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拾われたリリス

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 …………ここは、どこ?
 目を覚ますと、見知らぬ天井が見えました。
 
 「やっと目を覚ましたか。」

 男性の声? 
 横を向くと、とても綺麗な男性が立っています。
 目は青く、銀色の髪がすごく綺麗。だけど、すごく冷たい感じがします。
 彼はいったい、誰なのでしょうか?
 
 「おい。人の顔をジロジロ見るな。お前、名は?」

 名? 名前?
 ……………………私……は……誰?

 「質問に答えろ。」

 そう言われても……

 「……分かりません。」

 「自分の名が、分からないのか?」

 「はい。何も、覚えていません……」

 男性は、大きなため息をつき

 「厄介なものを拾ってしまった。」

 そう言いながら、部屋から出て行った。

 厄介なものとは、私の事でしょうか?
 名を聞いたのだから、彼は私の知り合いではないのでしょう。ご迷惑をおかけしたようですし、出て行った方がいいのでしょうか?

 コンコン……
 「失礼します。」

 今度は可愛らしい女の子が入ってきました。
 
 「お目覚めになられて、本当に良かったです。ずっと目覚めないのではと、心配しておりました。私はメイドの、エイミーです。」

 ずっと? そんなに起きなかったの?

 「私は、どうして眠っていたのですか?」

 「覚えていらっしゃらないのですか? 毒を飲まされたようで、意識を失い森で倒れておりました。」

 毒? どうしてそんなものを?
 私は、殺されそうになったの?

 「……ごめんなさい。何も思い出せないんです。」

 「何も……ですか。旦那様がお嬢様を見つけていらっしゃらなかったら、危ないところでした。」

 あの男性が、助けてくれたの?
 あんなに冷たそうな方なのに……案外、優しいのでしょうか?
 
 「記憶がないということは、捨てられた時に頭を打ったのが原因でしょうか…… 
 お医者様は、問題ないと仰っていたので、時期に戻るかもしれませんね。それまでは、私がお嬢様のお世話をさせて頂きますので、よろしくお願いします。」

 「私はここにいても、よろしいのでしょうか?」

 「記憶がないのですから、どこにも行くところはありませんよね? 旦那様からは、お嬢様のお世話をするように仰せつかっておりますので、出て行かれたら私が叱られます。」

 あの男性、私の事があんなに面倒くさそうだったのに、不思議な方ですね。
 エイミーの言う通り、私には行く所がありませんし、お言葉に甘えてもいいのでしょうか……

 「あの方……旦那様のお名前は、何と仰るのですか?」

 「アンディ・ホリード公爵様です。」

 アンディ・ホリード公爵……何も覚えていないはずなのに、公爵という爵位は分かります。
 不思議ですね。自分の名前さえ分からないのに、一般常識は分かるようです。
 
 何か大切なものを忘れている気がするのですが、思い出そうとすると、霧がかかってしまう。
 殺されそうになるなんて、私はいったい何者なのでしょう?
 もしも悪人だったら……そう考えると、怖い……

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