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親友

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 手紙を出してから数週間後、お父様から返事が来た。内容は、『もうすぐ帰るから、その時婚約発表をしよう。』との事だった。

 お父様にもフィン様との婚約を認められて、幸せいっぱいだった。
 フィン様を知れば知るほど、どんどん好きになっていく。あんなに好きだったデイブ様の事は、もう何とも思っていなかった。デイブ様のどこを好きだったのかさえ分からない。
 正直、こんなに自分が軽かったのかと悩んだりもする。だからまだ、フィン様に気持ちを伝える事が出来ずにいた。

 婚約発表の日、ちゃんと自分の気持ちを伝えよう。そう心に決めた。



 「アイラはフィン様の事好きでしょ?」

 いきなりソーニャからからそう言われた。

 「え、え、な、な、なんで!?」

 「見てればわかる。フィン様も、アイラが大切なんだなって伝わって来るし。」

 ソーニャにはちゃんと話したかったけど、まだ本人にも気持ちを伝えていなかったから、なかなか言い出せなかった。でも、バレバレだったかあ。

 「私ね、フィン様といると凄くドキドキするの。ドキドキして胸がキュッてなるけど、それがとても幸せなんだ。」

 これが本当の気持ち。口に出したら、余計にフィン様が愛おしくなった。

 「アイラ、変わったもんね。入学式の時は、なんか張りつめた顔してたから、心配してたんだ。でも、明るくなった。」

 そっか。入学式の時は、デイブ様の事しか考えてなかったもんね。

 「フィン様も変わった。それに、周りも。」

 「それはどういう意味?」

 「フィン様がね、令嬢達に優しくなったの。大切な人が出来たから、その人に相応しい自分になりたいからって。それがアイラだってみんなわかってる。ずっと冷たかったフィン様が優しくなられたって、フィン様を好きだった令嬢達がみんなアイラに感謝してるんだよ。」

 フィン様はそんな事を?
 
 「みんなは嫌じゃないのかな? 」

 「みんな、アイラのおかげでフィン様が笑いかけてくれたって喜んでるよ。私もね。」

 「え!? ソーニャもフィン様を!? そんな話聞いてない!」

 「だって誰にも言ってないし。」

 時間が戻る前も、そんな話聞いた事がなかった。

 「ソーニャ……ごめん。」

 「どうして謝るの? 私はアイラもフィン様も好き。2人が幸せそうな姿を見てると、私も幸せになれるの。」

 フィン様と同じ事を言うソーニャ。私はこんなにも、親友に恵まれていたんだ。
 そういえばソーニャは、デイブ様の時は反対してたっけ。だから、ソーニャにデイブ様の事を相談出来なくなっていった。
 改めて考えると、デイブ様を好きになってからの私の人生は、デイブ様一色だった。デイブ様しか見えなくなっていた。
 
 こうしてやり直す事が出来て、私は本当に幸せだと思う。こんなにも想ってくれる、フィン様やソーニャに感謝しなくちゃ。

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