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しょうもない旦那様

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 「旦那様……おやめください……」

 メイドは泣きそうな顔をしながら、旦那様がキスをしようとしているのを必死にかわしています。

 「メイドの分際で俺に逆らう気か? 」

 それでも無理矢理メイドにキスをしようとする旦那様。

 はあ……またですか。
 私はどうしようもないクズと結婚してしまったようです。

 「旦那様、何をなさっているのですか? 」

 メイドを助けようと声をかけると、

 「お前は黙っていろ! お前に色気がないのが悪いんだ! メイドにヤキモチを妬くな!」

 いつも同じ言葉が返って来ます。

 私の名前はサマンサ・ベイリー。ベイリー侯爵の長女です。そして女性にだらしないこの方はドーソン・ベイリー。私の旦那様です。
 ドーソン様がベイリー侯爵家の婿になり、2年が経ちました。
 お父様とドーソン様のお父様、リベルト・コールド伯爵は親友でした。2年前、コールド伯爵は病を患い、余命宣告をされた。そんな時、お父様がコールド伯爵の次男のドーソン様を私の婿にと連れて来ました。
 


 ヤキモチ? そんな物妬くわけがありません。
 私はドーソン様を愛していませんし、むしろ大嫌いです! ドーソン様は最初から、私を妻扱いしていなかった。色気がないからと、私に触れた事すらありません。お父様が用意してくれたこの邸に住んでから、まるで自分が侯爵にでもなったかのように振る舞い、愛人を作り、メイドに手を出し、私に暴言を吐く。
 最初は私も、コールド伯爵がご病気で余命いくばくもないのだからと同情していたのですが、2年間全く変わらないドーソン様を見ていると、さすがに同情する気持ちもなくなりました。
 そして先月、コールド伯爵はお亡くなりになりました。父親が亡くなったというのに、ドーソン様は変わらない。毎日他の女性に会いに行き、邸にいる時はメイドにちょっかいを出す。
 こんな人が自分の夫だと思うと、悲しくて涙が……出ませんが、思いっきり殴ってやりたくなります。

 「旦那様が外で何をしようとかまいませんが、メイドに手を出すのはおやめ下さいと言ったはずです」
 
 ドーソン様は、使用人だから何をしてもいいとでも思っているのでしょうか?
 嫌がるメイドに無理矢理関係を迫るなど、あってはならないことです。

 「小言ばかりで、お前にはうんざりだ!! 」

 うんざりなのは私の方です!

 「小言を言われるような事をしている旦那様に問題があるのでは?」

 一方的に悪く言われることに、もう我慢が出来ませんでした。

 「うるさいうるさいうるさい!! お前などもういらん! 離婚だ、離婚っ!! この邸から出て行け!!!」

 
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