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デイブの嫉妬

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 「婚約……ですか!?」

 「君が前と違い、デイブに冷たく接していたから、君にも記憶があるのだと気付いた。冷たくしていたということは、デイブと婚約する気はないのだろう?」

 デイブ様を遠ざける事ばかり考えていたから、他の方と婚約するなんて考えてもみなかった。
 でも、フィン様となら……

 「私でよかったら……お願いします。」

 フィンは満面の笑みを浮かべ、アイラを抱きしめた。

 「ありがとう。全力で君を守ってみせる。」

 フィンはアイラが自分を愛していない事は分かっていた。それでも、近くでアイラを守っていけることが、何より幸せだった。

 そしてアイラは、少しづつフィンに惹かれ始めていた。


 お父様には手紙を書くことにした。お父様は、いつも『お前のしたいようにしなさい』と言ってくれて、私の意思を尊重してくれるから、反対されることはないと思う。
 まあ、娘がフィン様と婚約すると聞いて、反対する貴族は誰一人いないかも。
 
 ウォーカー公爵はフィン様と私の婚約を喜んでくれた。女性に冷たいフィン様を見てきて、実は女性嫌いなのでは? と思っていたらしく、いきなり婚約したいと言い出し、かなりびっくりしているようだった。  
 侯爵家の婿養子になる事も、快く承諾してくれた。
 
 
 お父様の返事が届くまでは、婚約の話は内緒にする事にしたけど、学園では一緒にいる事が多くなっていた。

 「アイラ、これ。父からアイラに渡して欲しいと頼まれたんだ。」

 机の上に置かれたのは、エメラルドのブローチ。

 「これを私に?」

 「それは母の形見なんだ。義姉には違う形見を渡したそうだ。」

 「そんな大切な物を? 嬉しい……」

 コリンズ侯爵からは、何も頂いたことはなかった。別に何かが欲しいわけじゃないけど、私の事をお金としか思っていなかったのだと思うと悲しくなる。
 フィン様はお父様に似たのね。

 「こんなに嬉しい贈り物を頂いたのは初めてです。大切にしますね。」

 アイラはブローチをなくさないように大切にしまった。
 その様子を、デイブはずっと見ていた。
 頬を赤く染め、贈り物を受け取る姿はまるで恋する乙女。
 
 「贈り物をしたら、俺にもあんな顔をしてくれるだろうか。」

 アイラとフィンを見ながら、デイブがボソッとつぶやくと……

 「もちろんです! デイブ様から贈り物を頂けるなら、私はどんな顔でも致しますわ!」

 フランシスがそれに答えた。
 デイブは心の中で、『お前ではない』と思った。
 
 「いつの間にあんなに仲良くなったんだ……」

 「フィン様とアイラの事ですか? 2、3日前から距離が近くなりましたね。あの2人は想いあってますね。」

 デイブの事に関しては鈍感なのに、そのほかの人に対してはよく気がつくフランシス。

 「想いあってる!? そんなわけないだろ!!」

 デイブは焦った。
 だが、その気持ちが何なのかは、自分でも分かっていなかった。

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