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16 オペラ食堂
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食堂、というにはあまりにも施設が豪華だった。
中央に大空間が広がり、周囲には3階までぐるりと食席がある。大空間の中央には巨大な演劇台がある。巨大食堂の奥にも舞台があり、ここで食事はもちろんイベントなども開かれるそうだ。
私たち1年生は1階で2年は2階、3年が3階とどんどん上に上がっていくと聞いている。席は自由なので、ルームメイトのエマと適当な場所へ座った。向かい合って食べるわけではなく中央の空間へ向かって座るのであまりひとの視線も気にならない。
着席すると、各食席の前にボタンがあり、着席を合図する青いボタンを押すと私が座った席の上側についているランプが点灯し、中央の演劇台そばに準備されていた食事がトレイに乗ってフワフワと浮いて運ばれてきた。
生徒が全員着席し、手元に食事が運び終わった頃、中央の演劇台で立体投影による演劇が始まった。
映像はとてもリアルでほんのわずかだが手先などの細かい部分が透けて見えるくらいで動きもとても滑らか。
男女の恋仲を描いた物語で私は食事しながら見入っていると、ガチャンと食器が落ちて割れる音がした。
私も含め、多くのひとが食席から身を乗り出して音のした方向を見る。そこには席から立ち上がって激昂しているキャムと食席の椅子ごと倒れたサラサがいた。
「オレが野菜を嫌いなのを知ってるだろ!?」
──は?
「ですが、ここは寮の食堂です。キャム様、私が食べるわけには……」
「ふん、もういい、散らかったのを片付けておけ」
「……はい」
おいおいおい……何を言ってるんだアイツ? たしかに転生前から好き嫌いが多くて食事にはかなり気を使っていたが、なぜサラサに食べさせようとしているんだ。それも自分で払いのけて落とした食器とその中身を彼女に拾わせて「トイレに行ってくるからそれまでに綺麗にしておけ」と命令し、歌劇食堂を出て行った。
私は食べている途中のものを無理矢理口の中にかき込んで急いでサラサの元へ向かう。
「サラサ大丈夫?」
「……シリカ……さま?」
「うん、でも私のことは呼び捨てでお願い」
「はい、シリカさ……シリカ」
制服をこぼれたスープで少し汚れた彼女を手を差し伸べ立たせた。魔法を発動させ、床に落ちているものをすべて拾い上げ、トレイの上に戻す。次にサラサの制服へ清浄魔法をかける。彼女の服についた赤茶けたスープのシミがみるみると薄くなって消えていく。
「ごめんなさい」
「え?」
「その……迷惑かけてしまって」
「だってサラサは悪くないでしょ?」
「いえ、私が気が回らないばかりにキャム様を怒らせてしまいました」
似ている。昔の自分を見ているみたいで胸が締め付けられる。どうしてああいう男は弱い女性にどこまでも強く出られるのだろう? ──なんか頭にきた。
「おい、邪魔だ」
「あら、久しぶり」
「あ?」
キャムがトイレから戻ってきた。彼が座っていた食席の前に立っている私を邪魔そうにみている。
挨拶しても気が付かない。どうやら私のことを完全に忘れている様子、いいわ、思い出させてあげる。
「バロアとふたりでニオギ・ヒュドラを倒したんだ。ふーん……」
「それがどうした?」
「どうやって倒したの?」
「水魔法だけど」
「魔導書の炎魔法に頼ってたの誰だっけ?」
「おまッ……あの時の」
ようやく気が付いた。そのうえで忠告する。
「サラサをイジメると喋っちゃうかも」
「……わかったよ」
まったく……口で約束してもこの男の本性は絶対に変わらない。はやくレオナード皇子にサラサを庇護してもらわないと……。
他の生徒は静かに演劇鑑賞しながら食事をしていたので、同級生達だけではなく上級生たちにも私たちが騒いでいたのを見られてしまってますます悪目立ちしてしまった。
もっとうまくやらなきゃと思いながら自分の部屋へ戻ろうと廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。
「やあ、初めまして」
振り返ってみると、そこにはレオナード皇子とロニ・ゴットフリートが立っていた。
中央に大空間が広がり、周囲には3階までぐるりと食席がある。大空間の中央には巨大な演劇台がある。巨大食堂の奥にも舞台があり、ここで食事はもちろんイベントなども開かれるそうだ。
私たち1年生は1階で2年は2階、3年が3階とどんどん上に上がっていくと聞いている。席は自由なので、ルームメイトのエマと適当な場所へ座った。向かい合って食べるわけではなく中央の空間へ向かって座るのであまりひとの視線も気にならない。
着席すると、各食席の前にボタンがあり、着席を合図する青いボタンを押すと私が座った席の上側についているランプが点灯し、中央の演劇台そばに準備されていた食事がトレイに乗ってフワフワと浮いて運ばれてきた。
生徒が全員着席し、手元に食事が運び終わった頃、中央の演劇台で立体投影による演劇が始まった。
映像はとてもリアルでほんのわずかだが手先などの細かい部分が透けて見えるくらいで動きもとても滑らか。
男女の恋仲を描いた物語で私は食事しながら見入っていると、ガチャンと食器が落ちて割れる音がした。
私も含め、多くのひとが食席から身を乗り出して音のした方向を見る。そこには席から立ち上がって激昂しているキャムと食席の椅子ごと倒れたサラサがいた。
「オレが野菜を嫌いなのを知ってるだろ!?」
──は?
「ですが、ここは寮の食堂です。キャム様、私が食べるわけには……」
「ふん、もういい、散らかったのを片付けておけ」
「……はい」
おいおいおい……何を言ってるんだアイツ? たしかに転生前から好き嫌いが多くて食事にはかなり気を使っていたが、なぜサラサに食べさせようとしているんだ。それも自分で払いのけて落とした食器とその中身を彼女に拾わせて「トイレに行ってくるからそれまでに綺麗にしておけ」と命令し、歌劇食堂を出て行った。
私は食べている途中のものを無理矢理口の中にかき込んで急いでサラサの元へ向かう。
「サラサ大丈夫?」
「……シリカ……さま?」
「うん、でも私のことは呼び捨てでお願い」
「はい、シリカさ……シリカ」
制服をこぼれたスープで少し汚れた彼女を手を差し伸べ立たせた。魔法を発動させ、床に落ちているものをすべて拾い上げ、トレイの上に戻す。次にサラサの制服へ清浄魔法をかける。彼女の服についた赤茶けたスープのシミがみるみると薄くなって消えていく。
「ごめんなさい」
「え?」
「その……迷惑かけてしまって」
「だってサラサは悪くないでしょ?」
「いえ、私が気が回らないばかりにキャム様を怒らせてしまいました」
似ている。昔の自分を見ているみたいで胸が締め付けられる。どうしてああいう男は弱い女性にどこまでも強く出られるのだろう? ──なんか頭にきた。
「おい、邪魔だ」
「あら、久しぶり」
「あ?」
キャムがトイレから戻ってきた。彼が座っていた食席の前に立っている私を邪魔そうにみている。
挨拶しても気が付かない。どうやら私のことを完全に忘れている様子、いいわ、思い出させてあげる。
「バロアとふたりでニオギ・ヒュドラを倒したんだ。ふーん……」
「それがどうした?」
「どうやって倒したの?」
「水魔法だけど」
「魔導書の炎魔法に頼ってたの誰だっけ?」
「おまッ……あの時の」
ようやく気が付いた。そのうえで忠告する。
「サラサをイジメると喋っちゃうかも」
「……わかったよ」
まったく……口で約束してもこの男の本性は絶対に変わらない。はやくレオナード皇子にサラサを庇護してもらわないと……。
他の生徒は静かに演劇鑑賞しながら食事をしていたので、同級生達だけではなく上級生たちにも私たちが騒いでいたのを見られてしまってますます悪目立ちしてしまった。
もっとうまくやらなきゃと思いながら自分の部屋へ戻ろうと廊下を歩いていると後ろから声をかけられた。
「やあ、初めまして」
振り返ってみると、そこにはレオナード皇子とロニ・ゴットフリートが立っていた。
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