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第四章 王都

第二十七話 返答と夕食

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 「まぁ、すぐには結果がでないだろう。それまでは部屋でくつろぐといい。夜の食事までに答えを出すといい」
 
 王は出口に向かって歩き出した。彼は立ち去る瞬間に、呟いた。

 「【特殊技能《ユニークスキル》】は知っている。今日の食事の時に話そう。」

 ボソッと隊長に聞こえないように言った。

 どういうことだろう。

 「では、さらば……」

 出口から王は出て行った。と同時にメイドが現れる。

 「お部屋にお連れします」





 メイドに連れられて来たのは、広い部屋だった。
 フカフカそうなの大きなベッドが置かれている。俺一人では小さいぐらいだろう。他にも装飾品が部屋に鏤められている。

 「こちらの部屋が寝室となります」
 「ということは他の部屋もあるの?」
 「はい。異世界人の中でも人気な浴室もあります。ただ、浴室は少し離れて、三階の王族用の大浴場を使うようにと、王より言われおりますので」

 ふむ。王族用の大浴場に……へ、へぇー、すごいなー……

 「俺なんかが王族用の大浴場使っていいの?」
 「勿論でございます。現在のあなたの立場を貴族の立場に置き換えると、公爵レベルの権限は普通にあります。あなたが一言、土地が欲しいと言えば、土地を与えられるでしょうし、最高級の素材が欲しいと言えば貰えるでしょう。そのぐらい、貴方には期待がかかっています」

 ふ、ふーん。俺にそんな期待掛けられても、俺の胃が痛くなるだけだから。

 「食事は食堂、二階の食堂になります。今日は王族と一緒に食べるようにと言われております」

 ふむ。ご飯も王族と一緒に……もう、お腹が痛くなってきた。

 「明日の朝は王族の皆様と一緒に朝食をとられた後に、この世界についての講義と親衛隊による訓練が予定されています」

 明日は忙しそうだな。講義、勉強の時間と訓練。日本の頃よりずっと大変そうだ。

 「アルフレッド様はそちらにお泊まりになるそうです」

 メイドはそう言った。

 なんというか、育て上げられている感がある。キッチリとした仕事人ということは伝わってくる。

 「というわけで今日からよろしくお願いします。専属メイドとして、きっちり働けさせて頂きます。カケル様」

 そう言って、彼女は微笑んだ。

 俺は彼女に退出してもらってからつぶやく。

 「……ひたすらに胃が痛い」





 「さて、これからのことだが――」

 王は夕食の最中にそう切り出した。

 夕食は、竜肉のソテーがメインだった。竜という超希少な魔獣の肉を使った料理。とてもおいしい。

 「君が仲間になってくれるなら、君のサポートになるが、どうする?」

 俺は決めた回答を口に出す。

 「わかりました。この国につきます。ただし、ある程度の自由を約束してください」
 「わかった。いいだろう。その内容は後で宣誓書を作成しよう」

 これでいい。俺が考えた中ではベストだ。最も単細胞だから、ラノベの主人公みたくきっちりとした判断はできないが……

 「とりあえず、これからは王城で暮らせばいい。ただ基本的に王城内でその技能について話すないように」

 王はソテーに手をつけ、言った。

 「――当面は大量の技能獲得を目安に動いていこうと思う」

 ここには、俺と王とアルしかいないので、堂々と【特殊技能《ユニークスキル》】のことを話せる。そう思ってなのか、王がこれからの作戦について言う。

 「そうだな。僕もそう思うよ。やっぱり、技能は沢山あるだけいいし……」

 アルが肯定する。
 「でも、僕の【技能奪取】は相手から技能を取ってしまうんですよ」

 俺がそう言った瞬間、王はニヤリと笑った。悪戯を思いついた子供のようだ。

 「囚人から技能を取ればいい。王城の地下牢には、凶悪な犯罪者どもが沢山いる。そういう奴らの技能を奪えるのなら好都合だ。中には帝国の兵士もいるしな」

 なるほど。それならいい。

 「ところで、今日の分はもう創ったんだよな」
 「はい。【聖王国語】を創りました」
 「なら、明日は【技能融合】を創ってほしい」

 王はそう言ってきた。

 「王? あれって確か【特殊技能《ユニークスキル》】じゃありませんでしたか?」
 「あぁ。でも、試してみる価値はあるだろう。というか、ランクが足らないのなら、Ⅱに上げればいいだけだし」
 「まさか、裏技を使わせる気ですか?」
 「あぁ。勿論」

 何やら話が進んでいるな。あっ、このサラダおいしい。ソースと野菜がマッチしている。

 「まぁ、明日はそれを試してくれ」
 「あっ、はい。わかりました」

 明日の獲得予定の技能《スキル》は【技能融合】か。とりあえず、覚えておこう。

 「よし、じゃあ、次は帝国の卵についてか」
 「帝国についてですか?」

 俺は訊ねる。

 「あぁ、そうだ。アルが見つけた中でも【異界勇者】になれそうな者は一人しかいなかったんだろ」
 「間違いありませんよー。【裏技能《バックスキル》】だと思うんですけどね。あの女の子。普通に表にさえ、【特殊技能《ユニークスキル》】持ってたしね」
 「ちなみにその能力は何なんですか?」
 「あぁ。翔の方がこのままいけば有利なんだよな。【次元召喚】。何でも呼び出すことができる。普通の能力だ」

 えっ、何それ。普通に強そうなんだけど……

 「もう一個は……」
 「あぁ、【源流魔術】。こっちは結構いいやつっぽい。初めて見たやつだから確証はないけどね」

 そっちも普通に強そうなんだけど。絶対、それ負けるやつだよね。俺負けるよね。

 「ふむ。敵は【王之欠片】もないか。やっぱり勝てるんじゃないか」

 フラグにしか聞こえてきませんが、どうしろと、俺にどうしろと?

 「まぁ、王。こいつは技能を沢山獲得していけるわけですから、理論上最強の【異界勇者】じゃないですか。最悪、こっそりと相手から技能を奪ればいいだけですし」
 「それもそうか。ふむ。今回の選択は間違ってなさそうだな……」

 もう。なんか期待で胃が痛い。

 「それではご馳走様でした。だったけ、日本とやらの文化は」
 「そうだよ。ご馳走様でした」

 俺も軽くごちそうさまと呟く。

 明日からどうなるんだろう。
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