転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

世の中の厳しさを教えてやりました。

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「さっきのは教会全体の話。私個人はまた別でね。私はあると思うのよ。女神様が授けて下さる加護」

 そう言うと、ユリア様はクローゼットの奥から小さな錠付きの箱を持ち出してきました。指先で錠の上に小さな魔方陣を描かれますと、封印が解けたのか一陣の風が私たちの髪を揺らしました。

「マザーの私兵が密かに警備している場所があるの。何年もずっと、ね。そこに女神とコンタクトを取れる場所があるんじゃないかって思ってるのよ」

 箱の中から出て来たのは小石ほどの大きさの水晶。ユリア様が呪文でしょうか、ブツブツと何事か呟くと、その先から弱々しいながらも光が照射され、テーブルの上に地図が映し出されました。

「遠征のルートを変更させて、ここに立ち寄れるようにするわ。私兵を出し抜く必要はあるでしょうけど、ケイトが一緒なら簡単よ」

 私、生まれてから都を一歩も出たことがございません。地図をあれやこれと指さされても全くピンと来ず、サリー様に助けを求めるような視線をやりますと、面倒臭そうに顔を顰められました。

「本当に何かあるなら、婆さんに警戒されるんじゃないか。んな露骨に変更なんざさせたらさ。それに一シスターにそんな権限あんのかね」

「別に私が変更を申し出る訳じゃないわよ。バカ王子にテキトー吹き込んで変更させるから問題ないわ」

 確かに良いお噂は聞こえて来ない御方ではありますが、ここまでバカと連呼されているのを見ますと、僅かながら心が痛みます。

 願わくば、生まれのハンディキャップをねじ伏せ、第一王子に王位を継承して頂けますように……そう思わずにはおれません。

「使い古されたマザーの力より、女神の元に乗り込んで貴女の望むだけ力を授かればいい……依頼料の前払いとして、貴女が聖女になる為のお膳立てをするわ。どう、引き受けてくれるわねよ」

 ユリア様は当然の顔をして仰りました。私はニッコリと微笑みを浮かべ、彼女の元へ歩み寄ります。

「もちろん、お引き受けしたいですわ。ただ……もう一声頂きたいですね。確実性のない情報だけで動けるほど、私たちはお人好しではありませんから」

 そして、彼女の手に握られていた水晶をサッと拝借致しました。
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