圏ガク!!

はなッぱち

文字の大きさ
上 下
259 / 386
新学期!!

変態といっしょ

しおりを挟む
「うん、分かってる。付き合うって、もちろんそういう意味でもあるんだけど、それだけじゃなくて、もう少しバルちんと遊んであげて欲しいって意味もあるんだ」

 スバルと遊ぶ時間、スバルと絡む時間を増やせって事か。

「放課後、バルちんから逃げ回っているのは分かってるんだけどさ、もう少し一緒に過ごしてくれると多少違うと思うんだ」

 別に逃げ回っている訳ではなく(撒いてはいくが)放課後は一目散に先輩の所へ行っているだけなのだが、説明は無理だな。

「えべっさん成分が足りれば、最中はオレのケツに集中してくれると思うんだよね」

 オレの成分とやらをお前らの行為に巻き込まないで欲しい。なんか嫌だ。

「間違えた。そうじゃなくて、えべっさんと一緒にいる事で満足できたら、オレの方に来なくなるかもしれないじゃん。ちょっとでもオレがホモから脱却出来るような可能性が生まれるじゃん」

 どっちが本心なんだよ。真逆の事を平然と言うな。

「後の方、ノーホモ。ケツに安息をもたらしたい。未来永劫に!」

「三回まわってワンと鳴いたら、掘るのに手をかしてやってもいいぞ」

 その場で華麗に三回ターンを決めて、全力でワンとほざきやがったので、こちらも全力でその横顔に平手を叩き込んでやった。

「ひ、酷い。嘘吐くなんて」

「嘘は吐いてない。ちゃんと手伝ってやっただろ、お前が墓穴掘るのを」

 頬を押さえ恨みがましい目で見上げてくるコウスケに、自分の状況を正しく理解させるべく平手をサービスしてやったら、ベッドに顔を埋めて呻きだした。

 どう考えても既に手遅れだろ。ズッポリ嵌まりすぎだ。しかも相手が誰でもいいって、生徒会の奴らと同レベルじゃねぇか。

「誰でも良くないよ! この学校でオレの美意識をクリアしてる奴なんて、バルちんとえべっさんくらいだからね!」

 探せば他にもいるはずだ。寮長や、どっからどう見ても女にしか見えないメイドの格好した奴とか!

「車椅子に乗ってる相手に乗っかれって言うのえべっさん。オレにだって良心の欠片くらい残ってるよ。でも、想像したら興奮してきた。アリかもしんない、どう思う?」

 真剣な顔をこちらに向けてきたので、赤く腫れていない方の頬も思いきり叩いてやった。

 そんな事しようとしたら、間違いなく執事モドキに殺されるだろうが、きっかけを作ったオレも同罪だろうな。今の不快な状況に誰かを巻き込めないかと、つい思いつきを口にしてしまったが、オレは心の底から反省した。

「メイドの方は確かにバルちんに勝るとも劣らない超美少女だけどさ、アレが小さそうじゃん。そこ大事なんだよね」

 スバルの事を美少女(みたい)だと思ってんのか。本気で顔だけしか見てないんだな。ちょっと可哀想になってきた。てか、どうあっても掘られたいんだな。

 その辺に落ちてる適当な棒でも拾って一人で遊んでろと言いたいが、同じ事を先輩に言われたらショックだなと考えてしまい、この出口の見えない不毛な会話をぶった切るタイミングを逃してしまった。両頬に平手をくらっても折れないメンタルに、こっちの精神がやられている。

 もう、ここまで振り切れた変態が相手なので『オレもお前と同じ掘られる方だ』と暴露してこの部屋を出たい。そして、二度と関わりたくない。

「お前は完全に手遅れだ。諦めてスバルと仲良くやる方法を探せよ」

 本心からアドバイスしてやると、コウスケはハッと我に返ったような顔をした。

「オレ、元の自分に戻りたいんだ。こんなケツ掘られるだけが生き甲斐なんて、ほんとありえないじゃん」

 自嘲するコウスケに再度スバルの調教を提案してみたが、可哀想の一点張りで話は膠着状態に陥った。スバルにベタ惚れじゃねぇーかとツッコミを入れてみたが、コウスケは照れも否定もせず、脱力気味に口を開いた。

「このまま、ズルズルとホモになるの嫌なんだ」

 ホモになるのは嫌、普通ならそうだよな。オレは運良く惚れた相手に受け入れて貰えたからいいようなもので、一方通行な感情に振り回されてホモに転身してしまうのなんて死んでも嫌だ。

 さっきまでの変態発言を聞き流すのは難しいが、コウスケの本心な気がして茶化すのは止めておいた。

「……ずっとは無理だぞ」

 めんどくせーなぁと思いながらも、放課後にスバルと遊んでやるとコウスケに伝える。信じられないと言いたげな顔で「いいの?」と聞いてきたので、やけくそ気味に「いいよ」と答えてやった。

 どういう意味で喜んでいるのか分からないが、赤く腫れた顔をぱぁっと輝かせたコウスケは「ありがとう、えべっさん」と少し震える声で言った。

 それは気の毒な程に落ち込んでいた初めてスバルに掘られた時の姿に重なり、コウスケの中に眠る秘められておくべき性癖を再び沈める為に、オレに出来る事ならやってやろうという気持ちになった。

 まずは駄目元でスバルを説得する所から始めるか……非常に困難な課題に早速頭を悩ませていたら、突然部屋の扉が恐る恐る開いた。

 大丈夫だと分かっていても、いつでも動けるように身構え扉を注視していると、扉に何かが投げつけられ外から小さな悲鳴が聞こえた。

「とっとと入れよ、絞め殺すぞ愚図が」

 来訪者を急かす声の主へ顔を向けると、さっきまでの姿が嘘のような凶悪な顔をしたコウスケがベッドの上でふんぞり返っていた。……おたふくのように頬を腫らして。

 コウスケに怒鳴られた何者かは二人いたようで、そいつらは室内に滑り込むように入って来た。怯えているのか、体を縮こまらせて、互いに寄り添うように扉の前に立っている。

「……ッひぃ! え、夷川!」

 そして、オレの姿を見るや、寄り添う所か抱き合うようにして、更に怯えの色を濃くした。

「あれ、えべっさんもこいつらのこと知ってんの?」

 怯える二人の姿は確かに見覚えがあるような気がしたが、どうにもはっきりとしない。でも、見れば見るほど、自分でも分からないが無性に苛立った。

「どっかで見た事あると思うんだが、どうにも思い出せん。誰だ、お前ら」

 思い出せない気持ちの悪さをなんとかしようと、そいつらに近づく。恐怖で歪んだ顔は、日常的に見ている一年や二年のそれではない。恐らく、この部屋を割り当てられた生徒、三年なのだろう。

「お前ら、なに黙ってんの? えべっさんが思い出せずに困ってるだろ。ちゃんと説明しろよ」

 両頬を赤く膨らせた面白い顔で威圧的に近づいて来たコウスケは、一人の頭を髪を毟るように掴み、扉に叩きつけ急かした。

「ち、違うんだ。あの時は、さ、笹倉が悪乗りしただけで、ボクたちは別にッ」

 笹倉という単語で、記憶が鮮明になり、気付けば目の前の男の顎を蹴り上げていた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

よくある婚約破棄なので

おのまとぺ
恋愛
ディアモンテ公爵家の令嬢ララが婚約を破棄された。 その噂は風に乗ってすぐにルーベ王国中に広がった。なんといっても相手は美男子と名高いフィルガルド王子。若い二人の結婚の日を国民は今か今かと夢見ていたのだ。 言葉数の少ない公爵令嬢が友人からの慰めに対して放った一言は、社交界に小さな波紋を呼ぶ。「災難だったわね」と声を掛けたアネット嬢にララが返した言葉は短かった。 「よくある婚約破棄なので」 ・すれ違う二人をめぐる短い話 ・前編は各自の証言になります ・後編は◆→ララ、◇→フィルガルド ・全25話完結

壁の花令嬢の最高の結婚

晴 菜葉
恋愛
 壁の花とは、舞踏会で誰にも声を掛けてもらえず壁に立っている適齢期の女性を示す。  社交デビューして五年、一向に声を掛けられないヴィンセント伯爵の実妹であるアメリアは、兄ハリー・レノワーズの悪友であるブランシェット子爵エデュアルト・パウエルの心ない言葉に傷ついていた。  ある日、アメリアに縁談話がくる。相手は三十歳上の財産家で、妻に暴力を働いてこれまでに三回離縁を繰り返していると噂の男だった。  アメリアは自棄になって家出を決行する。  行く当てもなく彷徨いていると、たまたま賭博場に行く途中のエデュアルトに出会した。  そんなとき、彼が暴漢に襲われてしまう。  助けたアメリアは、背中に消えない傷を負ってしまった。  乙女に一生の傷を背負わせてしまったエデュアルトは、心底反省しているようだ。 「俺が出来ることなら何だってする」  そこでアメリアは考える。  暴力を振るう亭主より、女にだらしない放蕩者の方がずっとマシ。 「では、私と契約結婚してください」 R18には※をしています。    

ゆうみお R18 お休み中

あまみや。
BL
気まぐれ不定期更新です。 他作品執筆中によりお休み中。 お手に取っていただきありがとうございます! しおりのついてない作品を無言で非公開にする時があります *リクエスト随時募集中!* 詳しくは上から2番目のリクエスト募集中をご覧下さい たまに本編の番外編(全年齢)、他作品の宣伝あります 好きな時間帯に更新するためのところ のんびり更新たまに非公開 基本何話か書いて月1くらいで一気に更新が多いです 鬱要素いっぱいあります苦手な方はバック 深夜更新多め 濁点多いので横読み推奨 旧垢で書いている作品のR18(G)です。 本編とは一切関係ありません。 レイプ、DV、胸糞等の要素多めです。 R18注意です、苦手な方は即バックお願いします。 胸糞展開やキャラ崩壊、バッドエンドが苦手な方は注意して下さい。 暴力など多めですが現実でするのは犯罪です 万が一の責任は取れません

婚約解消して次期辺境伯に嫁いでみた

cyaru
恋愛
一目惚れで婚約を申し込まれたキュレット伯爵家のソシャリー。 お相手はボラツク侯爵家の次期当主ケイン。眉目秀麗でこれまで数多くの縁談が女性側から持ち込まれてきたがケインは女性には興味がないようで18歳になっても婚約者は今までいなかった。 婚約をした時は良かったのだが、問題は1か月に起きた。 過去にボラツク侯爵家から放逐された侯爵の妹が亡くなった。放っておけばいいのに侯爵は簡素な葬儀も行ったのだが、亡くなった妹の娘が牧師と共にやってきた。若い頃の妹にそっくりな娘はロザリア。 ボラツク侯爵家はロザリアを引き取り面倒を見ることを決定した。 婚約の時にはなかったがロザリアが独り立ちできる状態までが期間。 明らかにソシャリーが嫁げば、ロザリアがもれなくついてくる。 「マジか…」ソシャリーは心から遠慮したいと願う。 そして婚約者同士の距離を縮め、お互いの考えを語り合う場が月に数回設けられるようになったが、全てにもれなくロザリアがついてくる。 茶会に観劇、誕生日の贈り物もロザリアに買ったものを譲ってあげると謎の善意を押し売り。夜会もケインがエスコートしダンスを踊るのはロザリア。 幾度となく抗議を受け、ケインは考えを改めると誓ってくれたが本当に考えを改めたのか。改めていれば婚約は継続、そうでなければ解消だがソシャリーも年齢的に次を決めておかないと家のお荷物になってしまう。 「こちらは嫁いでくれるならそれに越したことはない」と父が用意をしてくれたのは「自分の責任なので面倒を見ている子の数は35」という次期辺境伯だった?! ★↑例の如く恐ろしく省略してます。 ★9月14日投稿開始、完結は9月16日です。 ★コメントの返信は遅いです。 ★タグが勝手すぎる!と思う方。ごめんなさい。検索してもヒットしないよう工夫してます。 ♡注意事項~この話を読む前に~♡ ※異世界を舞台にした創作話です。時代設定なし、史実に基づいた話ではありません。【妄想史であり世界史ではない】事をご理解ください。登場人物、場所全て架空です。 ※外道な作者の妄想で作られたガチなフィクションの上、ご都合主義なのでリアルな世界の常識と混同されないようお願いします。 ※心拍数や血圧の上昇、高血糖、アドレナリンの過剰分泌に責任はおえません。 ※価値観や言葉使いなど現実世界とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。 ※話の基幹、伏線に関わる文言についてのご指摘は申し訳ないですが受けられません

冴えないオタクでしたが高校デビューに成功したので男子校でハーレムを築こうと思います

ムーン
BL
もっさりした髪型と肥満体型により中学時代は冴えない日々を送ってきた俺だったが、入院による激ヤセを機に高校デビューを決意。筋トレにスキンケア、その他様々な努力によって俺は最高のルックスとそこそこの自尊心を手に入れた! 中学時代にやり込んだ乙ゲーやBLゲーを参考に、長身と美顔を武器に、名門男子校の可愛い男子達を次々と攻略していく。 無口メカクレ男子、関西弁のヤンキー、ビッチ系の女装男子、堅物メガネの副委員長、甘え上手の現役アイドル、筋肉系の先輩、ワンコ系の後輩、父親違いの弟、弱りきった元いじめっ子、耽美な生徒会長にその露払いの副会長、盲目の芸術家とその兄達、おかっぱ頭の着物男子、胡散臭い糸目な美少年、寂しがりな近所の小学生にその色っぽい父親、やる気のないひねくれ留年男子……選り取りみどりの男子達には第一印象をひっくり返す裏の顔が!? ──以下注意事項── ※『』は電話やメッセージアプリのやり取りなど、()は主人公の心の声など、《》は主人公に聞き取り理解出来なかった外国語など。 ※主人公総攻め。主人公は普通に浮気をします。 ※主人公の心の声はうるさめ&オタク色濃いめ。 ※受け達には全員ギャップがあります。 ※登場人物のほとんどは貞操観念、倫理観などなどが欠けています。 ※切り傷、火傷、手足の欠損、視覚障害等の特徴を持つ受けが登場し、その描写があります。 ※受け同士の絡みがあります(ほぐし合い、キス等) ※コメディ風味です、あくまで風味です。 ※タイトルの後に()でメインの登場人物名を記してあります。順次全話実装予定です。 ×がある場合は性的描写アリ、+の場合は軽い絡みまでとなっております。

西谷夫妻の新婚事情~元教え子は元担任教師に溺愛される~

雪宮凛
恋愛
結婚し、西谷明人の姓を名乗り始めて三か月。舞香は今日も、新妻としての役目を果たそうと必死になる。 元高校の担任教師×元不良女子高生の、とある新婚生活の一幕。 ※ムーンライトノベルズ様にも、同じ作品を転載しています。

狼と人間、そして半獣の

咲狛洋々
BL
そこは獣人や半獣、人が共存する世界。 地球からの転生者ナナセは、助けてもらった冒険者の手を借りて この世界で冒険者として歩み始めた。最速ランクアップ冒険者などと 持て囃されもしているが、彼には大きな悩みがあった。 それは片想いの相手、狼の獣人ファロに恋人がいるかも知れない という事。ナナセとファロ、そして恋人かも知れない薬草師のラグの ロートレッドでの日々がそれぞれの関係を変えてゆく。 本編は完結しましたが、サイドストーリーなどを更新予定です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 番風のお話です。あくまでも、テイストだけなので 本格的な物をご希望される方には読み辛いかも知れません。

今さら、私に構わないでください

ましゅぺちーの
恋愛
愛する夫が恋をした。 彼を愛していたから、彼女を側妃に迎えるように進言した。 愛し合う二人の前では私は悪役。 幸せそうに微笑み合う二人を見て、私は彼への愛を捨てた。 しかし、夫からの愛を完全に諦めるようになると、彼の態度が少しずつ変化していって……? タイトル変更しました。

処理中です...