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第五章 クリスマスの涙
ごめんね。4
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***
部屋が薄明るい。
朝……?
目の前に佐山の腕。昨夜の状態のまま。でも。
どうして私の背中は床にくっついているのか。
「!!」
ようやく目が覚めた。
隣で佐山が寝ている!! 私の身体に腕を巻きつけたまま。
……何もなかっただろうということは、感覚で分かる。
お互い服も着ているし。
佐山は下心をもって女性の部屋に上がるような男ではない。
恐らく二人とも眠ってしまったために、いつの間にかこういった体勢になったのだろう。
恐る恐る顔を上げると、目を閉じた佐山が静かに規則的な寝息をたてている。
──僕は、それをアレルギーだとは思いませんよ。
昨日、なんて言ってたっけ?
あの後から眠ってしまったのか、記憶がない。
素直に話せる自分にも驚いたし、佐山の答えにも驚いた。
「好きです……」
我に返って口を押さえる。
無意識に、えらいことを口走ってしまった!!
寝てますね? 聞いてませんね……!?
佐山の寝顔を凝視して確認する。
うん。寝てる。
それじゃまぁ、もう少しこのままで。
広くて、ぬくぬくで。
着古したスウェット独特の湿っぽい匂いが鼻を……
「絵美ぃ。朝だよう!」
佐山の肩越しに、ルナがぬっと頭を出した。
ルナ……。元気になったのね。
それは良かったけど──。
恥ずかしい。
私は、起き上がろうと身体をモゾモゾと動かした。
「パパだぁ!」
ルナは佐山の肩で身体を支えながら、小さな手で彼の顔をぺたぺた触った。
「う」
佐山が眉根を寄せて掠れた声を上げ、目を開く。
起き上がろうとしていた私と、バッチリ目が合った。
「あ……。え!?」
佐山は、これまでにないほど慌てた様子で身体を起こした。
それから、うっと顔をしかめる。
長時間おかしな体勢でいたために、身体のそこかしこが痛むらしい。
「す、すみません!」
私たちは、何となくお互いに謝りながら余所を向く。
適当に視線を走らせた先には壁時計があった。
「は、八時!? 佐山さん、お仕事って」
「ああ。今日は遅番です」
佐山は頭を掻きながら言い、ルナを抱き上げる。
「すっかり元気になりましたね」
柔らかい朝の光の中で彼が表情を和ませると、胸がどきんと高鳴った。
***
──ピンポーン
軽快にインターホンが鳴った。
インターホンに気分の良し悪しなど無かろうが、そんな風に聞こえた。
「絵美ちゃん、おはよー」
あ、この声は。
「やだ、開いてる。物騒ねぇ。絵美ちゃーん?」
ああ、やっぱり冴子さんだわ。
と思う間もなくドアが外側に開いていく。
「あのさぁ、私ちょっといいこと思いつい……」
冴子さんは、そこまで言って「へっ?」と目を見開いた。
午前九時前にしては首を傾げたくなるような光景が、彼女の目に映ったからだと思われる。
「え、何……既にそういう仲?」
部屋が薄明るい。
朝……?
目の前に佐山の腕。昨夜の状態のまま。でも。
どうして私の背中は床にくっついているのか。
「!!」
ようやく目が覚めた。
隣で佐山が寝ている!! 私の身体に腕を巻きつけたまま。
……何もなかっただろうということは、感覚で分かる。
お互い服も着ているし。
佐山は下心をもって女性の部屋に上がるような男ではない。
恐らく二人とも眠ってしまったために、いつの間にかこういった体勢になったのだろう。
恐る恐る顔を上げると、目を閉じた佐山が静かに規則的な寝息をたてている。
──僕は、それをアレルギーだとは思いませんよ。
昨日、なんて言ってたっけ?
あの後から眠ってしまったのか、記憶がない。
素直に話せる自分にも驚いたし、佐山の答えにも驚いた。
「好きです……」
我に返って口を押さえる。
無意識に、えらいことを口走ってしまった!!
寝てますね? 聞いてませんね……!?
佐山の寝顔を凝視して確認する。
うん。寝てる。
それじゃまぁ、もう少しこのままで。
広くて、ぬくぬくで。
着古したスウェット独特の湿っぽい匂いが鼻を……
「絵美ぃ。朝だよう!」
佐山の肩越しに、ルナがぬっと頭を出した。
ルナ……。元気になったのね。
それは良かったけど──。
恥ずかしい。
私は、起き上がろうと身体をモゾモゾと動かした。
「パパだぁ!」
ルナは佐山の肩で身体を支えながら、小さな手で彼の顔をぺたぺた触った。
「う」
佐山が眉根を寄せて掠れた声を上げ、目を開く。
起き上がろうとしていた私と、バッチリ目が合った。
「あ……。え!?」
佐山は、これまでにないほど慌てた様子で身体を起こした。
それから、うっと顔をしかめる。
長時間おかしな体勢でいたために、身体のそこかしこが痛むらしい。
「す、すみません!」
私たちは、何となくお互いに謝りながら余所を向く。
適当に視線を走らせた先には壁時計があった。
「は、八時!? 佐山さん、お仕事って」
「ああ。今日は遅番です」
佐山は頭を掻きながら言い、ルナを抱き上げる。
「すっかり元気になりましたね」
柔らかい朝の光の中で彼が表情を和ませると、胸がどきんと高鳴った。
***
──ピンポーン
軽快にインターホンが鳴った。
インターホンに気分の良し悪しなど無かろうが、そんな風に聞こえた。
「絵美ちゃん、おはよー」
あ、この声は。
「やだ、開いてる。物騒ねぇ。絵美ちゃーん?」
ああ、やっぱり冴子さんだわ。
と思う間もなくドアが外側に開いていく。
「あのさぁ、私ちょっといいこと思いつい……」
冴子さんは、そこまで言って「へっ?」と目を見開いた。
午前九時前にしては首を傾げたくなるような光景が、彼女の目に映ったからだと思われる。
「え、何……既にそういう仲?」
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