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76話 メキシカ防衛戦6(武蔵艦隊攻防戦その3)
しおりを挟む武蔵の艦長と副長は自艦の単装砲テストのため、先に後部甲板から発艦した武蔵航空隊は一旦上空待機させ、単装砲でB-17爆撃機1,000機を撃墜して、残りの2,000機の戦闘機を武蔵航空隊に任せようと話し合っていた。
武蔵に搭載された単装砲は、B-17爆撃機を1,000機をイージスシステムと連動したFCSにより、ロックオンした敵機(的)を百発百中の精度で次々と撃墜して行き、全機撃墜まで掛かった時間は約3分弱であった。
武蔵航空隊は5機1組でアルファ隊、2組目をブラボー隊と称していた。
因みに大和は『大和航空隊』で、大和と武蔵が共同行動する場合の各隊の名称は大和のアルファ隊ならば『大和アルファ』で、それぞれの艦名を頭に付けて呼称していた。
「武蔵アルファ1から各アルファ、どうぞ」
「アルファ2です、どうぞ」
「アルファ3、どうぞ」
「アルファ4、コチラ異常なし。どうぞ」
「アルファ5、全機揃っています。どうぞ」
「了解、只今よりSSB機能作動。それと同時に追加機能テストも行うが、俺の号令でディスプレイのボタンを押すこと。
それでは作動させるぞ。3、2、1、スイッチオン!」
アルファリーダーの号令でSSB新機能の作動ボタンを押したところ、機体が自動的に引き寄せられ、V字隊列からデルタ十字型隊列に機体がパイロットの意思とは別に自動操縦で隊形変換していった。
次に1機ずつ機体を取り囲んでいた電磁バリアが、全体を一つの塊として包み込むように大きく広がる形で展開した。
「アルファリーダー、自分の操縦桿が効かなくなりました」
「自分のも同じです」
「俺のは大丈夫だぞ」
「それでは味方が生きるも敵が死ぬのも、リーダーの腕次第ですね」
「リーダー、責任重大ですね」
「フン、相変わらずウチのメンバーは俺に掛ける言葉は毒舌かプレッシャーだからな」
「リーダー、それだけに頼りにしていますから」
「分かった。俺に任せなさーい!」
武蔵から離艦した航空隊は、アルファ隊の他にブラボー隊も同様にSSBの新機能により、デルタ十字型隊形になっていた。
2つの光の塊と化した武蔵航空隊2隊は、近づいて来る敵戦闘機編隊に正面から一直線に突っ込んで行くと、敵編隊は刃物で切り裂かれる布のように次々と機体がバラバラになり、海の藻屑と消えていた。
アルファ、ブラボー隊は、敵編隊を真正面に突っ込んだ後、次に反転して敵編隊の後方から突っ込むと真正面からの破壊力までは無いものの、それなりに敵機が相当数墜落して行った。
この突撃を何往復か繰り返すと、敵編隊はコンバットボックス隊形とV字隊形を組み合わせた隊形飛行をしていたが、武蔵航空隊2隊の姿は光学迷彩で見えないが、電磁バリアが太陽光をねじ曲げながら反射を繰り返すために、2隊の塊はサンピラーのように光輝き、その光の塊が編隊の間を通る度に敵機がバラバラになり、敵のパイロット達にすれば或る一種のオカルト的な恐怖の光の塊と恐れられた。
このデルタ十字型隊形の突撃攻撃で、次々と敵機が墜落して2,000機の数が半分の1,000機前後まで減っていた。
「アルファリーダーから各機。敵機が分散したため、デルタ十字型隊形を解除する。後は各個攻撃に移行せよ」
「「「「了解!」」」」
武蔵航空隊は、デルタ十字型隊形による密集突撃攻撃で散開した敵爆撃編隊の残存部隊を掃討するため、各個に分かれたF-35B改はSSB機能をフル活用して敵機の主翼等の一部を切り落とす度に殆どの機体が燃料に火が回り、海に撃墜する前に爆発炎上するモノが大半であった。
「少しデモンストレーションを行う。コレは上からの指示でもある。
敵機に近づいたら、一旦光学迷彩機能をオフして我々の機体を見せ、その後再びオンして姿を隠してから破壊する」
「「「「了解!」」」」
作戦参謀から武蔵航空隊に与えられた指示は、光学迷彩機能を一旦オフしてあえて敵に姿を見せることは、ゴーストやオカルト的な超常現象でアメリア軍航空部隊が破壊されたのではなく、あくまで日本軍の攻撃であるということをF-35B改の主翼に描かれた日の丸を見せつけることで、アメリア軍兵士達の恐怖心を増幅させて戦意を喪失させる狙いがあった。
姿を見せてからのアメリア軍航空部隊の動きは、日本軍憎しと無謀に突撃する戦闘機もあったが大体は逃げ惑う航空機が大半で、そのまま逃がすというのも一つの手であったが、このまま航空機を基地に戻せば我々の艦隊だけでなく友好国であるメキシカ国土の爆撃に再び使用される可能性が極めて大であり、艦隊司令部の命令は全機撃墜、パラシュート等で脱出した乗務員の生命は奪わないというものであった。
SSB機能をフル活用後の各個攻撃は、日頃溜めていたフラストレーションを爆発させるかのように、凄まじい機動性、運動性により敵機を攻撃して敵爆撃編隊全機が撃墜するまで十数分程度の時間であった。
武蔵艦隊司令部は、爆撃編隊が全て撃墜して若干名の乗組員がパラシュートで脱出し、海中に漂っていることを英語で暗号無しの平文でアナログ無線にて敵の司令部に送信した。
武蔵艦隊はその後哨戒ヘリから救援ゴムボート数隻を投下し、敵爆撃編隊の乗組員の手助けを実施した。
本来、救出活動すべきではあるのだが、戦闘作戦行動中でありこの時点では娯楽艦と病院艦を同行していなかったため、捕虜を艦内に留めることは作戦上大変難しかった。
そのため、人の情けとして救援ゴムボートを投下したのである。
後日、アメリア軍の救助隊に救助された爆撃機乗組員は、日本軍の戦闘機を『空の忍者』とか『サムライ』という二つ名で呼ぶようになり、パイロットや乗組員は日の丸を見ると恐怖心が甦って、飛行はおろか戦闘に参加することが出来ない程のトラウマを負っていた。
武蔵艦隊は敵爆撃編隊2個軍団約6千機を撃墜して、メキシカ湾の制空権と制海権を確保し、湾内中央にて強襲揚陸部隊が到着するのを待つのであった。
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