Another Dystopia

PIERO

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2032年3月 計画準備段階(下)

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 ここ数日ニューマンの開発に没頭し、寝不足になった俺は欠伸を噛み締めながら午前中の仕事を終え研究室に向かおうとしていた。
 しかし、その直前俺は鮫島部長から呼び出しを受け、部長室にいた。ヤクザともいえる風貌の鮫島は机の上に置かれている書類を的確に処理している。時折、大きな溜息を吐くときはいつぞやに叱られたあの日を思い出し、一瞬背筋が凍る。しかし、鮫島部長の表情は別に怒っているわけではないことは理解できる。

「そうこわいひょうじょうしないでよぉ~。
こんかいはおせっきょうとはちがうようけんだからねぇ~」

「次回もお説教は遠慮しておきたいです。
ところで、一体何用でしょうか?早く研究に戻らなければいけないのですが…」

 実際のところはこんなおっかない場所に長くいたくないというのが本音だが。そんな俺を見て鮫島部長はにっこりと笑い、俺に一枚の用紙を渡した。俺はその用紙を手に取り、何が書いてあるか確認する。見るとその用紙はスケジュール表だった。一体何のためにと問いかける前に鮫島部長は説明し始めた。

「ちかいうちに、弁田くんとこれからのきゃりあについてはなしあおうかなとおもっているんだよねぇ~。ぼくもなにかあどばいすできるとおもうからねぇ~」

「つまり、面接ということでしょうか?」

 鮫島部長は肯定すると俺は思考を切り替え近日中のスケジュールを頭の中で整理する。仕事の締め切りは今のところは問題が、自身の研究に影響が出ないかが心残りである。スケジュール表を見ると予定は二週間後の火曜日、水曜日、金曜日のいずれか三日である。その日までに研究をある程度完了すれば問題ないのだが…。

「鮫島部長。この用紙はいつまでに提出すればいいでしょうか?」

「そうだねぇ~。いっしゅうかんまえにはていしゅつしてくれるとありがたいねぇ~」

「わかりました。日程が決まり次第、この用紙を提出させていただきます」

「そうかぁそうかぁ~。それじゃあようけんはそれだけだからしごとにもどってねぇ~。
ああ、そうそう。聖くんにもぶちょうしつにきてとつたえてくれるかなぁ~」

 俺は鮫島部長に一礼して部長室を後にするとそのまま研究室に向かう。すると、既に画面に向かって作業している聖先輩の姿があった。かなり集中している状態であり、本来ならその作業の邪魔をすることはかなり申し訳ないと思いつつも俺は聖先輩の肩を叩いた。すると聖先輩は嫌な表情一つせずにどうしたのかと俺のほうに振り返った。

「聖先輩。鮫島部長が部長室に来てといってます」

「ええ!?わたし何かやらかしたかね!?」

「いえ、なんでも面接の日程について相談するという要件らしいです」

「ああ!そういえばもうそんな時期かね。それじゃあ、行ってくるね!」

 聖先輩はデスクパソコンを休止状態にすると一階下の部長室に向かっていった。俺はその姿を見送った後、自分の研究を開始する。かつて開発した『お蕎麦君』を基盤に、他の業界でも使えるようにプログラムを改良している。
 この改良が成功すればより大きな売り上げに貢献できるだろう。そうすれば俺の給料も上がる可能性がある。少々現金だが、会社にいる間の目標としては充分だ。自宅のニューマンプログラムよりもこちらのほうに力を費やしている分、プログラムは完成間近であり、あとはテストを繰り返しバグの発見や追加要素を付け足すぐらいであった。なお、新しいバージョンの名前は『注文君(仮)』と今は読んでいる。完成した時にはもっとまともな名前を付ける予定である。

「近日中にインフラ研究部門に連絡しないとな。新しいロボットの外装とか目視しておきたいし。とはいってもお蕎麦君と同じタイプになると思うが…」

 俺はかつてお蕎麦君のプログラムを完成させ、インフラ部門にロボットのデザインを頼んだがその完成品は斜め上のものだった。少なくとも、万人受けするような外見ではなく(嘉祥寺当たりは感激しそうな中二病的デザイン)、下手したら小さい子供が怪我をしかねないデザインであった。外見のデザインの残念さに俺はすぐに変更するように伝え、現在のお蕎麦君のデザインに至った。

「全く仕方ないが先のことを考えても意味がない。今俺にできることをやるしかないか」

 プログラミングの最後の仕上げに取り掛かり、目薬を点滴したのち画面に対面する。しばらくしてお昼休憩を知らせるアラームが鳴り響いた。より集中していた分アラームの音に俺は少しだけ驚くと同時にもうそんな時間かと背中を伸ばす。
 今日は調子がいいから志士そばに行かないでコンビニで最低限のものを買ってから早々に作業の続きに入るかなどと考え、俺は席を立ち研究室を後にする。

 研究室からコンビニまで往復で五分もかからない。研究の続きを早くしたかった俺はデータを保存してデスク画面にカバーした後、コンビニに向かおうとする。その直前、中田がエレベーターから現れ、これからの研究について考えていたのか、指をいじって考えながら研究室に入っていった。ここ数日、中田の指導係として何度も話し合い熱弁したことにより、当初のような嫌な印象は薄れ、現在は多少傲慢だが張り合いのある同期として認識している。

 人間的には正直に言って善良とは言い難いが、研究者として言うならば一流だ。特にロボットの分野に関しては俺以上に詳しい。現在中田が研究しているのもロボットの機能に関する研究らしい。だが、俺への敵対心は未だに持っている。しかしそれは気に食わないからという理由ではなく、技術者のライバルとしての対抗心の現れだ。最も、それはそれとして中田のそっけない態度に関しては時折怒りを感じるが。

 駆け足でコンビニに向かい三分後、俺はコンビニの買い物を済ませた袋を片手に研究室に戻った。コンビニで買ったおにぎりを食べた後、仕事に戻ろうと思い、俺はカバーで覆っていたデスク画面を注目する。瞬間、俺は立ち上げた覚えのないアプリに注目する。

「ん?なんだこれは?」

 俺はそのアプリを確認すると信じがたい光景を目にした。そのアプリは俺のデスクパソコンから会社のサーバーに接続し、どこかの会社に機密情報を全て流すように仕組まれたプログラムであった。

 瞬間、俺は最悪な展開を想像した時には俺は既にキーボードを叩き始めていた。ハッキングは得意分野ではないが、ハッキングの妨害とプログラムを破壊するということに関してはかつてアスクレピオスと敵対した時に培われたため、ある程度の妨害は可能である。

 その結果、時間はかかったが俺はそのアプリの起動を完全に停止させ、アプリそのものを凍結した後、そのアプリについて詳しく分析をした。完全に手作りのアプリのためか、どこで作ったなど特定できる情報は一切手に入らなかったが、下手に解凍しなければ二度と作動はしないだろう。しかし、問題はそれではなかった。

「一体いつから情報を漏洩されていたんだ?
少なくとも俺がコンビニに行く前にはこんなプログラムはなかったはずだ」

 俺は研究室においてある固定電話を使って部長室に電話する。未だ聖先輩が帰ってきていないことからまだ話し合いは終わっていないことはすぐに理解できた。しばらくのコール音後、繋がったことを確信した俺は起きた出来事について鮫島部長に連絡をした。すると、電話越しからでも伝わる鮫島部長の怒りに俺は多少恐怖を感じたが、『わかった。いまからそっちにむかうねぇ』と連絡があった。

 すると本当にすぐ鮫島部長と聖先輩が研究室に駆け付けた。鮫島部長の表情は普段の時と違って笑顔が全くなく真顔になっていた。一方で先ほどまで面談を行っていた聖先輩は泣きそうな表情で俺に小声で話かけてきた。

「何を連絡したのかね!?
話し合っている途中に鮫島部長の表情が豹変してすごく怖かったんだね!?」

「お詫びは後でします。ですが、今は緊急事態です」

 鮫島部長は俺のデスクパソコンを使って先ほど分析していたアプリのプログラムを解析していた。だが、俺が驚いたのはキーボードの打ち込む速さであった。俺自身もそこそこ早いと自負していたが、鮫島部長の打ち込む速さは尋常ではなかった。

 すると何かわかったのか鮫島部長は大きな溜息をつき、結論を言った。

「弁田くん。きみのきてんでかいしゃのじゅうようなじょうほうはぬかれなかったぉ~。
ただ、きみのこのぷろぐらむはぜんぶぬきとられたかのうせいがあるねぇ~」

「そう…ですか」

「だけど、これだけはかくしんしていえるよぉ~。これをやらかしたはんにんはこのけんきゅうしつないにいるよぉ~。
というわけで、かんけいしゃはきょうのけんきゅうはいちどちゅうだん。やりたくないけど、はんにんさがしをするとしようかねぇ~」
  


 結論からして犯人の候補は三人挙がった。俺がコンビニに向かっていた時間帯で研究室に入っていた人物たちである。その中には俺が指導していた中田も候補に入っていた。中田は必死に違うを弁明していたが、証拠もアリバイもない。不運にも日頃の印象によって最も可能性が高い人物であると言われてしまった。

「聖先輩。中田は今どうしていますか?」

「本部の人と鮫島部長にその時間何をしていたのか話している最中だって。
正直、わたしは彼がやったとは思わないだけどね」

 聖先輩の意見に通り俺も同じ意見であった。確かに中田は生意気で傲慢であり、自信過剰だ。しかも他人の意見など全く耳を貸さない。仮に教えようとしてもかなり上から目線で命令してくるむかつく同期だ。しかし、自信過剰と表現してもいい人格の彼が他人の技術を盗んでそれを自分のものしようなどとは到底思えない。

「そう考えると二人だよな。確かどんな人だっけ?」

「えっと、この部署に配属して四年目の米沢さんと十年のベテランプログラマーの柏木さんだね。米沢さんは確か言語変更プログラムの開発をメインにしている人で、柏木さんは金融関連のプログラムを開発する人だって聞いてるね。
二人とも弁田君のプログラムなんかに興味ないって証言しているけど…」

「柏木さんに接点はないが、米沢さんとは研究所じゃなくて午前の仕事で何度か話し合ったことがあるな。誰に対しても明るくて場を盛り上げることが上手な人な印象があったな」

 俺がまた入社して半年も経過していない頃に一度だけ俺は午前中の仕事に躓いたことがあった。俺の専門外であるプログラミング言語関連の仕事であったため、難航していた時、助けてくれたのが米沢さんであった。的確にどこがわからないのか問い詰めても一つずつ丁寧に返答している姿を見て米沢さんは天才の部類ではないが、並大抵の努力を地道に積み上げた印象であった。それ以外の職場でも冗談を交えたコミュニケーション能力はこの研究室では精神の癒しとなっている。

「とりあえず、米沢さんに会ってみるか。
何かわかるかもしれないからな。聖先輩はどうします?」

「そうだな~。今は団体行動したほうがいいかもしれないね。じゃあ、わたしも一緒に行くね」

 俺と聖先輩は一度席を立ち、米沢さんがいる場所にであろう机に向かっていった。ほとんどの研究員が自身の研究ができずイライラしている中、たった一人だけ明るい雰囲気の人物がいた。

 身長は俺よりも少し低い百六十五センチだが、肥えた立派な腹は一目でメタボリックシンドローム、あるいは強大な筋肉であることが一目でわかる。一言で表せばワインを保管するための巨大な
『樽』のような肥満体だ。しかし、凛々しい顔つきはしっかり痩せればきっとイケメンになっていたであろう痕跡もある。実際、この人物は既婚者である。体型に似合わない細めの眉と糸目は仁天堂の食いしん坊モンスターを思い出す。

 その人物、米沢さんは俺たちに気づくと気さくに挨拶をしてきた。

「おっす!弁田君元気かい!ちなみにおいらは超元気さ!」

「お久しぶりです米沢さん。少し時間をもらってもよろしいでしょうか?」

「構わないよ!!今日は色々あって帰宅できないしね!!
残業代も出ないサビ残だけどね!!おいらは参っちまうよ!!」

 けたけたと笑う米沢さんだったが、実際は本当に参っているのだろう。家族にも連絡しないといけない上に、容疑者疑惑までかかっている。常人ならば一気に追い詰められてしまうが、これだけ明るいこと事態異常であり米沢という人物の精神力の高さがうかがえる。

 米沢さんに好印象を覚えつつも、俺はコンビニに向かっていた時間帯に何をしていたのか尋ねた。すると米沢さんは嫌な表情一つせずに説明し始めた。

「おいらはその時、メールで他の企業とのやり取りをしていたのさ。
データも履歴もあるから見てみるかい?」

「では、失礼して拝見させていただきます」

 俺と聖先輩は米沢さんが送っていた企業のメールと添付していたファイルを開いた。プログラム言語の開発についてはからっきしな俺だが、ところどころ意味が分かるコマンドを見かける。もう少し調べれば何かわかるかもしれないが、特に怪しいプログラムはなく、ある意味普通のプログラムだった。メールの送信時間も俺がコンビニに向かっている間の時間だ。

「拝見ありがとうございます。ところで米沢さんの取引先ってどこだったかね?」

「アメリカの企業だよ。
鮫島部長のつてでおいらが担当することになったけど、なかなか話が分かる担当者さ」

「アメリカ?なぜ、鮫島部長がアメリカとのつてを?」

 俺の疑問に対して聖先輩と米沢さんは疑問符を浮かべた。すると聖先輩が思い出したかのように俺に説明をする。

「そういえば言ってなかったね。
鮫島部長がこの会社に入る前はあの『Biigle』で勤めていたんだよ」

「付け加えれば他の海外優良企業にも努めたことがあるらしい。
会社名は覚えてないけど、イギリスの会社にも勤めていたって聞いてる」

 初耳だった。どことなく凄まじい強者間を漂っていたと思っていたが、まさかそんなところに勤めていたとは思いもよらなかった。しかし同時になぜ日本の企業の部長という枠にとらわれているのか理解できなかった。

「なんでも、鮫島部長の家族の都合だってね。
詳しい理由は聞かないとわからないけど、子供が会いたいって言ったからわざわざ日本に戻ってきたってね」

「そ、そんな理由で…」

「わたしもどうかしてると思ったね。でも、今でもアメリカとの繋がりはあるらしく、時折Biigle社の依頼も来るそうね。本当に鮫島部長ってすごいわよね」

 聖先輩は感心しているが、俺は唖然していた。個人的な価値観によるものだが、最新の技術を学ぶならアメリカのトップ企業かそれに関する研究室に所属するのが最短の道だ。加えて結果を残せればそれ相応の待遇も約束されるだろう。それなのに、家族のためという理由でわざわざ日本の企業に転職するという判断に理解できなかった。

「家族のためとはいえ、よくそんな判断できるな」

「おいらも最初は耳を疑ったさ。けどさ、一度だけ鮫島部長の家族に会ったことがあるけど、円満夫婦っていう言葉がぴったりな家庭だったよ」

「そ、そうですか…。それでは俺たちは次に柏木さんに話を聞いてみます」

「あー、柏木さんに今聞くのはやめたほうがいいと思おうよ。作業が中止になった上に容疑者にされて今ピリピリしてるから多分面倒なことになるよ」

 米沢の視線の先に人一倍空気が悪く、イラついている人物がいた。額縁眼鏡の痩せた人物であり、ぶつぶつと呪詛を唱えるように呟いている。あの人物こそ、課長の柏木である。しかし、遠目からでもわかるように精神的にも余裕がなく、話しかけるにはタイミングが悪いと思った。

「そうですね。今日は遠慮して改めて聞くことにします。米沢先輩は自宅に帰れるのですか?」

「事情徴収が終わって持ち物検査した後にだけどね。
幸い、すぐに自宅に帰れるそうだからおいらのことは心配しなくてもいいさ」

 すると定時になったのか、業務を終了を知らせる放送が鳴り響いた。本来なら俺や聖先輩は帰宅できるが、関係者と鮫島部長は帰宅することは一通り事情聴取が終わるまでは帰ることはできないらしい。俺は米沢さんに一礼した後、自分のデスクパソコンが置いてある場所に戻る。未だに起動したままのデスクパソコンの画面は俺がプログラムを打ち込んでいた画面のままだ。
 万が一、ウイルスが侵入しても大丈夫なようにこのパソコンから会社のサーバーからの接続を断ち、インターネットも使えないようにしている。なお、既に本社のサーバーのメンテナンスは完了しているらしい。あとでこのデスクパソコンに接続している筐体もメンテナンスすると鮫島部長が言っていたため、操作することはできない。そんな状況で俺は荷物を纏め帰宅する準備を整えていた。

「弁田君。犯人は誰だと思うかね?」

「わかりません。正直、疑いたくない気持ちが勝ってます。
今日は自宅に戻って情報を整理します。それでは失礼します」

 俺は鞄を持って研究室を後にする。情報を整理したいというのも本音だが、この場では落ち着いて考えることができないのも本音である。 
 自宅に帰還すると俺は自宅のデスクパソコンを起動している間に嘉祥寺にラインでメッセージを送信した。

『トラブルがあった。
時間ができてからでいいから相談に乗ってくれないか?お前の知恵が必要だ』

 その間に俺はデスクパソコンに保存しているアプリ『The・LostWorld』を起動させる。特異点発生点まではだいぶ先であるが、この出来事は少なくとも過去に起きた出来事にはなかった。念のためという意味もあったが、確認しておいて損はないだろう。

「これは…折れ線グラフが一つの点に収束している?世界を滅亡する特異点とは違うが、微小な特異点が発生している」

 わずか数十本程度の世界線が交わり現れている特異点だが決して無視することはできなかった。多少の数値変動でも破滅の未来に近づいてしまう可能性が大きく変わってしまう可能性があったからだ。するとラインの通知音が鳴り画面を確認すると返信相手は嘉祥寺だった。

『どうした戦友よ?冥府の魔人が蘇ったのか?あと、返信が遅れてしまう故、電話での会話を所望する』

 じゃあわざわざ長文で返信するなよと思いつつも俺は電話で嘉祥寺に連絡するとワンコールで繋がった。

「もしもし。嘉祥寺か?」

『どうした戦友よ。改めてだがラグナロク会談からしばらくだが、一体何があったのだ?』

 俺は嘉祥寺に今日あった出来事を一から説明した。俺のデータが抜き取られたこと。それによって会社は混乱していること。このままでは計画に支障が出てしまうこと(こればかりは嘉祥寺にやる気を出させてもらうための嘘だが)。それらを伝えると嘉祥寺はしばらく沈黙した後、嘉祥寺の考えを語り始めた。

『話は大体わかった戦友よ。謎は大体解けた』

「もうか?あの限られた情報でわかるのか?」

『無論だ。我は天才だ。これぐらい我が全知全能のゼウスブレインにかかればどうってことない。だが動機が分からん。故に確証はないがそれでも、聞くか?』

 俺は嘉祥寺に頷くと嘉祥寺は推測だけの理論で考えた推理を俺に聞かせ始めた。その推理を聞き、俺は驚愕を隠せなかった。



 次の日、会社に出勤した俺は嘉祥寺の推理を聞き俺は昼休憩に屋上に犯人を呼び寄せた。念のために聖も同行するべきか考えたが、万が一のために現場にはいないで近くの物陰に隠れることをお願いしている。

「さて、そろそろか。推理小説の主人公の真似事なんてまさかやるとは思わなかったが」

 すると犯人であろう人物は屋上に現れた。俺は犯人に話しかけたが犯人は何も返答しなかった。俺はわかっていた反応に犯人も察しているのだろうと判断して結論を言った。

「俺のデータをクラッキングして会社のサーバーに攻撃したのはあなたですね?」
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