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喧騒 4
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ホームルームを終え誰も居なくなった教室で、朋はスマホを画面を見つめながら頬杖をついていた
『呼び出しくらったからちょっと待ってて』
珍しく海翔から届いたSNSが嬉しくて、繰り返しその文字を辿ってニヤニヤしてしまう
少しだけ開いた窓から冷たい風が吹き込み朋の髪を揺らす
早く海翔来ないかな
しんとした教室の入り口に視線を移して、教室に来る海翔の足音を聞き逃さないように耳を澄ませた
どうしてこんなに・・・
どうしてこんなに、海翔を待っていると不安になるのだろう
必ず来てくれるのに。朋を見つめて笑ってくれるのに。大好きだと囁きながら抱きしめてくれるのに。
そして・・その言葉を信じているのに・・・
いつまでも動かないSNSの会話画面を閉じてスマホをポケットに放りこむと、朋は机の上に突っ伏した
廊下から聞こえる放課後のざわめきの中で、海翔と2人並んで歩く自分を想像する
どこにでもいる男子高校生二人組
今日もきっと帰り道、バカ話をしたり愚痴を言いあったりスマホを見せ合ったりしながら2人は帰るはずだ。今までだってそうだったし、それが苦痛だと思ってはいない
だけど
目を細めて笑う海翔の腕に絡みつきたい
急に黙って遠くを見つめる海翔の唇を塞ぎたい
歩きながらぶつかる優しい手をギュッと握り締めたい
もし自分がその気持ちを海翔に伝えたら、海翔は何と言うだろうか
夕方の人混みの中で、「いいよ」と言って手を差し出してくれるだろうか?
何も答えずに抱きしめてくれるだろうか?
「ないよね」
顔を上げた朋が小さくため息をついた瞬間
「とも、ごめん、おまたせ」と言いながら海翔が教室に入ってきた
「あっ」
不意をつかれて思わず鼓動が速くなる
「なに」
急にガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がった朋を見て海翔が驚いた顔を見せた
「寝てた?」
「え?ううん、寝てないよ」
さっきまで考えていた事を悟られないように、朋は明るい声で答えながら机の上のリュックを肩に掛けて机から離れると、訝し気な表情の海翔の唇に軽く口づけを落とした
「まっ・・・お前なぁ・・・」
「ふふっ、朝のお返しのお返し」
朋がそう言いながら小さく笑って海翔から体を離した瞬間、海翔の力強い腕がグッと朋の体を自分に引き寄せた
「え・・・海翔・・・」
廊下から微かに誰かの笑い声が聞こえる
「ちょっと・・・誰か来ちゃうよ」
慌てて海翔の体を押し戻そうとする朋を海翔がさらに強い力で抱きしめて、その肩に顔を埋めながら囁いた
「とも、好き」
「・・・うん」
「やばいくらい好き」
「僕だって・・・」
「どうしたらいい?」
「え?」
「俺、朋にどうしたらいい?」
「海翔・・・」
まるでさっき朋が考えていた事を察したような海翔の言葉に、朋は何も答えられずそっと海翔の背中に手を回した
僕だって好きなのに。こんなに好きなのに。誰にも海翔の事を渡したくないのに
海翔は自分のものだと、誰に示す事もできない
「わかんないよ・・・」
震えてしまった声に、海翔が顔を上げて朋の顔を覗き込んだ
「泣き虫」
「うるさい」
「ごめん」
「え?」
「泣かせるつもりじゃなかった。ただ、ずっと朋の事考えてたから」
海翔の言葉に喉の奥から嗚咽が込み上げてきそうになり慌てて顔を逸らした朋に、海翔はフッと笑みを漏らすと、もう1度強く朋を抱きしめてからゆっくり体を離し、朋の頭にフワリと手を置くと「帰ろう」と言った
「うん」
海翔に見られないようにそっと制服の袖で涙を拭うと、朋は先に歩き出した海翔の背中を追うように教室を後にした
『呼び出しくらったからちょっと待ってて』
珍しく海翔から届いたSNSが嬉しくて、繰り返しその文字を辿ってニヤニヤしてしまう
少しだけ開いた窓から冷たい風が吹き込み朋の髪を揺らす
早く海翔来ないかな
しんとした教室の入り口に視線を移して、教室に来る海翔の足音を聞き逃さないように耳を澄ませた
どうしてこんなに・・・
どうしてこんなに、海翔を待っていると不安になるのだろう
必ず来てくれるのに。朋を見つめて笑ってくれるのに。大好きだと囁きながら抱きしめてくれるのに。
そして・・その言葉を信じているのに・・・
いつまでも動かないSNSの会話画面を閉じてスマホをポケットに放りこむと、朋は机の上に突っ伏した
廊下から聞こえる放課後のざわめきの中で、海翔と2人並んで歩く自分を想像する
どこにでもいる男子高校生二人組
今日もきっと帰り道、バカ話をしたり愚痴を言いあったりスマホを見せ合ったりしながら2人は帰るはずだ。今までだってそうだったし、それが苦痛だと思ってはいない
だけど
目を細めて笑う海翔の腕に絡みつきたい
急に黙って遠くを見つめる海翔の唇を塞ぎたい
歩きながらぶつかる優しい手をギュッと握り締めたい
もし自分がその気持ちを海翔に伝えたら、海翔は何と言うだろうか
夕方の人混みの中で、「いいよ」と言って手を差し出してくれるだろうか?
何も答えずに抱きしめてくれるだろうか?
「ないよね」
顔を上げた朋が小さくため息をついた瞬間
「とも、ごめん、おまたせ」と言いながら海翔が教室に入ってきた
「あっ」
不意をつかれて思わず鼓動が速くなる
「なに」
急にガタンと大きな音を立てて椅子から立ち上がった朋を見て海翔が驚いた顔を見せた
「寝てた?」
「え?ううん、寝てないよ」
さっきまで考えていた事を悟られないように、朋は明るい声で答えながら机の上のリュックを肩に掛けて机から離れると、訝し気な表情の海翔の唇に軽く口づけを落とした
「まっ・・・お前なぁ・・・」
「ふふっ、朝のお返しのお返し」
朋がそう言いながら小さく笑って海翔から体を離した瞬間、海翔の力強い腕がグッと朋の体を自分に引き寄せた
「え・・・海翔・・・」
廊下から微かに誰かの笑い声が聞こえる
「ちょっと・・・誰か来ちゃうよ」
慌てて海翔の体を押し戻そうとする朋を海翔がさらに強い力で抱きしめて、その肩に顔を埋めながら囁いた
「とも、好き」
「・・・うん」
「やばいくらい好き」
「僕だって・・・」
「どうしたらいい?」
「え?」
「俺、朋にどうしたらいい?」
「海翔・・・」
まるでさっき朋が考えていた事を察したような海翔の言葉に、朋は何も答えられずそっと海翔の背中に手を回した
僕だって好きなのに。こんなに好きなのに。誰にも海翔の事を渡したくないのに
海翔は自分のものだと、誰に示す事もできない
「わかんないよ・・・」
震えてしまった声に、海翔が顔を上げて朋の顔を覗き込んだ
「泣き虫」
「うるさい」
「ごめん」
「え?」
「泣かせるつもりじゃなかった。ただ、ずっと朋の事考えてたから」
海翔の言葉に喉の奥から嗚咽が込み上げてきそうになり慌てて顔を逸らした朋に、海翔はフッと笑みを漏らすと、もう1度強く朋を抱きしめてからゆっくり体を離し、朋の頭にフワリと手を置くと「帰ろう」と言った
「うん」
海翔に見られないようにそっと制服の袖で涙を拭うと、朋は先に歩き出した海翔の背中を追うように教室を後にした
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