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魔導推究

第38話

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「ここがメイの街・・・・アル!」

メイの街?
自分が住んでいる街、という意味か……。
ジューヴォ共和国とホン皇国の砂漠の国境を過ぎた辺境の地。
国境から徒歩で約1週間はかかるところ。
だが、1日くらいであっと言う間に到着した。
それを実現したのは「魔導車」という乗り物のお陰。

砂漠に謎の巨大生物の骸があり、そこに隠してあった。
箱型の客車に4つの大きな車輪がついている。
車輪の幅がとても広く、なぜか客車を引く動物が見当たらない。
車輪の内側には更に車輪がついていた。

不思議そうに眺める自分にメイメイが誇らしげに説明し始めた。
内輪の突起を穴の開いた外輪へ押し出して滑り止めになるらしい。
この仕組みのお陰で砂漠のような緩い砂地でも走行が可能とのこと。
魔導車は「色見石カラーストーン」という魔力を内包した石を動力源としている。
その色見石は、一部の魔物や鉱山から調達、採取することが可能。
ホン皇国はその色見石資源が豊かなお陰で魔導技術が盛んになったという。

魔導車は試作段階にあり、ホン皇国でも実用化されていない代物だそうだ。
今、ここにある魔導車はメイメイが密かに作ったもの。
皇都に知られたら没収されるので、黙っていると、なぜか他国の者に明かした。

その魔導車に乗って砂漠を渡ったので、あっと言う間に到着した。
街は切り立った岩山の上にあるとのこと。
登るのも大変そうだが、端の方に昇降機があり、あっさりと街に入れた。
街の割には公園や商店、とても高い建物だけで家らしき建物が見当たらない。

「住居はここから地下……岩山の中アル」

よく見ると、たしかに地下へ降りる屋根付きの階段が点在している。
見たことのない建物は畜産棟と農産棟があるそう。
両方とも10階建てになっている。
これまで3階建ての建物までしか拝んだことがないので、とても驚いている。
農産棟は、上から下まで透明で各野菜が宙に浮いているように見える。
これは、「透明な土」によって垂直農業をより画期的な仕組みにしたという。

畜産棟の方は牛や豚、鶏ではなく肉粘体ミートスライムと呼ばれる魔物を飼育しているそうだ。
畜産といっても乳用牛の酪農に感じは似ているんだそう。
牛や豚を屠殺したり鶏の卵を採卵したりするわけではない。
肉粘体ミートスライムが数日に一度、脱皮した抜け殻が肉の味に酷似しているという。
赤い肉粘体は、牛肉の味。
青い肉粘体は鶏肉の味など、色によって肉質が変わるそうだ。

他には、農場や広場の噴水の水は地下水を汲み上げていて水にも困らない。
地下の住居層では掃除粘体クリーンスライムというのを各家庭で飼っていて排泄物や廃棄品を溶かしてくれるという。

ほぼ完ぺきな自給自足型都市……。
だが、海産物は再現できないらしい。
そこはおとなしく漁港都市と交易して手に入れているとメイメイは話す。

今立っている広場から奥に向かって緩い上り斜面になっている。
階段や坂道を使って一番奥、一番高いところへと向かう。
途中、道行く人や店の人がメイメイに恭しく挨拶をしている。
「メイ様」と敬われているが、やはり魔導学者だからだろうか?

この岩砦都市で一番高くて見晴らしのいい場所へ到着する。
ヘンテコな建物。
円形で、大きなキノコが乗っているような屋根の形をしている。

「入るアルヨ!」

1階は、奥の方が居住する空間で手前が研究するための部屋。
地下への階段と2階へ上がる階段が左右にある。

「ぐふふ……じゃあ、さっそく実験・・を……」
「メイ様、ご報告です!?」

メイメイの目がちょっと危なくなった。
完全に狂った研究者の目だ……。
もう「実験」という言葉が自然に漏れ出ている。
はたして自分達は無事に国へ帰ることができるのだろうか……。
などと、改めてホン皇国にきたことを後悔し始めた矢先だった。
街の人が息を切らしながら、研究所兼住居の中へ飛び込んできた。

「どうしたアルか?」
「ヤオヤオ様の使いが、すぐそこまでいらしてます!」
「まぁーた、メイに厄介事を頼むつもりアルね!」

その直後、開いた扉から、黒い服を纏った3人の男が入ってきた。
3人とも手を合わせて頭を下げると、ひとりだけ前に進み出た。

「ホン皇国第6皇女メイメイ様、第2皇女ヤオヤオ様から言伝がございます」

ホン皇国の第6皇女?
メイメイって、皇族なんだ!?

伝言の内容を話す前に自分達をチラリと見る。
だが、メイメイに問題ない、と言われ、伝言の内容を口頭で読み上げた。
第2皇女が治める領地で大規模な失踪事件が起きているそうだ。
その事件の調査に当たって欲しいという依頼だった。

「ほら、出たアル! 人使いの荒い姉アルヨ!?」
「報酬はノイゼ大陸『剣匠』メリキウス作の免刃短剣マインゴーシュです」
「むはぁぁあ! すごい名前が出たアル!?」

ノイゼ大陸の剣匠と言えば、大陸の英雄セルの愛剣を打ったことで知られる名匠。
このアルブニカ大陸でも両名の名前は半分神話のように語り継がれている。

興奮している。
これはきっと……。

「しょうがないアル、引き受けるネ!」
「ありがとうございます」

ヤオヤオ第2皇女の使いが挨拶をして、研究所を去った。
その後、ポメラが口を開く。

「ちょっと……まさか私たちは行かないわよね?」
「実験にはちょうどいい機会ネ、皆で行くヨロシ」

実験って言いきっちゃったよ、この皇女ひと
もちろん、その中には自分も入っているだろうなぁ……。
聞くだけ無駄だから黙っておくことにした。



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