圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
上 下
318 / 386
蜜月

結果発表?

しおりを挟む
 冬休み前の補習があるので、答案の返却は早い。試験最終日、昼休みを挟んですぐに全教科返ってくる。翌日には補習がスタートする為だ。

「試験結果は夜に見せ合おう」

 先輩にそう言われたので、その日の放課後は皆元のフォローに回った。今更感が半端ないが、補習は追試をクリアしたら抜けられるシステムなので、多少は助けになるだろう。決して購買のカレーパンを机に積まれたからではないが、カレーパンは美味しかった。

 先輩の点数が気になると言えば気になるが、最低ラインの赤点回避は確実なので気は楽だった。仮に赤点でも、今の先輩なら受験組に合流しなくても大丈夫だと思う。基礎は出来ているはずなので、補習中の追試で十分クリア可能なはずだ。

「でも、赤点だったらショックだろうな。セックスを封印されている今、どうやって慰めたらいいんだろ」

 エロマンガを思い出しながら、その方法を探るがエロ方面全力で参考にならなかった。

 夕食と風呂を終え、いつもより少し早めに、旧館の空き部屋へ向かう。心配はしていないとは言え、場合によっては守峰と直談判で先輩の冬休みを勝ち取らなければならない。そのせいか、オレは少し緊張していた。

「……セイシュン、今日は早いな」

 先輩をどう迎えようか、一人悩みながら部屋に入ると、出迎えられてしまった。その表情は微妙に暗い。ついでに、昨日はなかった絆創膏が頬に貼られていた。

「先輩、その顔どうしたの?」

「あぁ、別に大した事ないんだが、ここに来る途中でじいさんに見つかってな」

 じいちゃんが貼ったのか。どうりで、無駄に大きいと思った。大丈夫だと笑うので、それ以上は触れずオレも先輩の向かいに座る。

「試験、どうだった?」

 オレが軽い調子で尋ねると、先輩は暗い表情に戻ってしまった。そして、深々と頭を下げてきた。

「すまん。あんなに助けて貰ったのに、追試を受ける事になっちまった」

「そんなの謝るなよ。オレの力不足でもあるんだ。オレの方こそごめんな。満点取らせるなんて偉そうな事言ったのに」

 先輩の返却された答案を受け取る。圏ガクの赤点は五十点以下だったはずだ。傾向を見るに半分を基礎問題、残りを応用問題に振っている教師が大半だったので、やはり赤点が多ければ冬休みの補習を免れないだろう。一教科でもクリアしていたら、その点をアピールして冬休みの補習をオレに任せて貰えるよう説得出来るのだが……。

「あれ、てか、すげぇじゃん。ほとんど、七十以上あるんだけど……なんで追試なんて……」

 先輩の点数は、どの教科もかなり良かった。赤点なんて一つもない、どころか最後の一枚はなんと満点だった。

「先輩! これ満点じゃん!」

「ん、それなんだが……駄目なんだ。カンニングならしくて、追試だって言われちまった」

「は?」

 先輩が何を言っているのか、本当に分からず妙な声が出た。先輩がカンニング?

「満点取れて、セイシュンが言ってたみたいにな、満点取れて、ちょっと嬉しくてな……いつもなら避けるんだけど、木刀も軽く掠っちまった」

 指先で絆創膏を掻きながら先輩は眉をハの字にして笑う。木刀という物騒な言葉でオレは状況を理解した。先輩の満点の答案、その問題を確認して、オレは思わず野村の怠慢を握りつぶした。

「先輩が事前に同じ問題を解いていたからカンニングだって言ったのか」

「知らなかったんだから、そんなの仕方ない事だ。追試を受ければ済むらしいから、大丈夫だ」

 オレの声が震えていたせいか、先輩は慌てて大丈夫だと明るい声を出した。

 大丈夫……ではない。先輩の努力をカンニング呼ばわりした奴をオレは許さない。図書室で貸し出されている参考書から問題を丸写しした試験を作る教師に、オレは断固抗議する。

 満点の答案を掴み、部屋を飛び出す。夏休みには、旧館食堂で晩酌をしていたのを思い出し、駄目元で飛び込むと、そこに奴は居た。

 飲んだくれている教師たちに大股で近づき、机に並べ立てた空き缶を払い落とし、野村の目の前に先輩の答案を叩きつけてやった。ついでにイスに立てかけてあった木刀を出入り口の方へぶん投げると、追いかけてきた先輩が白刃取りした。

「先輩はカンニングなんてしてない! あんたが手ぇ抜いた試験を作っただけだろ!」

 用件をぶちまけると、野村は酒で赤かった顔を更に濃くし、吠えるような声を上げ、オレの首に掴みかかってきた。酔っているせいか、怒りのせいか、何を言っているのか分からない罵声を浴びせられ、隣のテーブルに投げ捨てられる。

「セイシュン!」

 背中から叩きつけられると思ったが、いつの間にか駆け寄ってくれた先輩が抱き止めてくれた。転けずに済んだので、一矢報いてやろうと野村に飛びかかろうとしたが、それを読まれていたのか先輩は公衆の面前だと言うのに抱擁を続行した。というか、いつの間にか羽交い締めにされていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

壁の花令嬢の最高の結婚

晴 菜葉
恋愛
 壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。  社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。  ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。  アメリアは自棄になって家出を決行する。  行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。  そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。  助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。  乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。 「俺が出来ることなら何だってする」  そこでアメリアは考える。  暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。 「では、私と契約結婚してください」 R18には※をしています。    

ゆうみお R18 お休み中

あまみや。
BL
気まぐれ不定期更新です。 他作品執筆中によりお休み中。 お手に取っていただきありがとうございます! しおりのついてない作品を無言で非公開にする時があります *リクエスト随時募集中!* 詳しくは上から2番目のリクエスト募集中をご覧下さい たまに本編の番外編(全年齢)、他作品の宣伝あります 好きな時間帯に更新するためのところ のんびり更新たまに非公開 基本何話か書いて月1くらいで一気に更新が多いです 鬱要素いっぱいあります苦手な方はバック 深夜更新多め 濁点多いので横読み推奨 旧垢で書いている作品のR18(G)です。 本編とは一切関係ありません。 レイプ、DV、胸糞等の要素多めです。 R18注意です、苦手な方は即バックお願いします。 胸糞展開やキャラ崩壊、バッドエンドが苦手な方は注意して下さい。 暴力など多めですが現実でするのは犯罪です 万が一の責任は取れません

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン
BL
もっさりした髪型と肥満体型により中学時代は冴えない日々を送ってきた俺だったが、入院による激ヤセを機に高校デビューを決意。筋トレにスキンケア、その他様々な努力によって俺は最高のルックスとそこそこの自尊心を手に入れた! 中学時代にやり込んだ乙ゲーやBLゲーを参考に、長身と美顔を武器に、名門男子校の可愛い男子達を次々と攻略していく。 無口メカクレ男子、関西弁のヤンキー、ビッチ系の女装男子、堅物メガネの副委員長、甘え上手の現役アイドル、筋肉系の先輩、ワンコ系の後輩、父親違いの弟、弱りきった元いじめっ子、耽美な生徒会長にその露払いの副会長、盲目の芸術家とその兄達、おかっぱ頭の着物男子、胡散臭い糸目な美少年、寂しがりな近所の小学生にその色っぽい父親、やる気のないひねくれ留年男子……選り取りみどりの男子達には第一印象をひっくり返す裏の顔が!? ──以下注意事項── ※『』は電話やメッセージアプリのやり取りなど、()は主人公の心の声など、《》は主人公に聞き取り理解出来なかった外国語など。 ※主人公総攻め。主人公は普通に浮気をします。 ※主人公の心の声はうるさめ&オタク色濃いめ。 ※受け達には全員ギャップがあります。 ※登場人物のほとんどは貞操観念、倫理観などなどが欠けています。 ※切り傷、火傷、手足の欠損、視覚障害等の特徴を持つ受けが登場し、その描写があります。 ※受け同士の絡みがあります(ほぐし合い、キス等) ※コメディ風味です、あくまで風味です。 ※タイトルの後に()でメインの登場人物名を記してあります。順次全話実装予定です。 ×がある場合は性的描写アリ、+の場合は軽い絡みまでとなっております。

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

狼と人間、そして半獣の

咲狛洋々
BL
そこは獣人や半獣、人が共存する世界。 地球からの転生者ナナセは、助けてもらった冒険者の手を借りて この世界で冒険者として歩み始めた。最速ランクアップ冒険者などと 持て囃されもしているが、彼には大きな悩みがあった。 それは片想いの相手、狼の獣人ファロに恋人がいるかも知れない という事。ナナセとファロ、そして恋人かも知れない薬草師のラグの ロートレッドでの日々がそれぞれの関係を変えてゆく。 本編は完結しましたが、サイドストーリーなどを更新予定です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 番風のお話です。あくまでも、テイストだけなので 本格的な物をご希望される方には読み辛いかも知れません。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...