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聖女神官マリゼル
#45 リリティスの姉
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リリティスは、アゴス城内にあるアイオーラ教団の小さな修道院にいた。
まったくの偶然だが、ここにはリリティスの実の姉がいたのだ。
名前はマリゼル。歳はリリティスよりひとつだけ上。
妹と違って勇ましく装甲帯剣する聖職騎士にはならず、専業の神官である。
藍色の頭巾《ウィンプル》と法衣がよく似合う、おっとりと上品な美少女だ。
その容姿はリリティスによく似ているが、少しだけ背が高く、胸のサイズも一回り大きい。
日夜馬に乗り、剣をふるうために引き締まった妹に較べると、顔の輪郭や体型はこころもちむっちりしているようでもある。
オーガとの戦いのあと、リリティスは遊太から離れ、仲のいい姉が暮らすこの修道院に身を寄せることにしたのだった。
リリティスの私室として用意された小部屋で、姉妹は向かい合っていた。
「来てくれて本当にうれしいわ。私がこのアゴスへ転属になってからというもの、ずっと会えなかったものね」
目を細め、穏やかにマリゼルは言った。
「私もうれしい。でも、ずっとと言ってもたった半年よ」
リリティスはくすくす笑う。
「まあ、半年って、とっても長くてよ。私たち、生まれたときからずっと一緒だったんだもの。私がリリちゃんのことどれだけ好きか、知ってるでしょ?」
マリゼルは少しすねたような顔をする。
「え、ええ、そうね……」
リリティスはちょっと困った顔になる。
姉のことはリリティスも大好きだが、マリゼルの強すぎる「妹大好き圧」は、ときどき重たい。
マリゼルは続けた。
「それにオーガと戦うなんて。もちろん聖職騎士としてのお勤めのことは理解しているけれど、姉さま心配よ。万一ケガでもしたらどうするの?」
「それは大丈夫よ。心配しないで、姉さま」
笑ってみせるリリティスだが、すぐにギガントローパーとの戦いで遭遇した例の恥ずかしいアクシデントが頭によぎり、笑顔にも力がなくなる。
マリゼルからのお小言は止まらなかった。
「なにより良くないのは、傭兵の方たちと並んで従軍したことよ。だってあの方たち、オトコよ? 筋肉とかヒゲとか、ほかにもヘンなものがいろいろ体に付いてる生き物よ? 聖母神アイオーラの信徒として決してほめられたことではなくってよ。あなた、まさかオトコに体を触れられたりしていないでしょ? もしそんなことになったら姉さま泣いちゃうから」
「あの、それが……」
リリティスは顔を伏せる。ウソのつけない性格である。
マリゼルは慈しみでいっぱいの表情で、妹の頬を撫でた。
「話してちょうだい。どんなことでも姉さまが全部受け止めてあげる。いつもそうしてきたでしょ?」
「実は私、魔槍探索のために旅をしているときに、ひとりの旅人と出会ったの。ユータという、遠い国からきた男の子よ。森で水浴びをしているときに、そのひとに出会って……」
「ちょっ、ちょっと待って!」
いきなりマリゼルが話を遮る。
「なあに、姉さま」
「水浴びって、あなた、もしかして裸……見られたの? そのオトコに?」
まったくの偶然だが、ここにはリリティスの実の姉がいたのだ。
名前はマリゼル。歳はリリティスよりひとつだけ上。
妹と違って勇ましく装甲帯剣する聖職騎士にはならず、専業の神官である。
藍色の頭巾《ウィンプル》と法衣がよく似合う、おっとりと上品な美少女だ。
その容姿はリリティスによく似ているが、少しだけ背が高く、胸のサイズも一回り大きい。
日夜馬に乗り、剣をふるうために引き締まった妹に較べると、顔の輪郭や体型はこころもちむっちりしているようでもある。
オーガとの戦いのあと、リリティスは遊太から離れ、仲のいい姉が暮らすこの修道院に身を寄せることにしたのだった。
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目を細め、穏やかにマリゼルは言った。
「私もうれしい。でも、ずっとと言ってもたった半年よ」
リリティスはくすくす笑う。
「まあ、半年って、とっても長くてよ。私たち、生まれたときからずっと一緒だったんだもの。私がリリちゃんのことどれだけ好きか、知ってるでしょ?」
マリゼルは少しすねたような顔をする。
「え、ええ、そうね……」
リリティスはちょっと困った顔になる。
姉のことはリリティスも大好きだが、マリゼルの強すぎる「妹大好き圧」は、ときどき重たい。
マリゼルは続けた。
「それにオーガと戦うなんて。もちろん聖職騎士としてのお勤めのことは理解しているけれど、姉さま心配よ。万一ケガでもしたらどうするの?」
「それは大丈夫よ。心配しないで、姉さま」
笑ってみせるリリティスだが、すぐにギガントローパーとの戦いで遭遇した例の恥ずかしいアクシデントが頭によぎり、笑顔にも力がなくなる。
マリゼルからのお小言は止まらなかった。
「なにより良くないのは、傭兵の方たちと並んで従軍したことよ。だってあの方たち、オトコよ? 筋肉とかヒゲとか、ほかにもヘンなものがいろいろ体に付いてる生き物よ? 聖母神アイオーラの信徒として決してほめられたことではなくってよ。あなた、まさかオトコに体を触れられたりしていないでしょ? もしそんなことになったら姉さま泣いちゃうから」
「あの、それが……」
リリティスは顔を伏せる。ウソのつけない性格である。
マリゼルは慈しみでいっぱいの表情で、妹の頬を撫でた。
「話してちょうだい。どんなことでも姉さまが全部受け止めてあげる。いつもそうしてきたでしょ?」
「実は私、魔槍探索のために旅をしているときに、ひとりの旅人と出会ったの。ユータという、遠い国からきた男の子よ。森で水浴びをしているときに、そのひとに出会って……」
「ちょっ、ちょっと待って!」
いきなりマリゼルが話を遮る。
「なあに、姉さま」
「水浴びって、あなた、もしかして裸……見られたの? そのオトコに?」
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