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60話 ドイツとの外交交渉 その1
しおりを挟む1942年1月
三木は外交特使として、C-2改3機、F-2の護衛機2機、KC-767改の空中給油機1機が千歳基地からドイツの首都ベルリンに向かっていた。
なお、三木と一緒に同行する者は、ガヴリエル、ラジエル、レミエルの天使3人と職人のパイロット3名に隠密ロイド部隊10名、アーマードロイドが乗り込み、機体内部は戦闘仕様に改装され、もう1機は外交相手のおもてなしをするためのキッチンダイニング仕様に改装され、後藤、田中のシェフ2名とメイドロイド10体が乗り込んでいた。
さらに1機には16式改機動戦闘車1両が積載されていた。
なお、この機動戦闘車はドイツに寄贈する可能性が高いため、FCS機能をワザと機能させないようにし、他には光学迷彩機能と電磁バリア機能を取り外していた。
他にF-2の護衛機のパイロットは、前回英国でデモ飛行したパイロット2名が三木一行に随伴していた。
ベルリンに向かう途中の機内にて
「これからドイツへ殴り込みに行くみたいだな」
「三木さん、今回はあくまで平和的な外交交渉で、この隠密ロイド達は万一の時の保険ですから」
「そうだったな、ガヴリエル。それよりドイツとの交渉決裂で飛行機の給油が出来なかった場合はどうするのだ?」
「ロンドンにいるラファエルに緊急連絡を取りましょう。
ですが、それは出来る限りしたくはありませんし、多分間違いなくこの交渉は成功致しますわ」
「それより、俺は英語は大丈夫だけどドイツ語は全然ダメだぞ」
「御心配なく、三木さん。私が貴男の脳内にドイツ語の言語能力を一瞬でマスターさせますので、貴男の額を私の額にくっつけて下さい」
「こ、こうか?」
「それでは始めます」
「お、おお、おおお!言語が頭の中を流れて行くぞ」
「ハイ、終了です。テストしてみましょうか」
『三木さん、グーテンダーク ヴィー ゲーツ エスディア?(こんにちは、お元気ですか?)』
『ガヴリエル、グッド ダンケ。(元気です)』
「凄い!何て言ったの?」
「玲実!ふざけたこと言わないの。貴女には世界言語自動翻訳機能が備わっていて、異世界のエルフ語もお手の物でしょう」
「エヘヘ、そうでした。先日、外国人技術陣を指導した後に自分の機械いじりに集中するため、その機能をオフにしていました」
「三木さん、ドイツに着いたら私の名前はガヴリエルではなく『カトリーナ・リリア』で、フィンランド政府関係者として下さい。
「分かりました、カトリーナさん。フィンランドということは、ソ連侵攻被害に対するドイツへの支援援助要請ですね」
「ハイ、そのとおりです。三木さんは相変わらず先読みが素晴らしいです」
「それより、ガヴリエル。自動言語翻訳スキルは是非欲しい能力ですね」
「プレゼントしましょうか?三木さん」
「え!もらえるのですか?」
「ハイ、ガイア様以外で能力を譲渡出来るモノで、言語スキル系は私の権限内ですから」
「それは是非お願いしたいです。何せ現在の外交官という立場があり世界中の言語で会話出来ることは、夢の能力でもありますから」
「それでは三木さん。もう一度私の額に貴男の額をくっ付けて下さい」
「分かりました。こうですね」
「今から貴男の脳内をトレースしますので、この状態を10秒間程維持して下さい。脳内の使ってない領域のシナプスに働き掛け、神経回路を活性化させて言語野を増加させますので」
「ハイ、始めます。10、9、8、、、、、、、3、2、1、0、終了です」
「何だか、少し頭が痛くて重い気がします」
「吐かないのは流石ですね。脳細胞を使っていない人は間違いなく寝込みますから」
「そうですか、この頭痛はどの位続くのですか?」
「大丈夫、貴男にはナノマシンが住み着いていますから、頭痛の元になる原因物質を分解していますので、間もなく無くなるでしょう」
「え?間もなく?うん?アレ?頭痛が引いたような感じがするぞ」
「それでは、一応言語テストをしてみますか」
『Ano ang pakiramdam mo?』(タガログ語:気分はどう?)
『Masakit ang ulo ko.』(頭が痛いです。)
「OK、次はコレね」
『Olen pahoillani.』(フィンランド語:ごめんなさいね。)
『Ei, ei ole ongelmaa.』(いえ、問題ありません。)
「ふむ、バッチリね」
「しかし、凄いな。ガヴリエルが喋る各国の言葉が瞬時に耳で聞き取り、意味を理解して無意識で言葉を返すことが出来るとは」
「それが自動翻訳スキルでありますし、この翻訳スキルは耳だけでなく他国の文字を目にした時も同時に翻訳出来て、書くことも可能ですから」
「スキルのプレゼントありがとう。ガヴリエル」
「いえ、先日私とデートして素敵な一夜を共に過ごしてくれたお礼です」
「あ!その事は秘密に」
三木はガヴリエルが発した問題発言が他の天使達に聞かれたと思い、かなりドキマギしていたものの、天使達には男女の恋愛感情に絡む嫉妬心や独占欲が一切無いため、それらの発言は全く気に留めていなかった。
「(普通、人間女性達ならば必ずヤキモチを焼かれるはずなんだが。)」
「三木さん、ネバーマインド(気にしないで)ね」
ガヴリエルは三木の心を瞬時に読み取り、半ば慰めの言葉を掛けていた。
「お二人さん、そろそろ到着しますよ」
「いよいよドイツか」
「リラックス、三木さん。私達天使が3人も付いているから大丈夫」
三木は玲実に緊張を解すように励まされて気を取り直し、一行はC-2改の乗降タラップを降りてベルリン空港の滑走路に立ったのであった。
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