4 / 7
最後の晩餐
しおりを挟む
施設での最後の夕食では、いつも通り子供たちがおかずを激しく取り合った。
長机に乗り掛かり、テーブルクロスをぐちゃぐちゃにし、お互いの邪魔をするその姿は行儀が悪いことこの上ない。
そんな中、長年者の経験によりちゃっかり自分たちの分のおかずを確保した灯たち4人は、見慣れたそれを気にも止めず箸をすすめる。
いつも通り四人は、式、三笠、灯、光の順に並んで座った。
今、三笠と式はなにかを話し合っている。
それを見て灯は光の方を向く。
いつも灯が光と話していると、気のせいかこの二人の妨害が入っている気がするからだ。
おそらく気のせいだろうが、光に話しかけるなら今が良い気がする。
「そういえば、光はさっきどこ行ってたの?」
「さっきって?」
「荷物を片付けていた時、いなかったでしょ?」
「ああ、あの時・・・ね。別に、ちょっとイタズラをしに行ってただけだよ」
「!?」
あまりにも予想外な答えに、灯は手に持っていたカップを取り落としそうになった。
普段から落ち着いているこの青年がそんなことをしてるところが想像できない。
「どうしたの光!?やっぱり施設出るの寂しくなっちゃったの?」
「・・・違うけどね。本当にちょっとしたイタズラだよ。皆には(・・・)害ないから安心して」
光は笑顔でそう言いながら、さりげなく話を打ち切ってしまう。
光がこんなふうに強引な話の打ち切り方をする時は、これ以上その内容に踏み込んで欲しくない時だ。
こうなってしまったら、光はもう絶対にそのことについて詳しく話すことはない。
それを理解しているので灯もこれ以上追求しない。
でも、光と灯達の間に少なからず距離を感じるのは、これが大きな原因だろう。
「そう言えば灯。後で話が有るから夜に中庭まで出て来てくれる?あ、桜のとこにでもいてくれたらいいから」
――なんで外?
「・・・うん、分かった」
疑問は浮かんだけど、光が灯に何かする筈がないと思ったので素直に頷く。
それを見て光は付け加える。
「俺が行くまで、何があってもそこから動かないでね」
と。
この時光が笑顔の裏に隠していたものに、灯が気づくことはなかった。
長机に乗り掛かり、テーブルクロスをぐちゃぐちゃにし、お互いの邪魔をするその姿は行儀が悪いことこの上ない。
そんな中、長年者の経験によりちゃっかり自分たちの分のおかずを確保した灯たち4人は、見慣れたそれを気にも止めず箸をすすめる。
いつも通り四人は、式、三笠、灯、光の順に並んで座った。
今、三笠と式はなにかを話し合っている。
それを見て灯は光の方を向く。
いつも灯が光と話していると、気のせいかこの二人の妨害が入っている気がするからだ。
おそらく気のせいだろうが、光に話しかけるなら今が良い気がする。
「そういえば、光はさっきどこ行ってたの?」
「さっきって?」
「荷物を片付けていた時、いなかったでしょ?」
「ああ、あの時・・・ね。別に、ちょっとイタズラをしに行ってただけだよ」
「!?」
あまりにも予想外な答えに、灯は手に持っていたカップを取り落としそうになった。
普段から落ち着いているこの青年がそんなことをしてるところが想像できない。
「どうしたの光!?やっぱり施設出るの寂しくなっちゃったの?」
「・・・違うけどね。本当にちょっとしたイタズラだよ。皆には(・・・)害ないから安心して」
光は笑顔でそう言いながら、さりげなく話を打ち切ってしまう。
光がこんなふうに強引な話の打ち切り方をする時は、これ以上その内容に踏み込んで欲しくない時だ。
こうなってしまったら、光はもう絶対にそのことについて詳しく話すことはない。
それを理解しているので灯もこれ以上追求しない。
でも、光と灯達の間に少なからず距離を感じるのは、これが大きな原因だろう。
「そう言えば灯。後で話が有るから夜に中庭まで出て来てくれる?あ、桜のとこにでもいてくれたらいいから」
――なんで外?
「・・・うん、分かった」
疑問は浮かんだけど、光が灯に何かする筈がないと思ったので素直に頷く。
それを見て光は付け加える。
「俺が行くまで、何があってもそこから動かないでね」
と。
この時光が笑顔の裏に隠していたものに、灯が気づくことはなかった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?
闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。
しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。
幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。
お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。
しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。
『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』
さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。
〈念の為〉
稚拙→ちせつ
愚父→ぐふ
⚠︎注意⚠︎
不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる