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企み

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 その言葉に、ラルフは反応した。

 「……取り戻せるのか?」

 女性は微笑み、

 「取り戻してくれなくては困ります。アーチャー様は私のものですから。」

 彼女の名は、エイミー。エリーサの親友の伯爵令嬢だ。

 「お前……エリーサの親友ではないのか!?」

 「親友……そう思っていたのですか?エリーサを親友だなんて思った事はありません。エリーサは私からアーチャー様を奪ったのです!!」

 それはエイミーの被害妄想だった。エリーサが塞ぎ込み、元気づけようとアーチャーは毎日の様にエリーサの元を訪れていた。そのおかげでエリーサは立ち直り、笑顔を取り戻して行った。
 二人の距離が近づき始めた頃、アーチャーを初めて見たエイミーはひと目で恋をし、エリーサに嫉妬するようになっていった。

 「お前の目的はアーチャーか。それで、何か策はあるのか?」

 エリーサを手に入れるためには、何でもする覚悟を決めていた。

 「ふふっ。交渉成立ですね。ラルフ様はエリーサを、私はアーチャー様を……必ず手に入れましょう!」

 二人は手を組み、アーチャーとエリーサを別れさせる事にした。

 翌日、ラルフはアーチャーを呼び出した。ちゃんと話をしなければと思っていたアーチャーは、ラルフの呼び出しに応じ、待ち合わせの場所へとやって来ていた。

 だがそこに現れたのはラルフではなく、エイミーだった。

 「どうして君がここに居るんだ!?」

 エイミーはアーチャーに恋をしてから、何度もしつこく迫っていた。何度断っても、しつこく迫ってくるエイミーに恐怖すら感じていた。

 「ラルフ様は来ませんよ。今頃はエリーサと、ベッドの中にいるかもしれませんね。」

 エリーサがそんな事をしないのは分かっていた。だが、今のラルフは何をするか分からない。

 「エリーサはどこにいるんだ!?」

 聞いて答えるはずがないのは分かっていたが、聞かずにはいられなかった。

 「キスしてください。キスしてくれたら教えてあげます。」
 
 「ふざけるな。そんな事するつもりはない。」

 アーチャーは少し怒りの含んだ声で拒絶したが、

 「アーチャー様!好きです!」

 エイミーはいきなり抱きつきキスを迫って来た!

 エイミーを引き離そうとした時、

 「アーチャー様……?」

 タイミングよくエリーサが現れ、アーチャーは慌ててエイミーを振り払った!

 
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