上 下
36 / 44

36、イザベラ 前編 *残酷な描写があります。このお話を読まなくても、物語の内容に影響はありません。

しおりを挟む


 イザベラが、ブライト公爵に地下牢に閉じ込められてから1ヶ月が経っていた。

 「旦那様……私は何もしていません……ここから出してください……」

 オウムみたいに、毎日同じことを繰り返し言うイザベラ。暗い地下牢にずっと閉じ込められていることで、少し精神が壊れて来ているようだ。

 「よくまあ、そこまで嘘をつき続けることが出来るな。だが、もう終わりだ。
 正直に話す機会は十分あったのに、お前はずっと私を騙し続けた。連れて来い!」

 ブライト公爵の命令を受け、使用人達が連れて来たのは、傷だらけの男達だった。その男達は全員、イザベラと関係を持った者たちだ。

 「この者たちが、全て話した。お前に誘われて関係を持ったことをな」

 イザベラの表情が変わった。男達は明らかに、酷い拷問をされている。自分も同じ目に合うのではと考え、顔が青ざめていた。

 「……私を、拷問するのですか?」

 「拷問? そんな事をする必要はない。お前の罪は明らかなのだから、お前に相応しい罰を与える」

 使用人の男が、イザベラの手をロープで縛り、天井から吊り下げられているフックに吊るした。

 「何をするの!? 下ろして!!」

 「お前は男なら誰にでも股を開く淫乱だ。だから、お前を相応しいところに送ってやる」

 「相応しいところってどこよ!? 私に相応しいのは、地位と名誉よ! 誰もが私に平伏すの!」

 「本性を現したようだな。お前は、娼館に送る。だが、このまま送りはしない」

 「娼館ですって!? ふざけないでよ! 私を娼婦にするつもり!?」

 使用人がたいまつを持ち、それに火をつけ、ブライト公爵に渡す。たいまつを持ったブライト公爵が、ゆっくりイザベラに近づいて行く。

 「な、何をする、おつもりですか?」

 「お前は自分が美しいと思っている。だから、醜い姿にしてやる」

 たいまつをゆっくりイザベラの腹に近づける……

 「や、や、やめ……ぎゃああああああああああああああああああッッッッッ!!!!!」

 服の焼け焦げた臭いと、皮膚が焼かれた臭いが辺りに充満する。あまりの痛みに気絶するイザベラ。構わず続けるブライト公爵。

 「ぎゃああああああああああああッ!!!」

 気絶しているはずのイザベラは、あまりの痛みに気絶したまま悲鳴をあげる。腹、腕、胸、腰、尻、太腿、ふくらはぎ……次々に、たいまつを押し付ける。焼けた皮膚に焼けた布がまとわりつく。
 それをずっと見させられている男達。あまりの恐怖に、漏らした者までいる。

 全身に火傷を負ったイザベラ……しかし、まだ終わりではなかった。

 12時間後、イザベラは目を覚ました。
 全身がヒリヒリとして、どこもかしこも痛みが襲ってくる。

 「……痛い……痛いよ……薬を……ちょうだい……」

 「目を覚ましたようだな」

 ブライト公爵は、イザベラが目を覚ますまでずっと待っていた。

 「旦那様……お願い……薬を……」

 「生きているとはな。その根性だけは褒めてやる」

 ブライト公爵は、もう一度たいまつを手に取り、使用人がそれに火をつけた。

 「だ、旦那様? もう、終わりでしょう? もう、やめて……ください……ゆるして……」

 たいまつを持ったブライト公爵が、ゆっくり近付く……

 「終わりだなどど、誰が言った? そもそも、お前はほとんど気絶していたではないか。
 許して……だと? 私を裏切り、侮辱しておいて、虫がよすぎるな」

 「ごめ……んなさい……」

 「謝る機会はやったではないか? それをムダにしたのは誰だ?
 お前は容姿に絶対の自信を持っていた。だから、これからは醜い姿で生きなさい」

 ブライト公爵は、たいまつの火をイザベラの顔の右半分に押し付けた!!

 「ふぎゃああああああああああああぁあああああああああああああぁぁぁッッッッ!!!!!」
 
 顔の皮膚が焼け焦げ、溶けていく……

 肉が焼け、まるで化け物のようになったイザベラをじっと見つめたあと、ブライト公爵はたいまつを捨て、地下室から去って行った。


しおりを挟む
感想 88

あなたにおすすめの小説

もう愛は冷めているのですが?

希猫 ゆうみ
恋愛
「真実の愛を見つけたから駆け落ちするよ。さよなら」 伯爵令嬢エスターは結婚式当日、婚約者のルシアンに無残にも捨てられてしまう。 3年後。 父を亡くしたエスターは令嬢ながらウィンダム伯領の領地経営を任されていた。 ある日、金髪碧眼の美形司祭マクミランがエスターを訪ねてきて言った。 「ルシアン・アトウッドの居場所を教えてください」 「え……?」 国王の命令によりエスターの元婚約者を探しているとのこと。 忘れたはずの愛しさに突き動かされ、マクミラン司祭と共にルシアンを探すエスター。 しかしルシアンとの再会で心優しいエスターの愛はついに冷め切り、完全に凍り付く。 「助けてくれエスター!僕を愛しているから探してくれたんだろう!?」 「いいえ。あなたへの愛はもう冷めています」 やがて悲しみはエスターを真実の愛へと導いていく……  ◇ ◇ ◇ 完結いたしました!ありがとうございました! 誤字報告のご協力にも心から感謝申し上げます。

欲深い聖女のなれの果ては

あねもね
恋愛
ヴィオレーヌ・ランバルト公爵令嬢は婚約者の第二王子のアルバートと愛し合っていた。 その彼が王位第一継承者の座を得るために、探し出された聖女を伴って魔王討伐に出ると言う。 しかし王宮で準備期間中に聖女と惹かれ合い、恋仲になった様子を目撃してしまう。 これまで傍観していたヴィオレーヌは動くことを決意する。 ※2022年3月31日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。

不遇な王妃は国王の愛を望まない

ゆきむらさり
恋愛
稚拙ながらも投稿初日(11/21)から📝HOTランキングに入れて頂き、本当にありがとうございます🤗 今回初めてHOTランキングの5位(11/23)を頂き感無量です🥲 そうは言いつつも間違ってランキング入りしてしまった感が否めないのも確かです💦 それでも目に留めてくれた読者様には感謝致します✨ 〔あらすじ〕📝ある時、クラウン王国の国王カルロスの元に、自ら命を絶った王妃アリーヤの訃報が届く。王妃アリーヤを冷遇しておきながら嘆く国王カルロスに皆は不思議がる。なにせ国王カルロスは幼馴染の側妃ベリンダを寵愛し、政略結婚の為に他国アメジスト王国から輿入れした不遇の王女アリーヤには見向きもしない。はたから見れば哀れな王妃アリーヤだが、実は他に愛する人がいる王妃アリーヤにもその方が都合が良いとも。彼女が真に望むのは愛する人と共に居られる些細な幸せ。ある時、自国に囚われの身である愛する人の訃報を受け取る王妃アリーヤは絶望に駆られるも……。主人公の舞台は途中から変わります。 ※設定などは独自の世界観で、あくまでもご都合主義。断罪あり。ハピエン🩷

永遠の誓いを立てましょう、あなたへの想いを思い出すことは決してないと……

矢野りと
恋愛
ある日突然、私はすべてを失った。 『もう君はいりません、アリスミ・カロック』 恋人は表情を変えることなく、別れの言葉を告げてきた。彼の隣にいた私の親友は、申し訳なさそうな顔を作ることすらせず笑っていた。 恋人も親友も一度に失った私に待っていたのは、さらなる残酷な仕打ちだった。 『八等級魔術師アリスミ・カロック。異動を命じる』 『えっ……』 任期途中での異動辞令は前例がない。最上位の魔術師である元恋人が裏で動いた結果なのは容易に察せられた。 私にそれを拒絶する力は勿論なく、一生懸命に築いてきた居場所さえも呆気なく奪われた。 それから二年が経った頃、立ち直った私の前に再び彼が現れる。 ――二度と交わらないはずだった運命の歯車が、また動き出した……。 ※このお話の設定は架空のものです。 ※お話があわない時はブラウザバックでお願いします(_ _)

君を愛す気はない?どうぞご自由に!あなたがいない場所へ行きます。

みみぢあん
恋愛
貧乏なタムワース男爵家令嬢のマリエルは、初恋の騎士セイン・ガルフェルト侯爵の部下、ギリス・モリダールと結婚し初夜を迎えようとするが… 夫ギリスの暴言に耐えられず、マリエルは神殿へ逃げこんだ。 マリエルは身分違いで告白をできなくても、セインを愛する自分が、他の男性と結婚するのは間違いだと、自立への道をあゆもうとする。 そんなマリエルをセインは心配し… マリエルは愛するセインの優しさに苦悩する。 ※ざまぁ系メインのお話ではありません、ご注意を😓

人の顔色ばかり気にしていた私はもういません

風見ゆうみ
恋愛
伯爵家の次女であるリネ・ティファスには眉目秀麗な婚約者がいる。 私の婚約者である侯爵令息のデイリ・シンス様は、未亡人になって実家に帰ってきた私の姉をいつだって優先する。 彼の姉でなく、私の姉なのにだ。 両親も姉を溺愛して、姉を優先させる。 そんなある日、デイリ様は彼の友人が主催する個人的なパーティーで私に婚約破棄を申し出てきた。 寄り添うデイリ様とお姉様。 幸せそうな二人を見た私は、涙をこらえて笑顔で婚約破棄を受け入れた。 その日から、学園では馬鹿にされ悪口を言われるようになる。 そんな私を助けてくれたのは、ティファス家やシンス家の商売上の得意先でもあるニーソン公爵家の嫡男、エディ様だった。 ※マイナス思考のヒロインが周りの優しさに触れて少しずつ強くなっていくお話です。 ※相変わらず設定ゆるゆるのご都合主義です。 ※誤字脱字、気を付けているつもりですが、やはりございます。申し訳ございません!

新しい人生を貴方と

緑谷めい
恋愛
 私は公爵家令嬢ジェンマ・アマート。17歳。  突然、マリウス王太子殿下との婚約が白紙になった。あちらから婚約解消の申し入れをされたのだ。理由は王太子殿下にリリアという想い人ができたこと。  2ヵ月後、父は私に縁談を持って来た。お相手は有能なイケメン財務大臣コルトー侯爵。ただし、私より13歳年上で婚姻歴があり8歳の息子もいるという。 * 主人公は寛容です。王太子殿下に仕返しを考えたりはしません。

拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様

オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。

処理中です...