転生令嬢の幸福論

はなッぱち

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第三章

お見送りしてやりました。

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「二十三ねぇ、まあいいさ。リストくらい作ってあるんだろ。寄越しなよ」

「出発までにもう少し精査したいの。恐らくまだ増えるでしょうし……だから、リストは彼女に渡しておくわ。都を出るまで、貴女はギルドの方で目を光らせておいて」

 サリー様はチッとこれ見よがしに舌打ちをなさいます。

「全く……とんでもない面倒事に首突っ込んじまったよ」

「そう言わないでよ。成功すれば、十年は遊んで暮らせる報酬を約束するわ」

 すっかり持ち直したユリア様に促されるまま、出発までの大まかな予定を三人で打ち合わせた後、サリー様は宝石片手に一人宿屋へ戻られました。

 サリー様とフィア嬢、いえエレノア嬢にどれほど深い信頼があるのか、全く検討のつかない私としましては、サリー様が宝石を持ち逃げするのではと不安で仕方ありませんでしたが、聖女の力がなくとも、このワガママボディと薬草の知識があれば問題ないでしょうと、なんとか納得します。

 まあ元より、鏡を見れば分かります。聖女の力などオマケである事が。この泥棒猫の真骨頂は正にこの姿形にあると、我が身ながら実感しておりますから。

 女の武器とはよく言ったものです。以前の私には、とんと縁の無いモノでしたが、フィア嬢は正に存在自体が凶器です。その凶器で殺されたのが、私自身なのですから、複雑な胸中なれど、威力は疑う余地もなく実に心強く思えます。

「それじゃあシスターフィア、貴女の部屋へ案内するわ。ついて来て」

 出されたワインをチビチビと堪能しておりましたのに、ユリア様はグラスをヒョイと取り上げてしまわれました。

「出発までこちらのお部屋で滞在させて下さるのではないの?」

 質素に見えて、宿屋とは比べものにならないお部屋です。本来の私の部屋とも比べものにはなりませんが、清潔なベッドに文句はありませんでしたのに。

「ここは私の部屋です! ただでさえ危ない橋を渡っているのよ。これ以上の厄介事は抱え込みたくないでしょう。大人しく従って頂戴」

「随分と今更ですわね。そんな小さな器で聖女に取って代わろうなんて、ユリア様も可笑しな方です」

「…………そう、なら貴女は私の愛人として見られる事になるわよ。教会中のエロ親父共に夜な夜な乳繰り合ってる思われもいいのね」

 ユリア様の言葉に思わずゾッと背筋に鳥肌が立ちます。大きくそして垂れた胸をブルンと揺さ振られ、私はその迫力に閉口して席を立ちました。

 一つしかないベッドで、この化け乳と夜を共にするおぞましさは言葉にすらならず、私はそそくさとユリア様の部屋を出ます。
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