圏ガク!!

はなッぱち

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圏ガクの夏休み

残留二年事情

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 冷蔵庫に戻って行った小吉先輩の背中を見送り、先輩の部屋へと帰ってくると、昨日は感じなかった先輩の匂い……なんだろうか、先輩が一緒にいてくれる時の安心感がオレの中に広がった。相変わらず中は悲惨で、香月たちに荒らされたままなのだが、改めて眺めると自分が垂らした血痕が、一番部屋を汚している事に気付いてしまった。

 安心感と敗北感で、つい広げたままの、オレの鼻血がたんまり染みこんだ布団にダイブする。鼻血の被害に遭わずに済んだ枕を抱え、二度寝の誘惑に身を任せそうになったが、布団に横になったまま、自分の荷物を引き寄せ中身を漁った。グシャリと無造作に掴んだプリントを引っ張り出し、軽く読み流した内容をしっかりと読み直す。

 具体的に山を下りて何をするのか、全く説明はなかった。書かれてある内容は『働かざる者食うべからず』という文言ばかり。唯一具体的な一文は『旧館の食堂に午前四時半に集合』だった。そして、その横に太文字で強調するよう『強制に非ず』という圏ガクらしからぬ言葉。

「別に奉仕労働は参加しなくてもいいって事か?」

 金にもならない文字通り無償労働に好きこのんで行く奴なんているのだろうか? いいや、まずいないだろう。何をさせられるのか分からないから余計だが、オレだって正直そんな所に行きたくはなかった。

 このまま、先輩の布団でゆっくり寝直したい。重たくなる瞼に任せて目を瞑ると、一瞬で意識が落ちていくのが分かった。フッと体の力が抜けた瞬間……オレは覚醒した。体温が一気に上昇したような感覚の後、ブワッと汗が噴き出してきた。

 昨日、この場所で遭った事を思い出してしまったのだ。風呂に入っていないせいで、香月の汗まで自分の肌に纏わり付いているように思えて、今更ながら鳥肌が立つ。

 小吉先輩に頼んで、二年の入浴時間に一緒させてもらおう。今日こそは、ちゃんと風呂に入る! 自分にそう言い聞かせ、今は服を丸ごと着替えるだけにとどめた。

 集合時間には少し早いが、身支度を整え、小吉先輩に行ってくると一言伝える為に冷蔵庫へ戻ると、何をする気なのか、出掛ける準備を完了した先輩が出迎えてくれた。

「え、小吉先輩も一緒に行くんですか?」

 当然のように廊下へ出て来た小吉先輩に、そう聞いてみると、何故か眉間に深々と皺を刻まれてしまった。

「あのさ、それ、おれ苦手かも」

 何を指して苦手なのか分からず、オレが戸惑っていると、小吉先輩は眉を下げながら気まずそうに笑う。

「その『先輩』ってのと、ちょっと畏まった喋り方っつーか……おれ、別にタメ口でも怒ったりしないから、ふつーにしててくれよ。なんか落ち着かないんだ。ふつーに呼び捨てでいいからさ」

 頭を掻きながら、申し訳なさそうに視線を向けて来る小吉先輩。けれど、望まれたからと言って、先輩を呼び捨てはマズイ。

「じゃあ小吉さんって呼んでもいい……かな?」

 よっぽどオレに先輩呼びされるのが、心地悪かったらしい。そう提案すると、満面の笑みで頷いてくれた。

「おれも毎日、朝から山下りるつもりだ。山センたち部活組は昼便で来るんだけど、おれは部活と労働が似たようなモンだからさ、どうせなら朝から参加しようかなって思ってな」

 食堂へ向かう道すがら、オレはどうして小吉さんも奉仕労働に参加するのか聞いてみた。他の二年は、まだ冷蔵庫で高鼾だ。恐らく二年に奉仕労働は課せられていない。

「二年で残ってるおれたちは、一応みんな部活動の為って事になっててな……まあ、山センや矢野は部活って言っていいのかわかんねーけど。おれは園芸部で、稲っちは文芸部に入っているんだ」

「文芸部……って、あの本読んだりするイメージのある文芸部?」

 武芸部の間違いじゃないかと、武芸部なんて名前の部活動があるかも定かじゃないが、つい話の腰を折ってしまった。確かに真面目そうというか、誠実というか、なんか真っ直ぐな雰囲気のある稲継先輩だが、読書してる姿は想像するのも難しい。それならまだ、馬に乗って弓でも射ている姿の方がしっくりくる。てか、圏ガクには文化系の部活って存在しないんじゃあなかったか?

「あはは、まあな。文芸部も園芸部も部員一人だから、正式な部じゃないかもな。でも侮るなよ。ちゃんと顧問の先生も居るんだぞ」

 文芸部は図書室の司書が、園芸部はなんとオレの担任が顧問をしているらしい。

「文芸部って何してんだろ?」

 つい疑問が口に出てしまうと、小吉さんは少し困ったように笑って「稲っちに興味津々だな」と言った。

「おれも普段何をやってるのかは、詳しく知らないけど……別に本読むのが好きって訳じゃないと思うぞ」

 本が好きじゃないなら、どうしてわざわざ文芸部に所属しているんだろう? オレが首を傾げていると、小吉さんはちょっと俗っぽい顔で「これだ、これ」と自分の小指をピンと立てて見せる。

「圏ガクの女神を待ってるんだ」

 思わずオウム返しに、その胡散臭い単語を呟いてしまった。

「そ、圏ガクの伝説の一つだ。夏と冬、この学校で過ごすと、この世の者とは思えない正に女神としか形容出来ない女と出会えるってな」

 暑さで頭がどうにかなった奴の妄言にしか聞こえない伝説だな。幽霊とか妖怪みたいな感じなんだろうか。その女神が図書室に現れる……とか?

「そうそう。ん? 違う違う、じゃなくて、ふつーの女の人だよ。いや……アレはふつーじゃないな。女神と讃えられるだけあるな。うん」

 一人納得して頷いている小吉さんは、オレのジト目に気付き、慌てて説明を付け加えてくれた。

「妖怪とかじゃないけど、ふつーじゃないんだ。まあ見れば分かるよ。夏休みとか冬休みにここの司書の先生を訪ねて来るんだ。だから、お前の目でそこは確かめてくれ、圏ガクの女神と呼ばれる姿をな」

「その人が目当てで稲継先輩は文芸部に入っていて、尚且つ残留してるって事?」

 そういうこと! と笑う小吉さん。そうか、稲継先輩は女目当てで残留してるのか。なんか勝手に硬派な印象を持っていたので、失礼にも程があるが、ほんのちょっとだけ幻滅してしまった。

「本当だったら、それだけなんだけど、今はちょっと事情が違ってるけどな」

 思った事が顔に出てしまったのか、小吉さんは失礼な後輩の反応を注意するように、ビッと指をオレの鼻先に突きつけて来た。

「多分、今年は、女神はおまけだと思うぞ。稲っちと矢野にとっては、番長の頼みであるお前が最優先事項だからさ。あの二人にとって番長って……」

 神様みたいな存在なんだよ、そう笑いながら言われてしまった。生徒会の奴らにとって会長が神であるように、髭を慕う稲継先輩のような人にとって髭は神ならしい。

 一体何なんだ、圏ガクで三年過ごすと誰でも神様になれんのか。どうにも、その感覚が分からず、オレは投げやりに小吉さんにとってもそうなのか聞いてみた。すると、あっさり「稲っちたちには、たまに付いて行けない時がある」と白状した。

「あ、でも番長は尊敬してるぞ。あの二人が憧れる気持ちも分かる」

 言い訳するみたいに、少し焦って早口になっている。まあ、オレだって、初日に髭の醜態を見ていなければ、少なくとも髭だなんて呼び方は定着しなかったろう。

「あーだからな、あいつらが変なこと言ってても許してやってくれ。初めて番長から個人的に声かけてもらえて、かなり浮かれてるからさ」

 小吉さん曰わく、髭は殆ど後輩とは絡まないらしい。後輩へ偉そうに指示を出すのは久戸であって、髭が直々に何かを命令したりする事はないのだと言う。ん、でも初めてってのは大袈裟じゃないか? オレが世話になった時も、髭が指示を出していたような気がする。

「あの時は稲っちたちにとっては他人事じゃなかったからな。番長から頼まれて動いてた訳じゃないんだよ」

 あの件に稲継先輩が無関係じゃないって、どういう意味なんだろう。

「あいつ、稲っちと矢野の身内なんだよ」

 誰の事を言っているのか、その一言では理解出来ず呆けていると、小吉さんはそいつの名前を口にした。

「お前も絡まれてたんだろ、覚えてないか? 笹倉のことだよ」

 その名前を口にされた瞬間、体からサッと血の気が引いた気がした。ドクドクと心臓だけが熱を持っていて、頭も体も研ぎ澄まされるように硬く鋭くなっていく。

「なんで小吉さんが、オレと笹倉の事を知ってるんだよ」

 自分でも驚くぐらい低い声になってしまった。小吉さんはヒョッと妙な声を上げて固まってしまう。

「だだだだだだっって、ゆゆゆゆうめい有名じゃんか。おお、お前が、談話室で、笹倉をぶちのめしたって。そそそれが、げ、げ、原因で、笹倉に絡まれてたんだろ? それで、えと、それで笹倉がいなくなった時に、な、なにか、したんじゃって疑われたんだろ」

 あの日、見つからないオレや先輩を探すのに校内を徘徊していた生徒の中に、小吉さんもいたらしい。震えながら目に涙を溜めて答えてくれた。

 降って湧いた笹倉の名前に、忘れかけていたと言うか、殆ど忘れていた感情が再燃して、声に滲み出てしまった事を反省。プルプル震える小吉さんに「ごめん」と謝る。

「お前……ちょっと、恐い奴だ。いきなりキレるなよ。そ、そのぉ、ビビ……っじゃなくて、ビックリするだろ!」

 ポケットから何故か汚れた方の手ぬぐいを引っぱり出そうとする小吉さんに気付き、すかさず反対側のポケットに入れていたキレイな方の手ぬぐいを引き抜く。手渡すだけでは間に合いそうになかったので、汚い手ぬぐいが触れる前に、オレはキレイな手ぬぐいで小吉さんの目元をサッと拭う。

 今の自分たちの姿が頭に思い浮かんでしまい、なんかすげぇ複雑な心境になったが、不用意に驚かせてしまったのはオレが悪い。一瞬ビクッとなった小吉さんだが、更にビビらせたのか硬直してしまったので、その間にしっかりと涙を手ぬぐいで拭っていると、

「朝っぱらから、何しとるんだ、お前ら」

聞き慣れた機嫌の悪そうな声が、背後から聞こえてしまった。
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