『私考・スターリン伝』

篠崎俊樹

文字の大きさ
上 下
1 / 1

『私考・スターリン伝』

しおりを挟む
 その男は、一八七八年十二月二十一日、ロシア帝国治下のグルジアで生まれた。その名は、スターリン。神学校で教育を受けたが、後に、マルクス主義を信奉し、神学校を去った後、革命家に転身するに至った。
 スターリンの生涯は、実に曲折している。ウラジミール・レーニン率いるロシア社会民主労働党ボリシェビキ派に加わり、党の要職に就くに至った。さらに、その後も、着実に、党内にて、地位を増していき、一気に上り詰め、レーニンが、一九二四年一月に死去すると、後継をめぐって、レフ・トロツキーとの権力争いを制して、党内の実権を完全に掌握し、以後、ロシア共産党における、様々な要職を歴任するに至った。
 また、人民を絶えず抑圧し、食糧不足により、飢えさせた、極悪非道の指導者でもあった。これにより、一九三二年から一九三三年の飢饉が広がり、100万人以上の収監や、免れた数百万も、シベリア抑留などの処分を受けるに至った。極悪非道、そのものだ。
 一九三九年、ナチス・ドイツの台頭で、アドルフ・ヒトラーと独ソ不可侵条約を締結し、ポーランド侵攻を引き起こす。これが、第二次世界大戦勃発の契機となる。
 一九四一年、ソ連と改称したロシアは、ドイツの侵略を受け、独ソ戦が開始された。ソ連は、アジア各地にまで侵攻し、あらゆる領土を手に入れ、日本の北方領土や南樺太、朝鮮半島まで攻め落とすに至った。
 ソ連は、国際連合安全保障常任理事国となり、その中において、発言力を一層増した。また、鉄のカーテンを敷き、共産主義と自由主義を完全に分断するに至る。
 だが、この男の末路は、実に哀れであった。一九五三年三月、クンチェヴォ・ダーチャの寝室で倒れて、病没したのだ。独裁者の末路――、実に無残で、哀れそのものだった。最後に、この短編小説において、稿末に記しておくと、独裁者というのは、実に哀れな末路をたどり、その生涯たるや、最悪に等しいものとなるという事実だ。それを付言して、稿を結んでおく。

                               (了)
しおりを挟む

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

地の光 ――聖ペトロ教会堂(サン・ピエトロ大聖堂)再建に絡む五つの断章――

尾酒和行
歴史・時代
伝承では聖ペテロの墓の上に建てられたとされるサン・ピエトロ大聖堂。その再建がルネサンス期にある15〜16世紀に行われましたが、その建築の経緯は、いわば「人」の物語でもあったといえます。ミケランジェロを筆頭として、人類史に残る芸術家がときに熾烈にぶつかり、ときに賞賛を持って称え合ったその模様を「人」にフォーカスをあてて短編小説にしました。/ 《一》フィレンツェ共和国第2書記局書記官マキアヴェッリ/ 《二》ローマ教皇ユリウス2世/ 《三》建築家ジュリアーノ・ダ・サンガッロ/ 《四》建築家ドナート・ブラマンテ/ 《五》彫刻家にして貴族ミケランジェロ・ブオナローティ/ 初出:Circle Trebuchet Vol.3「二つの聖地」(2013年、C84新刊)を一部改稿

北条を倒した男

沢藤南湘
歴史・時代
足利尊氏の半生を描いてみました。

夕映え~武田勝頼の妻~

橘 ゆず
歴史・時代
天正十年(1582年)。 甲斐の国、天目山。 織田・徳川連合軍による甲州征伐によって新府を追われた武田勝頼は、起死回生をはかってわずかな家臣とともに岩殿城を目指していた。 そのかたわらには、五年前に相模の北条家から嫁いできた継室、十九歳の佐奈姫の姿があった。 武田勝頼公と、18歳年下の正室、北条夫人の最期の数日を描いたお話です。 コバルトの短編小説大賞「もう一歩」の作品です。

おとか伝説「戦国石田三成異聞」

水渕成分
歴史・時代
関東北部のある市に伝わる伝説を基に創作しました。 前半はその市に伝わる「おとか伝説」をですます調で、 後半は「小田原征伐」に参加した石田三成と「おとか伝説」の衝突について、 断定調で著述しています。 小説家になろうでは「おとか外伝『戦国石田三成異聞』」の題名で掲載されています。 完結済です。

信濃の大空

ypaaaaaaa
歴史・時代
空母信濃、それは大和型3番艦として建造されたものの戦術の変化により空母に改装され、一度も戦わず沈んだ巨艦である。 そんな信濃がもし、マリアナ沖海戦に間に合っていたらその後はどうなっていただろう。 この小説はそんな妄想を書き綴ったものです! 前作同じく、こんなことがあったらいいなと思いながら読んでいただけると幸いです!

武田信玄救出作戦

みるく
歴史・時代
領土拡大を目指す武田信玄は三増峠での戦を終え、駿河侵攻を再開しようと準備をしていた。 しかしある日、謎の刺客によって信玄は連れ去られてしまう。 望月千代女からの報告により、武田家重臣たちは主人を助けに行こうと立ち上がる。 信玄を捕らえた目的は何なのか。そして彼らを待ち受ける困難を乗り越え、無事に助けることはできるのか!? ※極力史実に沿うように進めていますが、細々としたところは筆者の創作です。物語の内容は歴史改変ですのであしからず。

龍神  

cha
歴史・時代
 むかしむかしのその昔、一匹の大蛇が棲んでいたというお話でございます。

処理中です...