2 / 130
序章
体質2
しおりを挟む
「またやっちゃった」
わざわざ声に出してみる。
何しろ私は、上京してから幾度となく同じパターンで男にフラれているのだ。
その数、今回を入れて五回。
ほぼ年一回のペースである。
「絵美。あんた、モテることは確かなのよ」
親友の麻由子は常々そう言う。
絵美、というのは私のことだ。
二十九歳で、訳あって無職である。
そして麻由子は、いつも「でもねぇ」と付け加える。
拾ってくる男が微妙に残念なのだと。
「あんた、それなりにイイ女なのにね」
麻由子曰く、私という女は──。
特別美人ではないが愛嬌はある。
常識は一応あり、それなりに情もある。
自分勝手な行動もしない。
ズボラで料理の腕がイマイチ、植物をすぐ枯らす等の残念な面もあるが、これくらいは許される範囲内。
だそうだ。
別に腹は立たない。
言いたいことを言うのはお互い様だ。
麻由子とは上京して以来の付き合いだが、さっぱりした性格なので付き合いやすい。
麻由子は首をひねる。あんたなら、幸せな結婚も夢ではないのにと。
そう言われましても。
こちらには、のっぴきならない事情があるのだ。
あるカップルが、めでたく結婚したとしよう。
幸せいっぱいの彼らが次に思い描くこと。
それは多くの場合──。
ベビーの誕生、である。
「結婚したら早く赤ちゃんが欲しいなあ」
「絵美は、男の子と女の子どっちがいい?」
付き合ってきた男たちは皆、こんなことを言った。
愛する男性にこんなことを言われたら、大抵の女子は胸をときめかすことだろう。
──ああ。私のこと、そんなに真剣に考えてくれているのね。
──なんて幸せなの! 私も、あなたの赤ちゃんが欲しいわ。
などと、キラキラした目で答えるのだろう。
しかし!
私が、その辺の女のようにホイホイ喜ぶと思ったら大間違いだ。
私の場合。
そんなことを言われたら、胸が悪くなり全身に虫唾が走る。
つまり。
私は、それくらい赤ちゃんが怖いのだ……!
弱々しい。
とにかく、何もかもが心許ない。
壊しそう。潰しそう。
これが本当に同じ人間だろうか。
そう思うと、じわじわと恐怖が沸いてくるのだ。
言葉も通じない。すぐに泣く。
何故、そんな存在をわざわざ傍に置かなけれなならないのか。
ところが、だ。
私が付き合ってきた男たちは揃いも揃って赤ちゃん大好きで、将来はたくさんの子供に囲まれて暮らす夢を持っていた。
そんな夢をほのぼのとした笑顔で語られたら発狂してしまう。
「やめて! 子供なんて冗談じゃないわよ!」
「要らない! 私は絶対にイヤだから!」
わざわざ声に出してみる。
何しろ私は、上京してから幾度となく同じパターンで男にフラれているのだ。
その数、今回を入れて五回。
ほぼ年一回のペースである。
「絵美。あんた、モテることは確かなのよ」
親友の麻由子は常々そう言う。
絵美、というのは私のことだ。
二十九歳で、訳あって無職である。
そして麻由子は、いつも「でもねぇ」と付け加える。
拾ってくる男が微妙に残念なのだと。
「あんた、それなりにイイ女なのにね」
麻由子曰く、私という女は──。
特別美人ではないが愛嬌はある。
常識は一応あり、それなりに情もある。
自分勝手な行動もしない。
ズボラで料理の腕がイマイチ、植物をすぐ枯らす等の残念な面もあるが、これくらいは許される範囲内。
だそうだ。
別に腹は立たない。
言いたいことを言うのはお互い様だ。
麻由子とは上京して以来の付き合いだが、さっぱりした性格なので付き合いやすい。
麻由子は首をひねる。あんたなら、幸せな結婚も夢ではないのにと。
そう言われましても。
こちらには、のっぴきならない事情があるのだ。
あるカップルが、めでたく結婚したとしよう。
幸せいっぱいの彼らが次に思い描くこと。
それは多くの場合──。
ベビーの誕生、である。
「結婚したら早く赤ちゃんが欲しいなあ」
「絵美は、男の子と女の子どっちがいい?」
付き合ってきた男たちは皆、こんなことを言った。
愛する男性にこんなことを言われたら、大抵の女子は胸をときめかすことだろう。
──ああ。私のこと、そんなに真剣に考えてくれているのね。
──なんて幸せなの! 私も、あなたの赤ちゃんが欲しいわ。
などと、キラキラした目で答えるのだろう。
しかし!
私が、その辺の女のようにホイホイ喜ぶと思ったら大間違いだ。
私の場合。
そんなことを言われたら、胸が悪くなり全身に虫唾が走る。
つまり。
私は、それくらい赤ちゃんが怖いのだ……!
弱々しい。
とにかく、何もかもが心許ない。
壊しそう。潰しそう。
これが本当に同じ人間だろうか。
そう思うと、じわじわと恐怖が沸いてくるのだ。
言葉も通じない。すぐに泣く。
何故、そんな存在をわざわざ傍に置かなけれなならないのか。
ところが、だ。
私が付き合ってきた男たちは揃いも揃って赤ちゃん大好きで、将来はたくさんの子供に囲まれて暮らす夢を持っていた。
そんな夢をほのぼのとした笑顔で語られたら発狂してしまう。
「やめて! 子供なんて冗談じゃないわよ!」
「要らない! 私は絶対にイヤだから!」
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
〖完結〗私が死ねばいいのですね。
藍川みいな
恋愛
侯爵令嬢に生まれた、クレア・コール。
両親が亡くなり、叔父の養子になった。叔父のカーターは、クレアを使用人のように使い、気に入らないと殴りつける。
それでも懸命に生きていたが、ある日濡れ衣を着せられ連行される。
冤罪で地下牢に入れられたクレアを、この国を影で牛耳るデリード公爵が訪ねて来て愛人になれと言って来た。
クレアは愛するホルス王子をずっと待っていた。彼以外のものになる気はない。愛人にはならないと断ったが、デリード公爵は諦めるつもりはなかった。処刑される前日にまた来ると言い残し、デリード公爵は去って行く。
そのことを知ったカーターは、クレアに毒を渡し、死んでくれと頼んで来た。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
全21話で完結になります。
冤罪から逃れるために全てを捨てた。
四折 柊
恋愛
王太子の婚約者だったオリビアは冤罪をかけられ捕縛されそうになり全てを捨てて家族と逃げた。そして以前留学していた国の恩師を頼り、新しい名前と身分を手に入れ幸せに過ごす。1年が過ぎ今が幸せだからこそ思い出してしまう。捨ててきた国や自分を陥れた人達が今どうしているのかを。(視点が何度も変わります)
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
【完結】忘れてください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
愛していた。
貴方はそうでないと知りながら、私は貴方だけを愛していた。
夫の恋人に子供ができたと教えられても、私は貴方との未来を信じていたのに。
貴方から離婚届を渡されて、私の心は粉々に砕け散った。
もういいの。
私は貴方を解放する覚悟を決めた。
貴方が気づいていない小さな鼓動を守りながら、ここを離れます。
私の事は忘れてください。
※6月26日初回完結
7月12日2回目完結しました。
お読みいただきありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる