〖完結〗では、婚約解消いたしましょう。

藍川みいな

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15、波乱の夜会

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 会場の中に入ると、先に入って行ったセシリー様がキョロキョロしながらオリバー殿下を探している。

 「どんなに探しても、時間までは姿を現さないだろう」

 ライアン様の言う通り、今は誰にも会いたくはないだろうし、これから弟に王太子の座を奪われるのだから、時間までは一人で居たいだろう。
 
 国王陛下が会場に姿を現し、その後ろにはオリバー殿下とウォルター殿下の姿がある。その様子を、セシリー様は目を輝かせながら見ている。

 「急な招待にも関わらず、集まってくれたことを感謝する。我が息子オリバーが、婚約を解消したことを知る者も多いだろう。我が息子ながら、情けなく思っている。オリバーは廃太子とし、新たにウォルターを王太子とする」
 
 急な発表に、会場内がザワつく。
 
 「どうして……?」

 オリバー殿下よりも、セシリー様の方がショックを受けているようだ。セシリー様とパウエル子爵は、呆然としながらオリバー殿下を見ている。
 
 「お姉様……」

 酷い目に遭わされてきた姉でも、マディソンは心配なようだ。けれどセシリー様は、慰めようと近付いたマディソンの頬を思い切り叩いた!
 バシンと乾いた音が響き渡り、何事かと皆が視線を向ける。

 「汚い手で、私に触れないで! 何そのドレス!? 全然、似合っていないわ! ゴミのようなあなたが着ても、ゴミでしかないのよ!」

 ショックのあまり、ここがどこなのかも忘れて、いつものようにマディソンを罵倒した。

 「マディソン、大丈夫?」

 急いでマディソンに駆け寄り、セシリー様を睨みつける。

 「リアナ様も、本当に情けないですね。そんなゴミを庇って、なんになるのですか?」

 情けないのは、セシリー様の方だ。誰かを見下さなければ、自分の価値を見いだせない。

 「何の騒ぎだ?」

 気付くと、周りの人達だけでなく陛下もこちらを見ていた。私が言い返さなかったのは、この場がどこなのか理解していたからだ。
 
 「へ、へ、陛下……何でもありません!」

 「そうは見えなかったが?」

 鋭い目付きで、セシリー様を見ている。

 「父上……私は、ようやく自分の過ちに気付きました」

 先程の様子を見て、オリバー殿下もセシリー様の本性を知ったようだ。そして、会場にいる学園の生徒達も同じだった。

 「マディソン様を、誤解していたわ……」
 「リアナ様が攫ったと仰っていたけれど、全部嘘だったのね!」
 「自分の妹を、ゴミだなんて……」
 「マディソン様は、毎日こんな扱いをされていたの? 酷過ぎる……」

 周りの、セシリー様を見る目が変わった。

 「オリバー殿下? 私は、何も悪くありません! 私を、信じてください!」

 嘘で塗り固めたセシリー様の、何を信じろというのか……

 「黙れ! 俺はお前に騙されて、愛する人を失った! 何もかも失ったんだぞ!? 助けろ? ふざけるな!」

 オリバー殿下が全てを失ったのは、自業自得だ。それが理解出来ないから、セシリー様のような女性に騙されたりするのだ。

 「確かに、セシリーは最低だ。だが、君達もたいがいだと思うけど? 人を責める前に、自分のしたことを反省すべきだ」

 ライアン様の、言う通りだ。
 セシリー様の嘘を鵜呑みにして来たのは、自分達なのだから。

 「他国の侯爵令息ごときが、出しゃばるな!」

 オリバー殿下は、やっぱり変わらない。

 「いい加減にしろ。他国の要人に暴言をはくなど、あってはならぬことだ! ライアン、申し訳ない」

 ライアン様に向かって、国王陛下が頭を下げた。

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