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面影
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本殿の奥には、祭壇がぼんやりと影を落としていた。
かすかな月明かりが木の隙間から差し込み、床に複雑な模様を描き出している。
神秘的な本殿の中で、わたしを抱きしめる栞鳳の腕は、ひんやりとしていて心地がいい。
この村を救った、伝説の神鳥――神さま。
「栞鳳」
栞鳳の耳元で、囁きかける。神さまの名前を呼んでいる、こんな距離で、はだけた浴衣で、わたしは。栞鳳は、そんな私の髪をやさしく撫でる。
「葉月が気にしてること、わかってるよ」
その言葉に、わたしは顔を上げる。栞鳳がわたしを見つめる瞳は、優しくて、冷たくて、わたしを見ているようで、どこか遠くを見ているようだった。
「でも、ぼくにもよくわからないんだよねえ」
誤魔化しているわけではなさそうだった。言い方でわかる。
栞鳳は瞳を細めて、寝物語を語って聞かせるように言葉をつづけた。
「ぼくはね、葉月。たしかに栞鳳なんだ。それは自分のことだからよくわかってる。
でも、豊治が話していた村を救った伝説の、まさにその時のこととか、本当に自分がしたことだっていう気がしないんだよね」
村長さんは、栞鳳のことを「神鳥の魂の化身」と言っていた。目の前にいる栞鳳は、神鳥「栞鳳」の魂の化身ではあるけれど、神鳥「栞鳳」そのものではない――のだろうか?
「うーん、むずかしいことは、わからないけどさあ。とにかくね、昔のことがわかるんだけど、わからなくて」
栞鳳がわたしの髪を梳くように撫でる。
静かな本殿に、栞鳳のキレイな声だけが響いている。
「葉月が祠の前に来た時に、ぼくがずっと待ってたのはこの子だ、ってわかったの」
「ずっと待ってた……?」
「うん。葉月のことをずっと待ってたの。これは本当だから。ずっとずっと、待ってたよ、葉月」
そう言うと、栞鳳は再び私の体を本殿の床に押し倒した。木の床の冷たさ、硬さが背中に伝わってくる。
「それだけ、信じて」
栞鳳はわたしの足を大きく開くと、下着を横にずらして一気に私の奥に入ってきた。
「ちょっ、栞鳳、ぁ、ああ……ッ……んっ」
先ほどまでの行為で濡れているとはいえ、突然すぎる挿入にぴりっと小さく痛みが走る。
一番深くまで挿し入れると、栞鳳がわたしの瞳を閉じさせ、瞼にキスを落とす。
「葉月……ねえ、葉月。ぼくを、ちゃんと感じてね」
今までの栞鳳とは違う――どこか不安そうな声。性急な行為は、まるで私がどこかへ消えてしまうのを恐れているようだった。
わたしの身体に覆いかぶさり、ゆっくりと、徐々に激しく腰を動かしていく。
「んっ、ぁあっ、あ、あ、あ……ッ」
栞鳳の不安が、心が、押し寄せてくる。
ふたりの声が、静かな本殿の中に響いて、世界がふたりだけになったみたいだ。
「はづき、ああっ、はづき……」
苦しそうな栞鳳の声。難しそうな顔をして、栞鳳は必死にわたしの体に腰を打ち付ける。奥に栞鳳のモノが当たるたびに、気持ち良くて声をあげてしまう。
ねえ、栞鳳。
だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。
きもちい、あ、あ、いま、わたしは、しおんだけをみてるよ。
言葉にできない、言葉にする余裕がない、気持ちを、頭に浮かべて、栞鳳に届ける。
「葉月……っ」
栞鳳がわたしの頬に手を置き、じっと見つめてくる。
頭の中を、見透かされるのが、こわかった。それでいて、気持ちよかった。
そのまま、栞鳳の唇が押し当てられる。
「んっ、んんっ。んん~~~~~~~~っ♡♡♡」
キスをしながら、奥をぐりぐりと責め立てられる。
ああ、すごい、敏感で、弱いところを、適切に突いてくる。ガクガクと体が震えて、「ぁあっ、ひ、あっ♡♡♡」気持ち、よくて、栞鳳がそんなわたしを、嬉しそうに見ている。
「ぼくも、きもちいい……」
つながっているところが熱くて、しあわせで、身体と身体をぴったりと密着させて、夢中で腰を揺らしてしまう。
「はあっ、ん、ああ、あっ、し、おん……っ、だめ、いき、そ……っ」
深く、深く、ほしい。
栞鳳の小さな体に、全身でしがみつく。両腕と、両足を背中に回して、首筋に顔をうずめる。
「いっていいよ、ぼくも、だめ……ぁああ……ッ……!!」
どくどくんっ、とわたしの中に栞鳳の精液が放たれると同時に、わたしはぎゅうう~~っと栞鳳にしがみつきながら絶頂を迎えた。
膣内に広がる栞鳳の液体を感じながら、わたしは栞鳳の言葉を脳内で反芻していた。
――葉月が祠の前に来た時に、ぼくがずっと待ってたのはこの子だ、ってわかったの
本当に、栞鳳が待っていたのは、「わたし」なのだろうか……?
かすかな月明かりが木の隙間から差し込み、床に複雑な模様を描き出している。
神秘的な本殿の中で、わたしを抱きしめる栞鳳の腕は、ひんやりとしていて心地がいい。
この村を救った、伝説の神鳥――神さま。
「栞鳳」
栞鳳の耳元で、囁きかける。神さまの名前を呼んでいる、こんな距離で、はだけた浴衣で、わたしは。栞鳳は、そんな私の髪をやさしく撫でる。
「葉月が気にしてること、わかってるよ」
その言葉に、わたしは顔を上げる。栞鳳がわたしを見つめる瞳は、優しくて、冷たくて、わたしを見ているようで、どこか遠くを見ているようだった。
「でも、ぼくにもよくわからないんだよねえ」
誤魔化しているわけではなさそうだった。言い方でわかる。
栞鳳は瞳を細めて、寝物語を語って聞かせるように言葉をつづけた。
「ぼくはね、葉月。たしかに栞鳳なんだ。それは自分のことだからよくわかってる。
でも、豊治が話していた村を救った伝説の、まさにその時のこととか、本当に自分がしたことだっていう気がしないんだよね」
村長さんは、栞鳳のことを「神鳥の魂の化身」と言っていた。目の前にいる栞鳳は、神鳥「栞鳳」の魂の化身ではあるけれど、神鳥「栞鳳」そのものではない――のだろうか?
「うーん、むずかしいことは、わからないけどさあ。とにかくね、昔のことがわかるんだけど、わからなくて」
栞鳳がわたしの髪を梳くように撫でる。
静かな本殿に、栞鳳のキレイな声だけが響いている。
「葉月が祠の前に来た時に、ぼくがずっと待ってたのはこの子だ、ってわかったの」
「ずっと待ってた……?」
「うん。葉月のことをずっと待ってたの。これは本当だから。ずっとずっと、待ってたよ、葉月」
そう言うと、栞鳳は再び私の体を本殿の床に押し倒した。木の床の冷たさ、硬さが背中に伝わってくる。
「それだけ、信じて」
栞鳳はわたしの足を大きく開くと、下着を横にずらして一気に私の奥に入ってきた。
「ちょっ、栞鳳、ぁ、ああ……ッ……んっ」
先ほどまでの行為で濡れているとはいえ、突然すぎる挿入にぴりっと小さく痛みが走る。
一番深くまで挿し入れると、栞鳳がわたしの瞳を閉じさせ、瞼にキスを落とす。
「葉月……ねえ、葉月。ぼくを、ちゃんと感じてね」
今までの栞鳳とは違う――どこか不安そうな声。性急な行為は、まるで私がどこかへ消えてしまうのを恐れているようだった。
わたしの身体に覆いかぶさり、ゆっくりと、徐々に激しく腰を動かしていく。
「んっ、ぁあっ、あ、あ、あ……ッ」
栞鳳の不安が、心が、押し寄せてくる。
ふたりの声が、静かな本殿の中に響いて、世界がふたりだけになったみたいだ。
「はづき、ああっ、はづき……」
苦しそうな栞鳳の声。難しそうな顔をして、栞鳳は必死にわたしの体に腰を打ち付ける。奥に栞鳳のモノが当たるたびに、気持ち良くて声をあげてしまう。
ねえ、栞鳳。
だいじょうぶ、だいじょうぶだよ。
きもちい、あ、あ、いま、わたしは、しおんだけをみてるよ。
言葉にできない、言葉にする余裕がない、気持ちを、頭に浮かべて、栞鳳に届ける。
「葉月……っ」
栞鳳がわたしの頬に手を置き、じっと見つめてくる。
頭の中を、見透かされるのが、こわかった。それでいて、気持ちよかった。
そのまま、栞鳳の唇が押し当てられる。
「んっ、んんっ。んん~~~~~~~~っ♡♡♡」
キスをしながら、奥をぐりぐりと責め立てられる。
ああ、すごい、敏感で、弱いところを、適切に突いてくる。ガクガクと体が震えて、「ぁあっ、ひ、あっ♡♡♡」気持ち、よくて、栞鳳がそんなわたしを、嬉しそうに見ている。
「ぼくも、きもちいい……」
つながっているところが熱くて、しあわせで、身体と身体をぴったりと密着させて、夢中で腰を揺らしてしまう。
「はあっ、ん、ああ、あっ、し、おん……っ、だめ、いき、そ……っ」
深く、深く、ほしい。
栞鳳の小さな体に、全身でしがみつく。両腕と、両足を背中に回して、首筋に顔をうずめる。
「いっていいよ、ぼくも、だめ……ぁああ……ッ……!!」
どくどくんっ、とわたしの中に栞鳳の精液が放たれると同時に、わたしはぎゅうう~~っと栞鳳にしがみつきながら絶頂を迎えた。
膣内に広がる栞鳳の液体を感じながら、わたしは栞鳳の言葉を脳内で反芻していた。
――葉月が祠の前に来た時に、ぼくがずっと待ってたのはこの子だ、ってわかったの
本当に、栞鳳が待っていたのは、「わたし」なのだろうか……?
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