33 / 68
第7章 王都ファルカ
第32話 12年前の事件
しおりを挟む(退屈だわ、ちょっとコンビニに飯とタバコを買いに行ってくるわ)
<ムフフ99【司会者】>
:行ってらぁ~
<王!爺ザス>
:放置ゲーw
神プレイヤが「コンビニ」というところに行くらしい。それって天界の雑貨店みたいなものなのだろうか?
「話を続けても大丈夫か?」
「え、あ、はい!」
意識が神さま達に行ってしまっていて、ラウルさんがひとり言を喋っているような感じになってしまっていた。
「セル、おまえのオヤジってあの〝盾斬りのマルコ〟だろ?」
「はい、その異名は村のひとから聞いたことがあります」
盾斬りのマルコ。父は騎士ではめずらしく盾を持っていなかったそうだ。その代わりに巨大な剣を両手に握り、いかなる盾も破壊してのける怪力で、チカラだけではなく、その剣術はこの国に並ぶものなし、と当時、称えられ、隣国ザッヴァーク帝国との武力衝突の際は、その名を隣国にも広く知らしめたそうだ。
そんな父マルコがなぜ犯罪者のらく印を押されたかというと〝紅い夜〟事件の犯人だから、父はなぜか元王妃を殺害したとして、処刑された。当時、えん罪ではないか? と国民からも声があがったが、結局聞き入れてもらえず、処刑されたそうだ。
「王子……ラウルさんも、そうだと思いますか?」
聞かずにはいられない。多くのひとがこれまでずっと疑問を抱き続けた。事件の不可解さ。
「マルコさんは、元王妃のそばで血のついた剣を持って気を失っていたそうだ」
長い渡り廊下。そこで王妃が一太刀で切り伏せられていて、隣には怪力で剣技に長けたマルコ……。ほかの騎士や兵士が駆け付けた時には他に誰もおらず、あまりにも状況証拠がそろってしまっていたそうだ。
「なあセル……真実を知りたくないか?」
「え?」
ラウルさんは、父マルコの事件について、なにか知っているそうだ。
「ただし条件がある」
人差し指をボクの前に立てたラウルさんはニヤリと笑う。
ボクが一ヵ月、近衛見習いとして、王城に留まること。その暁にラウルさんが誰も知らない父の情報をボクに教えてくれるという。
<ムフフ99【司会者】>
:Autoで大丈夫なのか? 一ヵ月拘束されるって言ってるけど?
<王!爺ザス>
:配信終了w ん、いやちょっと待て
──────────────────
【メインクエスト】
アーキテクト城において、【紅い夜】の謎を解く
報酬:アイテム【星々の卵】
──────────────────
<王!爺ザス>
:なんだ星々の卵って?
<猿トピ佐スケ>
:それよりメインクエストというのは初めてではござらんか?
<ムフフ99【司会者】>
:そもそもメインクエストは選択肢なんて元々ないからしょうがない
「わかりました」
「じゃあオレから父や兄上に話しとくよ」
ラウルさんに連れられ、第二城郭の前に立っている騎士のひとりにラウルさんが事情を説明して、ボクはそのままその騎士に預けられる形となった。
「アナタがセル・モティック? ふーん。こんなのが、あの盾斬りマルコの子どもとはね」
はじめて会って、いきなりボクを値踏みしてきたのは、ラウルさんやロゼさんの姉、第三王位継承権を有するサラサ王女。双子の兄のベレム王子に負けず劣らずその性格はあまりよくないようにみえる。
「私はこんなの要らないわ。ロゼにでもくれてやって」
モノ扱いする姉に対して、その妹の第二王女はボクに好意的だ。
「そうですか。残念です。ではセルさんは私、ロゼの近衛として働いてもらうことでよろしいですね?」
「それはダメだ」
「そんな……なぜですかベレム兄さま⁉」
「ソイツは、父ペイジェルマン王の近衛見習いとなると決まった。異論は許さん」
どういう風の吹き回しだろう? 王もベレム王子もボクのことはたいして評価してくれてなかったと感じたけど……。
「アーリ。面倒をみてやれ」
「はい、殿下」
先ほど人工池のところで、底知れぬ実力を垣間見た近衛の騎士……アーリさんっていうんだ。
アーリさんに「こっちだ。ついてこい」と言われて、城の中庭までやってきた。中庭は騎士や兵士の鍛錬場となっていて、木でできた色々な武器や防具が置かれている。
「好きなものを身につけてみろ」
「アーリ隊長、試験をするんですか?」
「ああ、先ほど恐ろしいほどの技倆をみた。どこまでの男なのか見定めさせてもらう」
独学になるが、【指し手】の兵士たちと激しい特訓をしたけど、はたして通用するのだろうか? ボクは剣と盾。袖のない木でできた鎧を上から着込み、兜と手足の防具をつける。
対して、アーリ隊長は、木剣のみ。横で休憩をしていた騎士たちの中からひとり審判を買って出たものがいた。開始の合図と同時にアーリ隊長がゆっくり間合いを詰めてきた。
縦斬りから斜めに斬り上げ、勢いに任せて、回し蹴り。一連の流れはいずれもボクの兵士たちには有効であったが、アーリ隊長は一歩も動くことなく、ボクの攻撃をそらし、弾いていく。あまりにも簡単にあしらわれたボクは、背後へ退がると、同じ速度で詰められ、軽く振るった剣が、もの凄く重い衝撃をボクの手に伝わり、剣を取りこぼしてしまった。すばやく盾を前に向けたが、それも真横に弾かれ、次の瞬間にはボクは、地面に顔がくっついていた。
「多少の心得はあるようだが、まだまだだな……」
それはボクがいちばんよく知っている。神プレイヤに操ってもらえないとボクなんて大した才能なんてない。
「だが、鍛えればモノになる。さすがマルコ殿のご子息だ」
顔を地面に突っ伏したボクの目の前に手が伸びてきた。アーリ隊長の手を借りて立ち上がる。
ボクはここで初めて、アーリ隊長の笑顔をみた。
0
お気に入りに追加
116
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
クラスメイトのなかで僕だけ異世界転移に耐えられずアンデッドになってしまったようです。
大前野 誠也
ファンタジー
ー
子供頃から体の弱かった主人公は、ある日突然クラスメイトたちと異世界に召喚されてしまう。
しかし主人公はその召喚の衝撃に耐えきれず絶命してしまった。
異世界人は世界を渡る時にスキルという力を授かるのだが、主人公のクラスメイトである灰田亜紀のスキルは死者をアンデッドに変えてしまうスキルだった。
そのスキルの力で主人公はアンデッドとして蘇ったのだが、灰田亜紀ともども追放されてしまう。
追放された森で2人がであったのは――
クラス転移で神様に?
空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。
異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。
そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。
異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。
龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。
現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します
有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。
妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。
さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。
そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。
そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。
現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる