圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
上 下
244 / 386
新学期!!

世話焼きメイド

しおりを挟む
「馬鹿の尻ぬぐいなんて冗談じゃない」

 性悪がそう独り言のように吐き捨てる。

「助けて、くれたのか?」

「はぁ? お前を? それこそ冗談でしょ」

 観客がいなくなれば芝居する意味はない、性悪は本性全開で、底意地の悪そうな顔で笑った。

「助かったなんて安易に思わない方がいいんじゃない? あの変態、本気でお前を食いにかかるよ。ご愁傷様」

 それを言うなら、興津の狙いはオレじゃなくてお前じゃあないのか、そう聞かずにはいられなかった。性悪を見る興津の目は異常以外の何物でもない。……もしかして、元彼とかそういう感じなのか。

「まさか。ボクがあんな小物、相手にする訳ないでしょ。馬鹿なの? あぁゴメン、馬鹿だったね」

 いちいちイラッとするが、さっきのやり取りから性悪は会長の恋人(と呼んでいいのか分からないが)のようなので、それはないか。会長の先輩への執着を見るに、自分の恋人に興津がちょっかいかけるのを許すような人物には思えないからな。

「変なこと考えてるだろ。この腐れ童貞」

 女のような顔で童貞とか言うな! 一瞬嫌な感じでドキッとしただろが! てか、別に童貞じゃねぇし!

「お尻に挿入される側じゃあ童貞は卒業出来ないからね。まあ、今のお前じゃする側でも無理そうだけど」

 こ、こんな公共の場で、なんちゅー事を言いやがる、この女装野郎っ!

 オレの必死の反論を鼻で笑い飛ばした性悪は、ふと一瞬黙り込み、静かに口を開いた。

「さっき言ったことは、全部でたらめだから本気にするなよ。会長がボクに触れた事は一度もない。羽坂様はただ……ボクを保護して下さっているんだ。おかげさまで、こんな掃き溜めの中で生活しているのに一度も犯されずに済んでる。ほんと、奇跡だね」

 全裸どころか勃起した状態の姿を見たせいか、そんな紳士的な会長の想像は難しく、怪訝な顔をしてしまったのだろう。性悪は溜め息を吐きながら補足する。

「お前と違って会長はただの一度も、ボクの裸を想像したりしてないよ」

 オレだってしてない。ちょっと一瞬思い出しただけで。

「でも……そんな相手を裏切ったのは何でだ? お前が寮長に手帳を持って行ったのを知った時、えらい怒ってたぞ会長」

 別に決まり悪かった訳ではないが、話題を変えてみた。考えもしなかったが、オレが暴露したせいで、(自業自得とは言え)性悪と会長の関係には亀裂が入っているはずだ。

 性悪は冷めてるんだか、諦めているんだか分からない顔で「別に」と呟く。

「…………お前には関係ない」

 言われる通りなのだが、面白くなくて、オレは少しお節介を口にしてみる。

「まあ、いいけど……あのさ、暇なら、寮長の目玉からレンズ取り出してやってくれよ。コンタクト付けたまま寝るのってヤバそうだから」

「はあ? なんでボクが」

「筋肉ダルマがやったら、寮長の目玉潰しそうじゃん。そうなったら、目覚め悪いだろ。コンタクト入れるの手伝ったのオレだし」

 一瞬迷った顔を見せた性悪だったが、オレが手伝った事をこぼすと「じゃあ、お前がやれ」と即答してきやがった。

「オレは今から、ちょっと先輩の所に寄って帰るから遅くなる……べっ、別に何かしようとか、そうゆうのじゃないけどな! ただ話したい、てか顔見たいだけだから」

「お前が持ってるキーはロックされてて使えないはずだよ。会長の指示で」

 クソッ意外とせこい男だな、あの全裸勃起野郎。改めて使えないと分かったカードキーを床に叩きつけると、深い溜息を吐きながら性悪が何かを差し出して来た。それは、オレの足の下にある物よりちょっと高価な感じのカードキーだった。

「何とか侵入しようとして、とんでもない騒動を起こしそうだから」

 乗りかかった船だと言わんばかりに、あっさりキーを貸してくれる。

「やる事やったら、早く自分のテリトリーに戻りなよ。興津のおもちゃにはなりたくないだろ」

 茶化すように少し笑いながら、性悪はその場を後にしようとした。興津と同じルートで少し心配になるが、恐らく寮長の元へ、旧館へ向かうのだろう。

「あ、女装では行くなよ。寮長、あんまその姿好きじゃねぇみたいだから」

 オレはあっさり去ろうとする性悪の背中に声をかける。当たり前だろと言いたげに「着替えてから伺うよ」とジト目で睨まれた。

「色々と助けてくれて、その、ありがとな」

 性悪から借り受けたカードーキーを軽く見せながら、言いたかった事を言う。 

「別に、お前の為じゃないよ」

 予想通りの返答にオレは続きを口にする。

「先輩の為だろ。そのくらい馬鹿でも分かるよ。あのさ、ついでに一個だけ聞いていいか?」

 図々しい後輩の態度に呆れながらも、律儀に足を止めて待ってくれる性悪に、オレはかなり踏み込んだ事を尋ねた。

「どうして、そこまで先輩に肩入れするんだ?」

 興津相手にケンカを売るような事までやってくれた。初対面から顔面を机に叩きつけたくなるような相手を庇う為に、だ。

 理由は寮長の話から知っている。沈没する船から助けて貰ったから。それをどうしてか目の前の奴からも聞きたかった。先輩が何をしてきたのか、少しでも知りたかった。

「神様みたいな人だから」

 予想外の答えで、オレは思わずおうむ返ししてしまう。性悪は少しだけ目を伏せ、独り言のようにぽつりぽつりと呟く。

「金城先輩は……ボクじゃ助けられないって泣くことしか出来なかったあの時、ボクの願いを叶えて下さった。だから、少しでも何か返せるなら、何でもする。それだけ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

男色医師

虎 正規
BL
ゲイの医者、黒河の毒牙から逃れられるか?

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

白雪王子と容赦のない七人ショタ!

ミクリ21
BL
男の白雪姫の魔改造した話です。

部室強制監獄

裕光
BL
 夜8時に毎日更新します!  高校2年生サッカー部所属の祐介。  先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。  ある日の夜。  剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう  気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた  現れたのは蓮ともう1人。  1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。  そして大野は裕介に向かって言った。  大野「お前も肉便器に改造してやる」  大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…  

高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる

天災
BL
 高校生の僕は、大学生のお兄さんに捕まって責められる。

【R18】息子とすることになりました♡

みんくす
BL
【完結】イケメン息子×ガタイのいい父親が、オナニーをきっかけにセックスして恋人同士になる話。 近親相姦(息子×父)・ハート喘ぎ・濁点喘ぎあり。 章ごとに話を区切っている、短編シリーズとなっています。 最初から読んでいただけると、分かりやすいかと思います。 攻め:優人(ゆうと) 19歳 父親より小柄なものの、整った顔立ちをしているイケメンで周囲からの人気も高い。 だが父である和志に対して恋心と劣情を抱いているため、そんな周囲のことには興味がない。 受け:和志(かずし) 43歳 学生時代から筋トレが趣味で、ガタイがよく体毛も濃い。 元妻とは15年ほど前に離婚し、それ以来息子の優人と2人暮らし。 pixivにも投稿しています。

おとなのための保育所

あーる
BL
逆トイレトレーニングをしながらそこの先生になるために学ぶところ。 見た目はおとな 排泄は赤ちゃん(お漏らししたら泣いちゃう)

処理中です...