転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第四章

車上で一人会議してやりました。

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「よう、どうだい。ユリアはへばったかい」

 完全に私物化された馬車の中で、呆れと感心を半分ずつ滲ませた溜め息を吐いていますと、後方から馬が一頭近づいて来ました。私の苦労が出発前から分かっていたのでしょう、ニヤニヤと笑みを浮かべるサリー様です。

「気分が優れないようですの。少し風に当ててさし上げたいんですが、サリー様とご一緒させて頂いてよろしいかしら?」

 幌を張っただけの荷台ですので、扉など上等な物はございません。近づく馬上のサリー様とお話する為に後部へと席を移ります。

「残念ながら、アタイは今から一仕事あるんでね。あんたらと遊んでる暇はないよ」

 一瞬、サリー様の表情に獰猛な気配を感じました。お仕事とは、ユリア様から依頼された、王子の暗殺を請け負った輩の排除なのでしょう。血生臭い事情とは距離を置きたいお年頃です。適当に流して、私は少し身を乗り出し本題に入ります。

「サリー様、冒険者ギルドから出向している傭兵さんたちは近くにいらっしゃいますの?」

 サリー様も同じ所属のはずです。エイダンがどの辺りの部隊を護衛しているのか、知っていてもおかしくないはずです。

「近くにはいないよ。補給部隊は正規の軍が護衛しているからね。はるか後方か、斥候として最前線に配置されてるはずだ。そうそう目にすることはないだろうさ」

 これは一大事。こんな状況ではエイダンが怪我でもしない限り、私たちは出会えないではありませんか!

「サリー様、私にも馬を一頭、用立てて下さいまし。久し振りに遠乗りがしたくなりましたの」

「なんだい、傭兵なんぞに用はないだろうに、おかしな子だねぇ。まあ、自由に動くのは構わないが、街に到着するまでは待ちな。ただでさえ、アンタは男共には目の毒だ。動くならアタイの目の届く範囲でやりな。しょぼい奴に食われたくはないだろう」

 焦っても仕方がありません。サリー様に言われた通り、大人しく馬車の荷台で揺られる事に納得しておきましょう。エイダンを捜すのも一人でやるより、手の空いたサリー様や回復したユリア様にお手伝い頂く方が効率的です。
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