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7、最悪な出来事
しおりを挟む舞踏会は明日。心を決めた私は、少しだけ気持ちが楽になっていました。
いつものようにドアが開き、エリック様が夕食を運んで来ました。あれから1度も殴られてはいません。エリック様に逆らわず、ずっと従っているからです。
「レミア、今日はもういい。離れに戻れ」
いつもと違い、レミアさんを離れに戻るように言うエリック様。監視は、もういらないと思ってくれたのでしょうか……
「分かりました」
レミアさんは素直に従い、部屋から出て行きました。
「夕食を食べなさい」
そう言われ、エリック様が運んで来た料理を食べ始めます。
「顔はすっかり良くなったね。腕は明日までには治りそうにないけど、階段から落ちたと言って誤魔化せばいい」
舞踏会に出席出来るようです。
「いい子だ。全部食べたね。それじゃあ、ベッドまで運んであげよう」
自分で歩けるけど、拒否したらまた殴られるかもしれないので、大人しく従います。また殴られて、ケガをして舞踏会に行けなくなったら困るからです。
抱き上げられ、私をベッドに下ろすと……チュッとキスをされました!
これはどういうことでしょう!?
「ん……ティアナ……はぁ……」
次第にキスが深くなる……いや……やめて……
彼が服に手をかけた時、
「やめて!!」
私は拒絶していました。
でも、彼の手は止まることはありませんでした!
無理やり押さえつけられ、服を破られ、キスをされる……嫌悪感しかありません。
乱暴に体を触られ、乱暴に犯される……
彼は私が嫌がっているのを、無理やり従わせることを楽しんでいました。
その行為が、どれくらい続いたのかは分かりません。必死に抵抗し続けたのですが、それが彼を喜ばせていたようです。
「最高だったよ。ティアナ」
こんな人、死んでしまえばいい!
そう、心の中で思うしか出来ない無力な自分に腹が立ちます。
彼が初夜以来私を抱かなかったのは、つまらなかったからなのですね。エリック様はきっと、乱暴に抱くのが好きなのでしょう。
この人は、本当に人間なのでしょうか?
私には悪魔にしか思えません。
エリック様は疲れたのか、となりで寝息を立て始めました。私は上半身を起こし、彼を見つめ、そして彼の首に手をかけた……
殺してしまいたい……死んでくれたらいいのに……そう思っても、それ以上手が動きません。
結局、私はただの弱虫です。
首から手を離し、そのまま横になり目を閉じました。
翌朝目を覚ますと、エリック様の姿はありませんでした。昨日のことを考えると、吐き気がして来ます。
鏡の前に立ち、自分の体を見てみると、アザが増えていました。昨日、乱暴にされたからのようです。抵抗することに必死だったから、痛みを感じませんでした。もう、体にアザがあろうと関係ありません。むしろ、良かったのかもしれません。
私は今日、みんなの前で死にます。
きっと私の体は調べられるはずです。この傷だらけの体を見たら、おかしいと分かるはず。
そして、どうして私が死んだのかも調べてくれるはずです。これが私の、復讐です。
朝食を運んで来たエリック様は、とても上機嫌でした。
「最初から昨日みたいに君を抱けていたら、愛人なんて必要なかったのに、遠回りしてしまった」
そうですね。そうなっていたら、3年間悩むこともありませんでした。あなたなんかを、愛した私が悪いのです。
「そうそう、これは今日の舞踏会の為に作らせたドレスだ。美しい君に、とても似合うはずだ」
取り出して見せたのは、真っ赤なドレスでした。品も何もない、下品なドレス。
初めての贈り物ですが、燃やしてしまいたいです。ですが、考えようによっては、素晴らしい贈り物かもしれません。
あなたが初めて贈ったドレスを着て、私は自らの命を絶つのですから。
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