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聖女騎士リリティス

#26 泉の美少女

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「今夜の野営は、ここがよかろう」
 そう言ってアフラが馬を止めさせたのは、森の中の泉のほとりだった。
 泉は澄んだ水をこんこんと湧き出させ、ちょっとした池になっている。
 周囲はやわらかな苔の生えた平らな地面で、キャンプにはもってこいだ。

 もう日が暮れかけていた。
 もちろんキャンプの経験などない遊太は、なんでも知っているアフラの指示に従って薪を集め、石で小さなかまどを作り、焚き火をおこし、小鍋でベーコンと芋に似た根菜を干したものを塩コショウとスパイスで炒め煮にした料理をこしらえた。
「うまい! はじめて作ったにしては上出来じゃ!」
 アフラはご満悦で、遊太が言われるままに作った料理をぺろりと平らげた。
「そ、そうか? なんか、料理ほめられるって嬉しいもんだな」
「明日はまた違う料理を教えてやろう。しかと励めよ」
「いや知ってるならお前も作れよ」
 アフラはごろんと敷布の上に横になった。
「魔神は捧げ物をされる側じゃ。さあ、食ったら寝るぞ」
「もう寝るのかよ。日が暮れていくらもたってないぞ」
 深夜アニメ視聴に慣れている遊太は、こんな早い時間に寝るという習慣がない。
 魔神は鼻で笑った。
「真っ暗な夜の森でなにをするつもりじゃ。しりとりでもするか」
「いやまあ、そうだけど……」
「夜明け前には朝飯をすませて出立じゃぞ。たっぷり寝ておけ。あ、ぬしよ、寝る前に鍋を洗っておくのだぞ」
 それだけ言うと、アフラはころんと仰向けになり、くーかーと寝息をたて始めた。

(人使いの荒いやつだなあ)
 ていうか、魔神のくせに睡眠が必要なのかこいつは?
 ぶつくさいいながら、遊太は汚れた食器を泉へ運び、ざぶざぶ洗う。
 ふと、その手が止まる。
(おや?)
 二十メートルほど向こうの、池の対岸に、なにかがぼうっと光っていた。

 魔物のたぐいか? 
 一瞬緊張するが、どうも違うようだ。
(あ、あれは……!)
 遠いし、暗いし、はっきりとは見えないが……それは遊太の胸をひどく高鳴らせるものだった。
 気づいたときには、遊太は食器を放り出し、足音をたてないよう池の周りをぐるりと回り込みつつ対岸の灯りへの接近を開始していた。


 近づいてみると、まず灯りの正体がわかった。
 木の枝に吊るされた、小さなランタンだった。
 火ではなく、なにかの魔法で発光しているらしく、ぼうっと青白い不思議な光であたりを照らしていた。
 遊太の前には、葦のような背の高い植物が、まるで自然のついたてのように茂っていた。
 その向こうから、「ちゃぷ、ちゃぷ」とかすかな水音がする。
(あれは……もしかしてと思ったけどやはり……!)
 遊太はそおーっと、茂みをかき分ける。
(おおっ!)
 そこには、遊太の期待どおりの光景があった。

 まぎれもなく、全裸の美少女だった。

 長い金髪。ため息が出るほど整った顔。
 豊かに張り詰めたバスト。
 大きくくびれたウエスト。
 引き締まっていながら大きく張り出したヒップ。
 すべてが水に濡れ、青白いランタンの灯を受けてぬめるように光っている。

(きれいだ……)
 最初に思ったのはそれだった。

 次に思ったのはこうだ。
(うおおおお! 異世界ありがちラッキースケベ堂々第一位! 美少女水浴びシーン生遭遇キタアアア! しかもぐうシコな恵体! ありがとう異世界の神様! 異世界サイッコォォォォォ!)

 両拳をぐっと握り、ほとばしりそうになる絶叫ををぐっとこらえる。
 大きく深呼吸してから、あらためて茂みの向こうへ視線を戻す。
 あんな美少女のあんなエロいおヌード、この先再び見られるかわからない。しかと目に焼き付けなくては。あわよくばこの場でリアルタイムドドスコだ。

(うっ!)
 なんということか。
 わずかに目を離した間に、美少女は立ち位置を少し変えていた。
 水面から伸びた草が、絶妙に美少女のエロスポイントを目隠ししている。
(ぐっ、なんだあの草! 深夜アニメの規制の光か! 円盤発売まで待てってか! いや待てるかあ!)
 な、なんとか、肝心な部分を見たいっ。
 遊太は懸命に首をひねり、足のスタンスを変える。
 それが命取りになった。
 ずるっ。
 濡れた苔で足が滑る。
 体のバランスが大きく崩れる。
(ああ、くそ)
 遊太は葦のついたてを突き破り、前のめりに水面に向かってぶっ倒れた。
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