『逆行。』

篠崎俊樹

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第41話。

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 その日、二人は島内の繁華街にある、ラブホテルLに潜んだ。幸い、キャッシュカードだけは財布に入れて持っていたので、何とか金を都合できた。
 Lの従業員は誰しも、二人のことを、さっき、警官を撃ったばかりの人間とは思っていなかったらしく、宿泊手続きが済むと、すんなり部屋へ案内した。二人は偽名を名乗って、国籍も中国人と偽り、部屋を取ることに成功する。
 その夜、部屋に備え付けの冷蔵庫のビールで乾杯した二人は、打開策を話し合った。話はもちろん、一層リアルになる。
 二人は、次の逃亡先を話し合った。自ずと、ミクロネシアの次はオーストラリア、ということで話が着く。海を越えた遠い場所――、二人が目指したシドニーは、世界最南端の楽園だった。
 酒を飲み終わり、シャワーを浴びた二人は、ベッドで眠った。明日、そろって、整形外科を訪れようと思った。整形外科の手術室を脳裏に浮かべ、密かに怯える。顔が変わるとか、顔を変えるという二人の思いが、すでに恐怖の域に達している。整形ってのは、自分の過去をかなぐり捨てて、否定することなんだ、という思いに、二人がただただ震えた。しかし、そんな二人の恐怖感も直に収まっていく。それはいつの間にか、顔を変えないと、これから先、生きられないという、汚い理由へと摩り替わった。二人二様に、心の中で舌を出す。二人とも、自分を暗黙裡に納得させながらも、整形に対して、心のどこかでは、言い様もなく怯えていた。
 その夜も、いつの間にか、更けていく。
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