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新学期!!
世話焼きメイド
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「馬鹿の尻ぬぐいなんて冗談じゃない」
性悪がそう独り言のように吐き捨てる。
「助けて、くれたのか?」
「はぁ? お前を? それこそ冗談でしょ」
観客がいなくなれば芝居する意味はない、性悪は本性全開で、底意地の悪そうな顔で笑った。
「助かったなんて安易に思わない方がいいんじゃない? あの変態、本気でお前を食いにかかるよ。ご愁傷様」
それを言うなら、興津の狙いはオレじゃなくてお前じゃあないのか、そう聞かずにはいられなかった。性悪を見る興津の目は異常以外の何物でもない。……もしかして、元彼とかそういう感じなのか。
「まさか。ボクがあんな小物、相手にする訳ないでしょ。馬鹿なの? あぁゴメン、馬鹿だったね」
いちいちイラッとするが、さっきのやり取りから性悪は会長の恋人(と呼んでいいのか分からないが)のようなので、それはないか。会長の先輩への執着を見るに、自分の恋人に興津がちょっかいかけるのを許すような人物には思えないからな。
「変なこと考えてるだろ。この腐れ童貞」
女のような顔で童貞とか言うな! 一瞬嫌な感じでドキッとしただろが! てか、別に童貞じゃねぇし!
「お尻に挿入される側じゃあ童貞は卒業出来ないからね。まあ、今のお前じゃする側でも無理そうだけど」
こ、こんな公共の場で、なんちゅー事を言いやがる、この女装野郎っ!
オレの必死の反論を鼻で笑い飛ばした性悪は、ふと一瞬黙り込み、静かに口を開いた。
「さっき言ったことは、全部でたらめだから本気にするなよ。会長がボクに触れた事は一度もない。羽坂様はただ……ボクを保護して下さっているんだ。おかげさまで、こんな掃き溜めの中で生活しているのに一度も犯されずに済んでる。ほんと、奇跡だね」
全裸どころか勃起した状態の姿を見たせいか、そんな紳士的な会長の想像は難しく、怪訝な顔をしてしまったのだろう。性悪は溜め息を吐きながら補足する。
「お前と違って会長はただの一度も、ボクの裸を想像したりしてないよ」
オレだってしてない。ちょっと一瞬思い出しただけで。
「でも……そんな相手を裏切ったのは何でだ? お前が寮長に手帳を持って行ったのを知った時、えらい怒ってたぞ会長」
別に決まり悪かった訳ではないが、話題を変えてみた。考えもしなかったが、オレが暴露したせいで、(自業自得とは言え)性悪と会長の関係には亀裂が入っているはずだ。
性悪は冷めてるんだか、諦めているんだか分からない顔で「別に」と呟く。
「…………お前には関係ない」
言われる通りなのだが、面白くなくて、オレは少しお節介を口にしてみる。
「まあ、いいけど……あのさ、暇なら、寮長の目玉からレンズ取り出してやってくれよ。コンタクト付けたまま寝るのってヤバそうだから」
「はあ? なんでボクが」
「筋肉ダルマがやったら、寮長の目玉潰しそうじゃん。そうなったら、目覚め悪いだろ。コンタクト入れるの手伝ったのオレだし」
一瞬迷った顔を見せた性悪だったが、オレが手伝った事をこぼすと「じゃあ、お前がやれ」と即答してきやがった。
「オレは今から、ちょっと先輩の所に寄って帰るから遅くなる……べっ、別に何かしようとか、そうゆうのじゃないけどな! ただ話したい、てか顔見たいだけだから」
「お前が持ってるキーはロックされてて使えないはずだよ。会長の指示で」
クソッ意外とせこい男だな、あの全裸勃起野郎。改めて使えないと分かったカードキーを床に叩きつけると、深い溜息を吐きながら性悪が何かを差し出して来た。それは、オレの足の下にある物よりちょっと高価な感じのカードキーだった。
「何とか侵入しようとして、とんでもない騒動を起こしそうだから」
乗りかかった船だと言わんばかりに、あっさりキーを貸してくれる。
「やる事やったら、早く自分のテリトリーに戻りなよ。興津のおもちゃにはなりたくないだろ」
茶化すように少し笑いながら、性悪はその場を後にしようとした。興津と同じルートで少し心配になるが、恐らく寮長の元へ、旧館へ向かうのだろう。
「あ、女装では行くなよ。寮長、あんまその姿好きじゃねぇみたいだから」
オレはあっさり去ろうとする性悪の背中に声をかける。当たり前だろと言いたげに「着替えてから伺うよ」とジト目で睨まれた。
「色々と助けてくれて、その、ありがとな」
性悪から借り受けたカードーキーを軽く見せながら、言いたかった事を言う。
「別に、お前の為じゃないよ」
予想通りの返答にオレは続きを口にする。
「先輩の為だろ。そのくらい馬鹿でも分かるよ。あのさ、ついでに一個だけ聞いていいか?」
図々しい後輩の態度に呆れながらも、律儀に足を止めて待ってくれる性悪に、オレはかなり踏み込んだ事を尋ねた。
「どうして、そこまで先輩に肩入れするんだ?」
興津相手にケンカを売るような事までやってくれた。初対面から顔面を机に叩きつけたくなるような相手を庇う為に、だ。
理由は寮長の話から知っている。沈没する船から助けて貰ったから。それをどうしてか目の前の奴からも聞きたかった。先輩が何をしてきたのか、少しでも知りたかった。
「神様みたいな人だから」
予想外の答えで、オレは思わずおうむ返ししてしまう。性悪は少しだけ目を伏せ、独り言のようにぽつりぽつりと呟く。
「金城先輩は……ボクじゃ助けられないって泣くことしか出来なかったあの時、ボクの願いを叶えて下さった。だから、少しでも何か返せるなら、何でもする。それだけ」
性悪がそう独り言のように吐き捨てる。
「助けて、くれたのか?」
「はぁ? お前を? それこそ冗談でしょ」
観客がいなくなれば芝居する意味はない、性悪は本性全開で、底意地の悪そうな顔で笑った。
「助かったなんて安易に思わない方がいいんじゃない? あの変態、本気でお前を食いにかかるよ。ご愁傷様」
それを言うなら、興津の狙いはオレじゃなくてお前じゃあないのか、そう聞かずにはいられなかった。性悪を見る興津の目は異常以外の何物でもない。……もしかして、元彼とかそういう感じなのか。
「まさか。ボクがあんな小物、相手にする訳ないでしょ。馬鹿なの? あぁゴメン、馬鹿だったね」
いちいちイラッとするが、さっきのやり取りから性悪は会長の恋人(と呼んでいいのか分からないが)のようなので、それはないか。会長の先輩への執着を見るに、自分の恋人に興津がちょっかいかけるのを許すような人物には思えないからな。
「変なこと考えてるだろ。この腐れ童貞」
女のような顔で童貞とか言うな! 一瞬嫌な感じでドキッとしただろが! てか、別に童貞じゃねぇし!
「お尻に挿入される側じゃあ童貞は卒業出来ないからね。まあ、今のお前じゃする側でも無理そうだけど」
こ、こんな公共の場で、なんちゅー事を言いやがる、この女装野郎っ!
オレの必死の反論を鼻で笑い飛ばした性悪は、ふと一瞬黙り込み、静かに口を開いた。
「さっき言ったことは、全部でたらめだから本気にするなよ。会長がボクに触れた事は一度もない。羽坂様はただ……ボクを保護して下さっているんだ。おかげさまで、こんな掃き溜めの中で生活しているのに一度も犯されずに済んでる。ほんと、奇跡だね」
全裸どころか勃起した状態の姿を見たせいか、そんな紳士的な会長の想像は難しく、怪訝な顔をしてしまったのだろう。性悪は溜め息を吐きながら補足する。
「お前と違って会長はただの一度も、ボクの裸を想像したりしてないよ」
オレだってしてない。ちょっと一瞬思い出しただけで。
「でも……そんな相手を裏切ったのは何でだ? お前が寮長に手帳を持って行ったのを知った時、えらい怒ってたぞ会長」
別に決まり悪かった訳ではないが、話題を変えてみた。考えもしなかったが、オレが暴露したせいで、(自業自得とは言え)性悪と会長の関係には亀裂が入っているはずだ。
性悪は冷めてるんだか、諦めているんだか分からない顔で「別に」と呟く。
「…………お前には関係ない」
言われる通りなのだが、面白くなくて、オレは少しお節介を口にしてみる。
「まあ、いいけど……あのさ、暇なら、寮長の目玉からレンズ取り出してやってくれよ。コンタクト付けたまま寝るのってヤバそうだから」
「はあ? なんでボクが」
「筋肉ダルマがやったら、寮長の目玉潰しそうじゃん。そうなったら、目覚め悪いだろ。コンタクト入れるの手伝ったのオレだし」
一瞬迷った顔を見せた性悪だったが、オレが手伝った事をこぼすと「じゃあ、お前がやれ」と即答してきやがった。
「オレは今から、ちょっと先輩の所に寄って帰るから遅くなる……べっ、別に何かしようとか、そうゆうのじゃないけどな! ただ話したい、てか顔見たいだけだから」
「お前が持ってるキーはロックされてて使えないはずだよ。会長の指示で」
クソッ意外とせこい男だな、あの全裸勃起野郎。改めて使えないと分かったカードキーを床に叩きつけると、深い溜息を吐きながら性悪が何かを差し出して来た。それは、オレの足の下にある物よりちょっと高価な感じのカードキーだった。
「何とか侵入しようとして、とんでもない騒動を起こしそうだから」
乗りかかった船だと言わんばかりに、あっさりキーを貸してくれる。
「やる事やったら、早く自分のテリトリーに戻りなよ。興津のおもちゃにはなりたくないだろ」
茶化すように少し笑いながら、性悪はその場を後にしようとした。興津と同じルートで少し心配になるが、恐らく寮長の元へ、旧館へ向かうのだろう。
「あ、女装では行くなよ。寮長、あんまその姿好きじゃねぇみたいだから」
オレはあっさり去ろうとする性悪の背中に声をかける。当たり前だろと言いたげに「着替えてから伺うよ」とジト目で睨まれた。
「色々と助けてくれて、その、ありがとな」
性悪から借り受けたカードーキーを軽く見せながら、言いたかった事を言う。
「別に、お前の為じゃないよ」
予想通りの返答にオレは続きを口にする。
「先輩の為だろ。そのくらい馬鹿でも分かるよ。あのさ、ついでに一個だけ聞いていいか?」
図々しい後輩の態度に呆れながらも、律儀に足を止めて待ってくれる性悪に、オレはかなり踏み込んだ事を尋ねた。
「どうして、そこまで先輩に肩入れするんだ?」
興津相手にケンカを売るような事までやってくれた。初対面から顔面を机に叩きつけたくなるような相手を庇う為に、だ。
理由は寮長の話から知っている。沈没する船から助けて貰ったから。それをどうしてか目の前の奴からも聞きたかった。先輩が何をしてきたのか、少しでも知りたかった。
「神様みたいな人だから」
予想外の答えで、オレは思わずおうむ返ししてしまう。性悪は少しだけ目を伏せ、独り言のようにぽつりぽつりと呟く。
「金城先輩は……ボクじゃ助けられないって泣くことしか出来なかったあの時、ボクの願いを叶えて下さった。だから、少しでも何か返せるなら、何でもする。それだけ」
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