79 / 91
長編
第9話 トラブル
しおりを挟む
「これって、忍者の父親と暗殺者の母親と魔力を持った男の子のアニメの……」
「はい、母親の方のコスプレを……」
耳が真っ赤になっている。
どうやらコスプレイベントに参加したところを瀬下に見られてしまったらしい。
それにしても、すごくサマになっている。ちなみに父親役と男の子役はウチの会社で、当真くんと仲の良い経理課の女性たち……。
いいな瀬下、当真くんのコスプレを直に見れて……じゃなかった。
「ありがとう話してくれて。よく似合っているよ」
「先輩はコスプレとか興味はありますか?」
「いやぁ~正直、あまりないけど、一度はどんなものか実際見たいかも」
「ホントですか? 今度一緒に行きませんか? 父親役の方に先輩そっくりだからすごく盛り上がると思います」
え、いや、俺はただ当真くんのコスプレを見たいだけなんだが……なんか、俺もコスプレする流れになっている。
まあ、当真くんが喜んでくれるなら一度くらいはいいかな?
なんか、休日に会う約束ができてしまった。うん、いいかもしれない。
ちょっと話が長くなってしまった。屋上への集合時間がだいぶ過ぎてしまったので、当真くんとふたりエレベーターで屋上へ昇った。
「あっ来たぁカッコいい~!」
「実物の方がもっとイケメン♪」
「隣の子、かわいい~」
なんだ? 昼に瀬下が約束していたのはふたり組だったはずだが、女性が4人もいる。
話を聞くと、他のふたりとは昼は別行動で夜、ホテルで合流することになっていたそうだ。
どうもこういった騒がしい雰囲気は好きではないが、苦手という訳ではない。
女性陣に適当に話を合わせて、面白い話題を提供して笑わせたり、男性、女性メンバーで会話に乗り遅れそうな人にうまく話題を振って、お酒の席をコントロールする。
俺は結構、お酒はイケる方だが、カラダに良くないので、控え目にしながら、時間があっという間に過ぎていった。
「未央くんをお部屋へ持って帰りまーす」
「私は小介さんに持って帰ってもらいまーす」
皆、結構、酔いが回ったのか、ふざけて大胆なことを言い始めているが、当真くんは、アハハッと笑いながらも、隣に座っている女性から少し距離を置いている。御堂係長は、女性のひとりがマンツーマンで序盤からずっとふたりで話し込んでいる。そして瀬下は……。
「じゃあ、歌うっす~ッ。曲はオリジナル〝自分・メモリー〟」
完全に酔ってる。初恋は保育園の先生という歌い出しから自分の人生を歌詞にしていて、それがある意味泣けるエピソードばかりで、ちょっとだけ瀬下に同情した。
それよりもムードのあるバーなのに俺たちだけうるさくしていて、ちょっと他のお客さんに迷惑じゃないか先ほどから気がかりだった。
「あー、うるせーなーさっきから」
「すみませ~ん。以後気をつけっるッすー」
俺たちからは見えない奥の方で飲んでいるひと達からお叱りを受けた。はしゃぎ過ぎたので、しょうがないと思ったのだが……。
瀬下が酔った状態で、謝ったのが、彼らのスイッチが入る合図だったようだ。
「コッチは出張で田舎に来てんのにゆっくりもできねーのな?」
「兄ちゃん達いくつ? ちゃんと学校卒業した大人かよ? バカみたいに騒ぎやがって」
「こんな顔だけのおバカな連中と遊んでる女も大したことねーな」
「……どうする? 帰る?」
色々、ハラスメント的にアウトな言いがかりをネチネチと言ってくる。女性陣は一気に酔いが醒めたらしく、俺達に挨拶をして、部屋へと帰っていった。
これは、ただうるさかったというだけではなく、ヤキモチめいた気持ちも混じっているんだと思うが、聞かされる身にとってはたまったものではない。
「ダッセェ~~ッ女に逃げられてやんの」
「まあ、顔だけじゃ男はモテないんだよな」
女性陣は撤退したのに、まだ野次を飛ばしてくる。瀬下もようやく流れている空気に気が付き、大人しくなる。
当真くんは不安そうな顔をしているが、さすが御堂係長。足を組んで、動じた様子がまったくない。
「そうだ瀬下。〇△選手のケガはどうだ?」
「肘の故障は、治ったみたいっすけど、今季はもう投げないみたいっす」
話題をプロ野球の話に切り替えて、瀬下をしゃべらせることによって、奥の席から漂ってくるイヤな空気を遮断する。
「はい、母親の方のコスプレを……」
耳が真っ赤になっている。
どうやらコスプレイベントに参加したところを瀬下に見られてしまったらしい。
それにしても、すごくサマになっている。ちなみに父親役と男の子役はウチの会社で、当真くんと仲の良い経理課の女性たち……。
いいな瀬下、当真くんのコスプレを直に見れて……じゃなかった。
「ありがとう話してくれて。よく似合っているよ」
「先輩はコスプレとか興味はありますか?」
「いやぁ~正直、あまりないけど、一度はどんなものか実際見たいかも」
「ホントですか? 今度一緒に行きませんか? 父親役の方に先輩そっくりだからすごく盛り上がると思います」
え、いや、俺はただ当真くんのコスプレを見たいだけなんだが……なんか、俺もコスプレする流れになっている。
まあ、当真くんが喜んでくれるなら一度くらいはいいかな?
なんか、休日に会う約束ができてしまった。うん、いいかもしれない。
ちょっと話が長くなってしまった。屋上への集合時間がだいぶ過ぎてしまったので、当真くんとふたりエレベーターで屋上へ昇った。
「あっ来たぁカッコいい~!」
「実物の方がもっとイケメン♪」
「隣の子、かわいい~」
なんだ? 昼に瀬下が約束していたのはふたり組だったはずだが、女性が4人もいる。
話を聞くと、他のふたりとは昼は別行動で夜、ホテルで合流することになっていたそうだ。
どうもこういった騒がしい雰囲気は好きではないが、苦手という訳ではない。
女性陣に適当に話を合わせて、面白い話題を提供して笑わせたり、男性、女性メンバーで会話に乗り遅れそうな人にうまく話題を振って、お酒の席をコントロールする。
俺は結構、お酒はイケる方だが、カラダに良くないので、控え目にしながら、時間があっという間に過ぎていった。
「未央くんをお部屋へ持って帰りまーす」
「私は小介さんに持って帰ってもらいまーす」
皆、結構、酔いが回ったのか、ふざけて大胆なことを言い始めているが、当真くんは、アハハッと笑いながらも、隣に座っている女性から少し距離を置いている。御堂係長は、女性のひとりがマンツーマンで序盤からずっとふたりで話し込んでいる。そして瀬下は……。
「じゃあ、歌うっす~ッ。曲はオリジナル〝自分・メモリー〟」
完全に酔ってる。初恋は保育園の先生という歌い出しから自分の人生を歌詞にしていて、それがある意味泣けるエピソードばかりで、ちょっとだけ瀬下に同情した。
それよりもムードのあるバーなのに俺たちだけうるさくしていて、ちょっと他のお客さんに迷惑じゃないか先ほどから気がかりだった。
「あー、うるせーなーさっきから」
「すみませ~ん。以後気をつけっるッすー」
俺たちからは見えない奥の方で飲んでいるひと達からお叱りを受けた。はしゃぎ過ぎたので、しょうがないと思ったのだが……。
瀬下が酔った状態で、謝ったのが、彼らのスイッチが入る合図だったようだ。
「コッチは出張で田舎に来てんのにゆっくりもできねーのな?」
「兄ちゃん達いくつ? ちゃんと学校卒業した大人かよ? バカみたいに騒ぎやがって」
「こんな顔だけのおバカな連中と遊んでる女も大したことねーな」
「……どうする? 帰る?」
色々、ハラスメント的にアウトな言いがかりをネチネチと言ってくる。女性陣は一気に酔いが醒めたらしく、俺達に挨拶をして、部屋へと帰っていった。
これは、ただうるさかったというだけではなく、ヤキモチめいた気持ちも混じっているんだと思うが、聞かされる身にとってはたまったものではない。
「ダッセェ~~ッ女に逃げられてやんの」
「まあ、顔だけじゃ男はモテないんだよな」
女性陣は撤退したのに、まだ野次を飛ばしてくる。瀬下もようやく流れている空気に気が付き、大人しくなる。
当真くんは不安そうな顔をしているが、さすが御堂係長。足を組んで、動じた様子がまったくない。
「そうだ瀬下。〇△選手のケガはどうだ?」
「肘の故障は、治ったみたいっすけど、今季はもう投げないみたいっす」
話題をプロ野球の話に切り替えて、瀬下をしゃべらせることによって、奥の席から漂ってくるイヤな空気を遮断する。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
俺の小学生時代に童貞を奪ったえっちなお兄さんに再会してしまいました
湊戸アサギリ
BL
今年の一月にピクシブにアップしたものを。
男子小学生×隣のエロお兄さんで直接的ではありませんが性描写があります。念の為R15になります。成長してから小学生時代に出会ったお兄さんと再会してしまうところで幕な内容になっています
※成人男性が小学生に手を出しています
2023.6.18
表紙をAIイラストに変更しました
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
同室の奴が俺好みだったので喰おうと思ったら逆に俺が喰われた…泣
彩ノ華
BL
高校から寮生活をすることになった主人公(チャラ男)が同室の子(めちゃ美人)を喰べようとしたら逆に喰われた話。
主人公は見た目チャラ男で中身陰キャ童貞。
とにかくはやく童貞卒業したい
ゲイではないけどこいつなら余裕で抱ける♡…ってなって手を出そうとします。
美人攻め×偽チャラ男受け
*←エロいのにはこれをつけます
上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い
papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。
派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。
そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。
無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、
女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。
一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。
普通の学生だった〜番外編。「吸血鬼」
かーにゅ
BL
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて(合ってるかわかんない…作者ですらうろ覚えの長いタイトルを付けてしまった…)
に載せていた番外編「吸血鬼」
なんとなーく作者が気に入ったので単独で番外編出すことにしましたー
多分更新頻度はすごいことになりマース
怒涛の更新からの沈黙の時間…見たいな?
とりあえず作者の学校も休校してて暇なのでその間にガーッと書こうと思います。
よろしくお願いしマース
作者の趣味・趣向爆発してます。お気をつけて
なーぜかちっこいものに惹かれる作者です
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる