7 / 19
思い出しました
しおりを挟む「どうしたんだ!?」
「……え?」
そう言われるまで気付きませんでした。
涙が溢れ出していたようです。
そして、幸せそうな2人が姿を現しました。
……全て思い出しました。
思い出さなければよかった。
どうして……どうして、レイリック様はハンナと結婚式を挙げているの? これは夢なのですか? それとも、記憶を失い、思い出さなかった罰なのですか?
あの言葉……
『リリス嬢がいいんだ。君じゃなきゃ、ダメだ!』
あれは、偽りだったのですか!?
「ホリード公爵……お邸に、帰りましょう? 帰りたい。」
ホリード公爵の服の袖を引っ張り、止まらない涙を流しながら訴えていました。
「分かった。帰ろう。」
ホリード公爵はそれっきり、何も言いませんでした。帰りの馬車の中でも、何も聞いてこようとはせず、ただ、そこにいてくださいました。
ハンナと私は同じ顔……ホリード公爵は、ハンナをまだ見ていなかったのでしょうか?
私はこれから、どうすればいいのでしょう?
記憶を失う前の最後の記憶は、メイドが泣きながら謝っていた姿。そして、そのメイドが言った、ハンナには逆らえなかったという言葉。
私に毒を飲ませ、殺そうとしたのはハンナという事になります。
あの邸に帰っても、私の居場所なんてない。このまま、ホリード公爵のお邸に居たい……なんて、ホリード公爵にご迷惑ですね。
これ以上、ご迷惑をおかけするわけにはいきませんし、思い出した事をお話ししなくては……
「着いたぞ。」
馬車が邸へ到着したが、ティアは降りようとはしなかった。そして静かに口を開いた。
「……記憶が、戻りました。」
「そうか。」
「私の名前は、リリスです。ブライト伯爵の長女でした。今日の結婚式は、私の妹と……私の婚約者の結婚式だったようです。」
ホリード公爵は何も言わず、ただ黙って聞いてくれている。
「あの日、私が毒を飲まされた日、妹が私の婚約者のドルタ侯爵を、譲って欲しいと言ってきました。私はそれを断った……
私が意識を失う前に、毒を飲ませたメイドが『ハンナには逆らえない』と言っていたので、妹が私を殺そうとしたようです。」
「お前は、どうしたいのだ? 」
「私は……ここに居たいです。
全てを思い出した事で、このお邸で過ごした日々がすごく幸せだったのだと思い知らされました。私はずっと、自分を押し殺して生きてきたのです。そんなある日、初めての幸せが訪れたのですが、その幸せも、ハンナに奪われてしまった。」
「それならば、ここにいればいい。」
まさか、そんな事を仰っていただけるとは思ってもみなかった私は、口を開けたまま固まった。
「なんだそのあほ面は……」
本当に口が悪い……でも、それは照れ隠しだということを知っています。
ホリード公爵はただ、不器用なだけだということも。
20
お気に入りに追加
3,817
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されなかった私が幸せになるまで 〜旦那様には大切な幼馴染がいる〜
高瀬船
恋愛
2年前に婚約し、婚姻式を終えた夜。
フィファナはドキドキと逸る鼓動を落ち着かせるため、夫婦の寝室で夫を待っていた。
湯上りで温まった体が夜の冷たい空気に冷えて来た頃やってきた夫、ヨードはベッドにぽつりと所在なさげに座り、待っていたフィファナを嫌悪感の籠った瞳で一瞥し呆れたように「まだ起きていたのか」と吐き捨てた。
夫婦になるつもりはないと冷たく告げて寝室を去っていくヨードの後ろ姿を見ながら、フィファナは悲しげに唇を噛み締めたのだった。
欲情しないと仰いましたので白い結婚でお願いします
ユユ
恋愛
他国の王太子の第三妃として望まれたはずが、
王太子からは拒絶されてしまった。
欲情しない?
ならば白い結婚で。
同伴公務も拒否します。
だけど王太子が何故か付き纏い出す。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
誤解なんですが。~とある婚約破棄の場で~
舘野寧依
恋愛
「王太子デニス・ハイランダーは、罪人メリッサ・モスカートとの婚約を破棄し、新たにキャロルと婚約する!」
わたくしはメリッサ、ここマーベリン王国の未来の王妃と目されている者です。
ところが、この国の貴族どころか、各国のお偉方が招待された立太式にて、馬鹿四人と見たこともない少女がとんでもないことをやらかしてくれました。
驚きすぎて声も出ないか? はい、本当にびっくりしました。あなた達が馬鹿すぎて。
※話自体は三人称で進みます。
婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた
cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。
お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。
婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。
過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。
ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。
婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。
明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。
「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。
そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。
茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。
幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。
「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?!
★↑例の如く恐ろしく省略してます。
★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。
★コメントの返信は遅いです。
★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。
♡注意事項~この話を読む前に~♡
※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。
※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。
※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。
※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません
虐げられた落ちこぼれ令嬢は、若き天才王子様に溺愛される~才能ある姉と比べられ無能扱いされていた私ですが、前世の記憶を思い出して覚醒しました~
日之影ソラ
恋愛
異能の強さで人間としての価値が決まる世界。国内でも有数の貴族に生まれた双子は、姉は才能あふれる天才で、妹は無能力者の役立たずだった。幼いころから比べられ、虐げられてきた妹リアリスは、いつしか何にも期待しないようになった。
十五歳の誕生日に突然強大な力に目覚めたリアリスだったが、前世の記憶とこれまでの経験を経て、力を隠して平穏に生きることにする。
さらに時がたち、十七歳になったリアリスは、変わらず両親や姉からは罵倒され惨めな扱いを受けていた。それでも平穏に暮らせるならと、気にしないでいた彼女だったが、とあるパーティーで運命の出会いを果たす。
異能の大天才、第六王子に力がばれてしまったリアリス。彼女の人生はどうなってしまうのか。
私の人生は私のものです
風見ゆうみ
恋愛
長期で領地の視察に行くと言う旦那様。
あなたが管理している伯爵領はそう広くはありませんよね。
頻繁に出かける上に、屋敷にいても私の話は聞いてくれない旦那様。
「彼女には僕しかいない。どう扱おうが文句を言われる筋合いはないよ。彼女がどう生きるかは僕が決めるんだ。彼女に権限はない」
パーティーの途中に抜け出して、旦那様が密会していたのは、私のことを嫌っている伯爵令嬢。
旦那様の本音を聞いた私は離婚を決意する。
私の人生は私のものです。あなたのものではありません。
さようなら、旦那様。
あなたが私を失ったことを惜しいと思うくらいに遠くの地で幸せになってみせます!
かのんちゃんはからかいたい!〜「勘違いしないでね?」と言う学校一の美少女がからかってくる〜
咏
青春
「『勘違い』しないでね?」
学校一の美少女と言われている本宮花音は告白されることに辟易していた。
普段の花音は明るい性格で、誰だろうと気さくに話しかけ、誰にでも優しい人気者。もちろん容姿も学校一と呼ばれるにふさわしい容姿だ。『完璧』と言える花音は、男女問わずに人気だった。
それ故に困ったこともある。
学校内の男子に人気だからこそ、告白され、デートに誘われ、男子が周りに多すぎる。
しかし、誰とも恋愛関係になるつもりもなかった。
そんな花音が一人教室で愚痴を溢しているところを俺、青木颯太は見てしまった。
『学校一の美少女も愚痴ることがあるのか……』
そう思っていた俺だが、花音は自爆する。
明るい性格は猫を被っているだけで、他人を信頼していない。花音の本性は普段のものとは程遠い。
花音の本性を知ってしまった俺だが、花音が完璧な美少女ではないと知ったことで親しみやすくなる。
本性をバラすつもりのない俺と、バラされたくない花音。
バラされないように警戒している花音は話しかけてくるようになり、俺たちの距離が縮まった。
花音も自分の素を出せる相手として、徐々に気を許してくれる。
素を出す花音はからかうのが好きで、俺の反応を見て楽しんでいる。
微妙な距離感を保ちながら、俺たちは本当の友達になっていく。
小説家になろう様、カクヨム様でも連載しております!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる