2 / 19
拾われたリリス
しおりを挟む…………ここは、どこ?
目を覚ますと、見知らぬ天井が見えました。
「やっと目を覚ましたか。」
男性の声?
横を向くと、とても綺麗な男性が立っています。
目は青く、銀色の髪がすごく綺麗。だけど、すごく冷たい感じがします。
彼はいったい、誰なのでしょうか?
「おい。人の顔をジロジロ見るな。お前、名は?」
名? 名前?
……………………私……は……誰?
「質問に答えろ。」
そう言われても……
「……分かりません。」
「自分の名が、分からないのか?」
「はい。何も、覚えていません……」
男性は、大きなため息をつき
「厄介なものを拾ってしまった。」
そう言いながら、部屋から出て行った。
厄介なものとは、私の事でしょうか?
名を聞いたのだから、彼は私の知り合いではないのでしょう。ご迷惑をおかけしたようですし、出て行った方がいいのでしょうか?
コンコン……
「失礼します。」
今度は可愛らしい女の子が入ってきました。
「お目覚めになられて、本当に良かったです。ずっと目覚めないのではと、心配しておりました。私はメイドの、エイミーです。」
ずっと? そんなに起きなかったの?
「私は、どうして眠っていたのですか?」
「覚えていらっしゃらないのですか? 毒を飲まされたようで、意識を失い森で倒れておりました。」
毒? どうしてそんなものを?
私は、殺されそうになったの?
「……ごめんなさい。何も思い出せないんです。」
「何も……ですか。旦那様がお嬢様を見つけていらっしゃらなかったら、危ないところでした。」
あの男性が、助けてくれたの?
あんなに冷たそうな方なのに……案外、優しいのでしょうか?
「記憶がないということは、捨てられた時に頭を打ったのが原因でしょうか……
お医者様は、問題ないと仰っていたので、時期に戻るかもしれませんね。それまでは、私がお嬢様のお世話をさせて頂きますので、よろしくお願いします。」
「私はここにいても、よろしいのでしょうか?」
「記憶がないのですから、どこにも行くところはありませんよね? 旦那様からは、お嬢様のお世話をするように仰せつかっておりますので、出て行かれたら私が叱られます。」
あの男性、私の事があんなに面倒くさそうだったのに、不思議な方ですね。
エイミーの言う通り、私には行く所がありませんし、お言葉に甘えてもいいのでしょうか……
「あの方……旦那様のお名前は、何と仰るのですか?」
「アンディ・ホリード公爵様です。」
アンディ・ホリード公爵……何も覚えていないはずなのに、公爵という爵位は分かります。
不思議ですね。自分の名前さえ分からないのに、一般常識は分かるようです。
何か大切なものを忘れている気がするのですが、思い出そうとすると、霧がかかってしまう。
殺されそうになるなんて、私はいったい何者なのでしょう?
もしも悪人だったら……そう考えると、怖い……
16
お気に入りに追加
3,817
あなたにおすすめの小説
真実の愛は素晴らしい、そう仰ったのはあなたですよ元旦那様?
わらびもち
恋愛
王女様と結婚したいからと私に離婚を迫る旦那様。
分かりました、お望み通り離婚してさしあげます。
真実の愛を選んだ貴方の未来は明るくありませんけど、精々頑張ってくださいませ。
虐げられた令嬢は、耐える必要がなくなりました
天宮有
恋愛
伯爵令嬢の私アニカは、妹と違い婚約者がいなかった。
妹レモノは侯爵令息との婚約が決まり、私を見下すようになる。
その後……私はレモノの嘘によって、家族から虐げられていた。
家族の命令で外に出ることとなり、私は公爵令息のジェイドと偶然出会う。
ジェイドは私を心配して、守るから耐える必要はないと言ってくれる。
耐える必要がなくなった私は、家族に反撃します。
どうやら婚約者が私と婚約したくなかったようなので婚約解消させて頂きます。後、うちを金蔓にしようとした事はゆるしません
しげむろ ゆうき
恋愛
ある日、婚約者アルバン様が私の事を悪く言ってる場面に遭遇してしまい、ショックで落ち込んでしまう。
しかもアルバン様が悪口を言っている時に側にいたのは、美しき銀狼、又は冷酷な牙とあだ名が付けられ恐れられている、この国の第三王子ランドール・ウルフイット様だったのだ。
だから、問い詰めようにもきっと関わってくるであろう第三王子が怖くて、私は誰にも相談できずにいたのだがなぜか第三王子が……。
○○sideあり
全20話
白い結婚の王妃は離縁後に愉快そうに笑う。
三月べに
恋愛
事実ではない噂に惑わされた新国王と、二年だけの白い結婚が決まってしまい、王妃を務めた令嬢。
離縁を署名する神殿にて、別れられた瞬間。
「やったぁー!!!」
儚げな美しき元王妃は、喜びを爆発させて、両手を上げてクルクルと回った。
元夫となった国王と、嘲笑いに来た貴族達は唖然。
耐え忍んできた元王妃は、全てはただの噂だと、ネタバラシをした。
迎えに来たのは、隣国の魔法使い様。小さなダイアモンドが散りばめられた紺色のバラの花束を差し出して、彼は傅く。
(なろうにも、投稿)
貴方へ愛を伝え続けてきましたが、もう限界です。
あおい
恋愛
貴方に愛を伝えてもほぼ無意味だと私は気づきました。婚約相手は学園に入ってから、ずっと沢山の女性と遊んでばかり。それに加えて、私に沢山の暴言を仰った。政略婚約は母を見て大変だと知っていたので、愛のある結婚をしようと努力したつもりでしたが、貴方には届きませんでしたね。もう、諦めますわ。
貴方の為に着飾る事も、髪を伸ばす事も、止めます。私も自由にしたいので貴方も好きにおやりになって。
…あの、今更謝るなんてどういうつもりなんです?
妹に魅了された婚約者の王太子に顔を斬られ追放された公爵令嬢は辺境でスローライフを楽しむ。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
マクリントック公爵家の長女カチュアは、婚約者だった王太子に斬られ、顔に醜い傷を受けてしまった。王妃の座を狙う妹が王太子を魅了して操っていたのだ。カチュアは顔の傷を治してももらえず、身一つで辺境に追放されてしまった。
私が消えた後のこと
藍田ひびき
恋愛
クレヴァリー伯爵令嬢シャーロットが失踪した。
シャーロットが受け取るべき遺産と爵位を手中にしたい叔父、浮気をしていた婚約者、彼女を虐めていた従妹。
彼らは自らの欲望を満たすべく、シャーロットの不在を利用しようとする。それが破滅への道とも知らずに……。
※ 6/3 後日談を追加しました。
※ 6/2 誤字修正しました。ご指摘ありがとうございました。
※ なろうにも投稿しています。
政略結婚の約束すら守ってもらえませんでした。
克全
恋愛
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
「すまない、やっぱり君の事は抱けない」初夜のベットの中で、恋焦がれた初恋の人にそう言われてしまいました。私の心は砕け散ってしまいました。初恋の人が妹を愛していると知った時、妹が死んでしまって、政略結婚でいいから結婚して欲しいと言われた時、そして今。三度もの痛手に私の心は耐えられませんでした。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる