功により、働き方改革に成功して、穏やかな日常を取り戻していた。
そこにやって来たのは、場違いなイケメン騎士。
「エレノア殿、迎えに来ました」
「はあ?」
それから毎日果実飴を買いにやって来る騎士。
果実飴が気に入ったのかと思ったその騎士、イザークは、実はエレノアとの結婚が目的で?!
これは、エレノアにだけ距離感がおかしいイザークと、失意にいながらも大切な物を取り返していくエレノアが、次第に心を通わせていくラブストーリー。
取り巻き令嬢Aは覚醒いたしましたので
モンドール
恋愛
揶揄うような微笑みで少女を見つめる貴公子。それに向き合うのは、可憐さの中に少々気の強さを秘めた美少女。
貴公子の周りに集う取り巻きの令嬢たち。
──まるでロマンス小説のワンシーンのようだわ。
……え、もしかして、わたくしはかませ犬にもなれない取り巻き!?
公爵令嬢アリシアは、初恋の人の取り巻きA卒業を決意した。
(『小説家になろう』にも同一名義で投稿しています。)
公爵令嬢の辿る道
ヤマナ
恋愛
公爵令嬢エリーナ・ラナ・ユースクリフは、迎えた5度目の生に絶望した。
家族にも、付き合いのあるお友達にも、慕っていた使用人にも、思い人にも、誰からも愛されなかったエリーナは罪を犯して投獄されて凍死した。
それから生を繰り返して、その度に自業自得で凄惨な末路を迎え続けたエリーナは、やがて自分を取り巻いていたもの全てからの愛を諦めた。
これは、愛されず、しかし愛を求めて果てた少女の、その先の話。
※暇な時にちょこちょこ書いている程度なので、内容はともかく出来についてはご了承ください。
追記
六十五話以降、タイトルの頭に『※』が付いているお話は、流血表現やグロ表現がございますので、閲覧の際はお気を付けください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる