73 / 91
長編
第3話 サンキューベル
しおりを挟む
「瀬下はどうした?」
「電話してみます」
ファストフードでの休憩を終え、出発時間になっても瀬下がレンタカーに戻ってこない。
御堂係長も気にしているので、電話をかけてみた。
(ただいま電話に出ることはできません……)
留守電に変わる前に電話を切り、SMSによる電話番号への直接メッセージと課内用LIMEグループを使って連絡を残した。
「ボクちょっと探してきますね」
「当真くんありがとう。俺も手分けして探すよ」
当真くんが、店内。俺はトイレの方に行ってみる。
するとどうだろう。
トイレの前で観光客と思われる女の子ふたりとお喋りしている瀬下がいた。
「瀬下、時間だぞ」
「ほらね」
「ホントにイケメンだぁ~」
おい……まさかナンパしてるんじゃ?
「じゃあ、今夜ホテルで会うっす」
「はぁ~い、じゃあね~」
車に戻りながら、聞くと今日泊まる予定のホテルに彼女たちも泊まるらしく、昨日からSNSで遊べるひとがいないか探していたそうだ。
遊ぶならひとりで遊んでくれ。
車に戻ると、御堂係長へトイレの中にいたと報告する瀬下を言及することなく放置した。
今度は当真くんが戻ってこない。
瀬下の時と同様に電話、SMS、LIMEを使うが反応がないので、瀬下は車の中で待っておくように言って、すばやく店内を探したらすぐに見つかった。
当真くん、店の出入り口のところでモジモジとしている。
「当真くん、なんかあった?」
「あ、先輩、これ……」
ん……これは?
商品やサービスに満足したら、このベルを鳴らしてくださいって書いてある。
「さっき、男の子が鳴らしていて……」
うん、たしかにさっきカランカラン鳴っていたが、このベルの音だったんだ。
当真くんが目をやや下にして、明らかに迷っている。
「別におとなが鳴らしてもいいんじゃないかな?」
「ホントですか♪」
当真くんのパッと咲いた笑顔に『ゾクッ』としながらも、俺も笑顔を見せることによって、当真くんの背中を押す。
『カランカラ~ン』
「「「ありがとうございました」」」
おお、当真くんが鐘を鳴らしたら、店員さんが皆、お礼を言ってきたのでちょっとビックリした。
こんな風にお店側とお客の間で、感謝の気持ちを伝えあうのって、すごく温かさを感じて、いいと思う。
当真くんは頬を染めながら、俺の袖を引き、足早に店の外に出た。
なんか、鐘を鳴らしたくなるところとか、鳴らして恥ずかしがっているところとか見ていると、なんだかホッコリしてしまう。
「大丈夫?」
「ええ、瀬下のせいで、入念に店内を探してくれてました」
御堂係長が、めずらしく心配そうに聞いてきたので、すべて瀬下の責任にして、やり過す。ぶーぶーと文句を言っているが、ホントに瀬下のせいだから、知らないフリをする。
ちょっとしたアクシデントを終え、レンタカーで沖縄本島を北上し、1時間もかからないくらいで次の目的地に到着する。
美浜アメリカンビレッジ。
沖縄の異国情緒あふれるカラフルな建物が目を引くリゾートタウンで、平日の昼だが、観光客がたくさん溢れかえっている。
ショッピングはもちろん、海外の食事も色々と提供されている。ウォールアートやオブジェに溢れるユニークな空間はまるで大型テーマパーク内にいるかと感じてしまう。
そして、なにより魅力的なのは、海岸に面したカフェ店……西側に向いているので、夕陽が沈む時にこの場所に訪れたらきっと感動するに違いない。
ここでも、複数の店を御堂係長と瀬下。俺と当真くんと二手に分かれて効率よく営業活動を終わらせる。
俺と当真くんが割り当てられたお店を回り終え、集合時間までまだ時間があるので、アメリカンビレッジ内を軽く見ることにした。
「先輩、この中に入っても大丈夫ですか?」
当真くんが指差したのは、カラフルな色でデザインされた雑貨店だった。
当真くんが店内を見て回っている間にお店のひとに珍しい柄なので、訊ねてみると『紅型』という沖縄に昔から伝わる染物技法のひとつで、沖縄ではとてもメジャーなものだそうだ。その紅型をこうして、現代風にアレンジすることによって、財布やバッグ、傘などに絵柄として、デザインされたものがお店に並んでいて、女性や子供に人気があるそうだ。
「先輩、これどうですか?」
当真くんが、俺にみせてきたのは、カラフルな小さな袋。
「それはマース袋ですね」
マース袋とは、マース=塩を入れるための専用の袋だそうだ。
魔除け用ってことか。
当真くんに「いいね」と答えると嬉しそうに水色と桃色のマース袋を買って、「かわいいですから」と言って、水色の方を俺にくれた。
▽▲▽▲▽
「ありがとうございました~」
お店を出ていった美男美女のカップルを見送った店主は「はぁ~」とため息をついた。
「あのマース袋のペアセット、恋愛成就のためのものだから、うらやましいさぁ~」
『ゾクッ』
「先輩、どうしました?」
「ん、いや、今なんかゾクっとしちゃって」
「電話してみます」
ファストフードでの休憩を終え、出発時間になっても瀬下がレンタカーに戻ってこない。
御堂係長も気にしているので、電話をかけてみた。
(ただいま電話に出ることはできません……)
留守電に変わる前に電話を切り、SMSによる電話番号への直接メッセージと課内用LIMEグループを使って連絡を残した。
「ボクちょっと探してきますね」
「当真くんありがとう。俺も手分けして探すよ」
当真くんが、店内。俺はトイレの方に行ってみる。
するとどうだろう。
トイレの前で観光客と思われる女の子ふたりとお喋りしている瀬下がいた。
「瀬下、時間だぞ」
「ほらね」
「ホントにイケメンだぁ~」
おい……まさかナンパしてるんじゃ?
「じゃあ、今夜ホテルで会うっす」
「はぁ~い、じゃあね~」
車に戻りながら、聞くと今日泊まる予定のホテルに彼女たちも泊まるらしく、昨日からSNSで遊べるひとがいないか探していたそうだ。
遊ぶならひとりで遊んでくれ。
車に戻ると、御堂係長へトイレの中にいたと報告する瀬下を言及することなく放置した。
今度は当真くんが戻ってこない。
瀬下の時と同様に電話、SMS、LIMEを使うが反応がないので、瀬下は車の中で待っておくように言って、すばやく店内を探したらすぐに見つかった。
当真くん、店の出入り口のところでモジモジとしている。
「当真くん、なんかあった?」
「あ、先輩、これ……」
ん……これは?
商品やサービスに満足したら、このベルを鳴らしてくださいって書いてある。
「さっき、男の子が鳴らしていて……」
うん、たしかにさっきカランカラン鳴っていたが、このベルの音だったんだ。
当真くんが目をやや下にして、明らかに迷っている。
「別におとなが鳴らしてもいいんじゃないかな?」
「ホントですか♪」
当真くんのパッと咲いた笑顔に『ゾクッ』としながらも、俺も笑顔を見せることによって、当真くんの背中を押す。
『カランカラ~ン』
「「「ありがとうございました」」」
おお、当真くんが鐘を鳴らしたら、店員さんが皆、お礼を言ってきたのでちょっとビックリした。
こんな風にお店側とお客の間で、感謝の気持ちを伝えあうのって、すごく温かさを感じて、いいと思う。
当真くんは頬を染めながら、俺の袖を引き、足早に店の外に出た。
なんか、鐘を鳴らしたくなるところとか、鳴らして恥ずかしがっているところとか見ていると、なんだかホッコリしてしまう。
「大丈夫?」
「ええ、瀬下のせいで、入念に店内を探してくれてました」
御堂係長が、めずらしく心配そうに聞いてきたので、すべて瀬下の責任にして、やり過す。ぶーぶーと文句を言っているが、ホントに瀬下のせいだから、知らないフリをする。
ちょっとしたアクシデントを終え、レンタカーで沖縄本島を北上し、1時間もかからないくらいで次の目的地に到着する。
美浜アメリカンビレッジ。
沖縄の異国情緒あふれるカラフルな建物が目を引くリゾートタウンで、平日の昼だが、観光客がたくさん溢れかえっている。
ショッピングはもちろん、海外の食事も色々と提供されている。ウォールアートやオブジェに溢れるユニークな空間はまるで大型テーマパーク内にいるかと感じてしまう。
そして、なにより魅力的なのは、海岸に面したカフェ店……西側に向いているので、夕陽が沈む時にこの場所に訪れたらきっと感動するに違いない。
ここでも、複数の店を御堂係長と瀬下。俺と当真くんと二手に分かれて効率よく営業活動を終わらせる。
俺と当真くんが割り当てられたお店を回り終え、集合時間までまだ時間があるので、アメリカンビレッジ内を軽く見ることにした。
「先輩、この中に入っても大丈夫ですか?」
当真くんが指差したのは、カラフルな色でデザインされた雑貨店だった。
当真くんが店内を見て回っている間にお店のひとに珍しい柄なので、訊ねてみると『紅型』という沖縄に昔から伝わる染物技法のひとつで、沖縄ではとてもメジャーなものだそうだ。その紅型をこうして、現代風にアレンジすることによって、財布やバッグ、傘などに絵柄として、デザインされたものがお店に並んでいて、女性や子供に人気があるそうだ。
「先輩、これどうですか?」
当真くんが、俺にみせてきたのは、カラフルな小さな袋。
「それはマース袋ですね」
マース袋とは、マース=塩を入れるための専用の袋だそうだ。
魔除け用ってことか。
当真くんに「いいね」と答えると嬉しそうに水色と桃色のマース袋を買って、「かわいいですから」と言って、水色の方を俺にくれた。
▽▲▽▲▽
「ありがとうございました~」
お店を出ていった美男美女のカップルを見送った店主は「はぁ~」とため息をついた。
「あのマース袋のペアセット、恋愛成就のためのものだから、うらやましいさぁ~」
『ゾクッ』
「先輩、どうしました?」
「ん、いや、今なんかゾクっとしちゃって」
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
童貞が建設会社に就職したらメスにされちゃった
なる
BL
主人公の高梨優(男)は18歳で高校卒業後、小さな建設会社に就職した。しかし、そこはおじさんばかりの職場だった。
ストレスや性欲が溜まったおじさん達は、優にエッチな視線を浴びせ…
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
クラスの仲良かったオタクに調教と豊胸をされて好みの嫁にされたオタクに優しいギャル男
湊戸アサギリ
BL
※メス化、男の娘化、シーメール化要素があります。オタクくんと付き合ったギャル男がメスにされています。手術で豊胸した描写があります。これをBLって呼んでいいのかわからないです
いわゆるオタクに優しいギャル男の話になります。色々ご想像にお任せします。本番はありませんが下ネタ言ってますのでR15です
閲覧ありがとうございます。他の作品もよろしくお願いします
俺の小学生時代に童貞を奪ったえっちなお兄さんに再会してしまいました
湊戸アサギリ
BL
今年の一月にピクシブにアップしたものを。
男子小学生×隣のエロお兄さんで直接的ではありませんが性描写があります。念の為R15になります。成長してから小学生時代に出会ったお兄さんと再会してしまうところで幕な内容になっています
※成人男性が小学生に手を出しています
2023.6.18
表紙をAIイラストに変更しました
男だけど女性Vtuberを演じていたら現実で、メス堕ちしてしまったお話
ボッチなお地蔵さん
BL
中村るいは、今勢いがあるVTuber事務所が2期生を募集しているというツイートを見てすぐに応募をする。無事、合格して気分が上がっている最中に送られてきた自分が使うアバターのイラストを見ると女性のアバターだった。自分は男なのに…
結局、その女性アバターでVTuberを始めるのだが、女性VTuberを演じていたら現実でも影響が出始めて…!?
同室の奴が俺好みだったので喰おうと思ったら逆に俺が喰われた…泣
彩ノ華
BL
高校から寮生活をすることになった主人公(チャラ男)が同室の子(めちゃ美人)を喰べようとしたら逆に喰われた話。
主人公は見た目チャラ男で中身陰キャ童貞。
とにかくはやく童貞卒業したい
ゲイではないけどこいつなら余裕で抱ける♡…ってなって手を出そうとします。
美人攻め×偽チャラ男受け
*←エロいのにはこれをつけます
上司に連れられていったオカマバー。唯一の可愛い子がよりにもよって性欲が強い
papporopueeee
BL
契約社員として働いている川崎 翠(かわさき あきら)。
派遣先の上司からミドリと呼ばれている彼は、ある日オカマバーへと連れていかれる。
そこで出会ったのは可憐な容姿を持つ少年ツキ。
無垢な少女然としたツキに惹かれるミドリであったが、
女性との性経験の無いままにツキに入れ込んでいいものか苦悩する。
一方、ツキは性欲の赴くままにアキラへとアプローチをかけるのだった。
少年ペット契約
眠りん
BL
※少年売買契約のスピンオフ作品です。
↑上記作品を知らなくても読めます。
小山内文和は貧乏な家庭に育ち、教育上よろしくない環境にいながらも、幸せな生活を送っていた。
趣味は布団でゴロゴロする事。
ある日学校から帰ってくると、部屋はもぬけの殻、両親はいなくなっており、借金取りにやってきたヤクザの組員に人身売買で売られる事になってしまった。
文和を購入したのは堂島雪夜。四十二歳の優しい雰囲気のおじさんだ。
文和は雪夜の養子となり、学校に通ったり、本当の子供のように愛された。
文和同様人身売買で買われて、堂島の元で育ったアラサー家政婦の金井栞も、サバサバした性格だが、文和に親切だ。
三年程を堂島の家で、呑気に雪夜や栞とゴロゴロした生活を送っていたのだが、ある日雪夜が人身売買の罪で逮捕されてしまった。
文和はゴロゴロ生活を守る為、雪夜が出所するまでの間、ペットにしてくれる人を探す事にした。
※前作と違い、エロは最初の頃少しだけで、あとはほぼないです。
※前作がシリアスで暗かったので、今回は明るめでやってます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる