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6、復讐の始まり
しおりを挟むお茶会当日。今日は決戦の日だ。
今まで蔑まれて来た分、全部返して差し上げるわ。お茶会へは、1人で出席する。きっと私を見ても、彼は動揺しないだろう。彼にとって、マーシャさんと一緒に居られることが何よりも嬉しいようだけど、天国から一気に地獄に叩き落としてあげる。
お茶会に行く前に、私には先に行く場所がある。ガードナー侯爵に、会わなくてはならないからだ。私から借りたお金は、全てマーシャさんに流れているのは分かっている。だとしても、お父様を直接騙したのはガードナー侯爵だ。
「せっかく来てもらったが、ハリソンは出かけて居るんだ」
ガードナー侯爵は、邸を訪ねた私にそう言った。応接室のソファーに座り、お茶を一口飲んでから、私は口を開く。
「今日は、ガードナー侯爵にお会いしに来ました」
ガードナー侯爵は、ハリソン様が誰と何をしているのか把握していないようだ。息子を無条件で溺愛しているのか、ただ無関心なだけか……
「私に? どんなご用かな?」
ガードナー侯爵は足を組み、葉巻をふかした。
「ハリソン様との婚約の件ですが、そちらから解消していただきたいのです」
それを聞いたガードナー侯爵はというと、全く動じていないのか、ゆっくり葉巻の煙を吹き出した。
「それは、どういうことかね? なぜ私に、君達の婚約を解消して欲しいなどと? 」
「解消していただけないなら、詐欺で訴えようと思います」
「君は、何を言っているんだね!?」
落ち着きを払っていたガードナー侯爵が、少し前のめりになった。やましいことがあるという証拠だ。
「お父様がハリソン様との婚約を受け入れたと仰いましたが、それは嘘ですよね? 偶然あの夜会で、ガードナー侯爵とお父様のお話を聞いていた方がいらっしゃったんです」
この話は、私の作り話だ。その作り話に、焦りを隠せないガードナー侯爵。
「それは、誰だ……?」
「お答えするつもりは、ありません。ガードナー侯爵が、私達の婚約を解消して下さるのでしたら、このことは伏せておくつもりです。いかがなさいますか?」
完全なる、ハッタリ。最初に騙したのは、あなた達だ。
「…………」
ガードナー侯爵が考え込んでいる間、お茶を飲み干してしまった。上手く演技出来ていると思っていたけど、緊張しているようだ。
「……分かった。婚約は解消しよう。ガース、婚約誓約書を持って来てくれ」
執事が持って来た誓約書を受け取り、ソファーから立ち上がる。
「迅速な対応、ありがとうございました。それでは、失礼します」
誓約書を持ち、立ち去る。
ガードナー侯爵……詐欺では訴えませんが、残念ながらあなた達家族は多額の借金を負うことになります。きっとあなたは、アシェント伯爵家と婚姻を結べば、多額の援助を受けられると思い、ハリソン様の……いいえ、マーシャさんが考えた計画に乗ったのでしょう。何も条件を出さずに誓約書を渡してくれたところをみると、自分の息子が私に多額の借金をし、そのお金がマーシャさんに流れていることは知らないようだ。それでも、あなたは私の父を騙した。救いの手を差し伸べるつもりはない。
さて、次はハリソン様とマーシャさんの居るお茶会に行きましょうか。
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