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39、エルビンの想い 中編 ―エルビン視点―
しおりを挟む「私ね、もうすぐ嫁がないといけないの」
嫁ぐ? リンダの婚約者だった、ロイド王子は死んだはずだが?
「それは、おめでとうございます」
「めでたくなんかないわ! 好きでもないルーク様なんかと……
あ、何でもないの! 気にしないで」
ルーク……だと? ルークはアナベルの夫だ。なぜリンダがルークと!?
この国は、側室を認めてはいない。アナベルとルークを別れさせたところで、アナベルは身篭っている……ということは、アナベルを殺す気か!?
「それはお気の毒ですね。好きでもない相手と結婚だなんて……」
どんなことをしても、情報を集めなくては……
絶対にアナベルを殺させはしない!!
「分かってくれる!? 死んじゃった婚約者の時も、好きじゃなかった。だけど私は、アンダーソン公爵家の一人娘だから、仕方がないの……」
ロイド王子も、お前を好きじゃなかっただろうよ。
「一緒に、逃げますか?」
この女がいなければ、アナベルの身は安全だ。
「それは無理よ。私は権力が欲しいの。だけど、愛も欲しい。だから、私と付き合いましょう!」
何だか、誰かに似ているな。
「申し訳ありません。それは出来ません。見つかったら、旦那様に殺されてしまいます」
「そんなあ……」
「そろそろ戻りましょう。私は掃除をするように言われているので」
子守りをしていても意味がない。
アナベルの身が危ないことを、手紙で密告することにした。
誰が信用出来るのか分からないから、俺は本名を使ってルークに手紙を出すことにした。俺の名なら、あいつは必ず読むと思ったからだ。ルークは嫌いだが、悔しいけどアナベルを守れるのはあいつだけだ。
手紙にはこう書いた。
『お久しぶりです。
俺は今、アンダーソン公爵家で使用人をしています。何かを企んでいるようだったので、アナベル様の安全の為に潜入しました。
このことは、アナベル様にはご内密にお願いします。
本題ですが、どうやらアンダーソン公爵とリンダは、アナベル様のお命を狙っているようです。
リンダがルーク様ともうすぐ結婚すると言っていたので、アナベル様が危険です。必ず、お守りください。
引き続き、アンダーソン公爵家を調べ、何か分かったらお知らせします。』
あいつが俺を嫌いでも、アナベルのことを考えたら俺の協力が必要になる。アナベルを危険に晒してまで、俺を遠ざけるようなことはしないと信じてる。
リンダはもうすぐと言っていた。時間がない。
邸に帰ると、執事がいないのを見計らい、アンダーソン公爵の部屋を調べることにした。
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