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56話 対ル連戦 その1
しおりを挟む1940年3月
時間軸を開戦日から1年半以上遡る。
正史地球からPW地球への転移後、畑元帥の指名により石原完治中将を大将に昇任させ関東軍司令官に、酒井高次少将を中将に昇任させ関東軍作戦参謀に任命していた。
実は石原完治については、満州国成立に暗躍した張本人であるが、この時代において歴史改変するための必要人物として、ガヴリエルは前もって彼の思考をトレースし、彼が根が善人であること確信していた。
その後、中破総理と面接し関東軍の腐敗した組織の一掃を彼に任せていた。
関東軍の兵士は、以前は徴兵であったが組織改革してからは全て志願兵となり、中国撤兵により職にあふれていた者を関東軍に入隊させて、その数は100万人となっていた。
この関東軍を機甲師団と機械化歩兵師団に作り替えるため、正史地球の国防陸軍第7師団の各部隊から、一部人員が派遣されて関東軍の指導に当たった。
1941年5月
満州国内では日本軍の兵器製造の中心地となっており、NF炉(核融合炉)発電で得られる豊富な電力、豊かな鉱山地帯から産出される各種金属、さらに豊富な油田で得られる石油製品等を利用し、様々な兵器が製造されていた。
主な兵器は、10式改戦車、89式改装甲戦闘車、99式改自走155mm榴弾砲、96式改自走120mm迫撃砲、96式改装輪装甲車、87式改自走高射機関砲、16式改機動戦闘車、MLRS改、戦車回収車や輸送車両等々の他、16式改機動戦闘車、同戦闘車から発展させた新開発ファミリーモデルも併せて増産していた。
これらの戦闘車両も年式の後に『改』の文字が入っているが、改良機としてアップグレード化しており、電磁バリア機能、ステルス素材及び光学迷彩機能等が新開発中の次期主力戦車である45式戦車(仮)に遜色ない程に性能がアップしていた。
これらの改良点は、戦車に限らず全ての戦闘車両にも反映しアップグレード化していた。
満州国内で生産されていたのは陸軍用戦闘車両や砲門、迫撃砲、手榴弾等の兵器に限らず、全兵士が使用する自動小銃等も生産していた。
旧帝国軍兵士の銃は、村田銃や38式銃など銃の規格がバラバラで、しかもボルトアクションの単発銃が殆どで、まともに動くモノが無かった。
日本転移前の時点で中破総理が国防大臣であった時に密かに豊和工業に20式自動小銃を増産させ、名目上は全ての陸海空軍兵士が同じ武器を使えるようにしないとダメであると提言し、国防装備庁に命じて20式自動小銃を全兵士分配布した。
そのため、64式自動小銃と89式自動小銃は双方合わせると30万丁以上国内に余っていたが、コレを回収して万一の為にこれらの小銃をモスボール保管しいた。
次に日本国内で生産していた20式自動小銃の製造拠点の工場の一部を満州に移転し、そこで生産される20式自動小銃を帝国軍兵士に配備して旧式銃を回収して旧式銃を中国に武器供与することで、日本との友好及び交易を約することに繋がった。
これらの武器、兵器等の増産で10式改戦車が転移後から1941年10月までの約1年半までの間に2万両を超える数が増産され、機甲師団20個に配備する車両数を上回る製造数となっていた。
「見よ、この大量の戦車、自走砲、砲門、車両を。戦争は数だ。質も大事だがそれを補うのは数だ。そう思わないか酒井参謀!」
「そうですね、石原閣下。機甲師団20個、兵士数40万人、戦車総数2万台、装甲車1万台、自走砲以下砲門多数、今までにこれだけの数を揃えた国は日本しかありません」
「この機甲師団以外に残り60万人全てを装甲車、トラック車両による機械化歩兵や自動車化歩兵部隊にし、最終的には機械化歩兵師団30個を編成しようと思っている」
「閣下が考えるこれからの目標は何でしょうか?」
「俺の目標というより、上からの指示はこの100万人の兵士を抱える関東軍を半分にして50万人でル連に進攻し、残り半分は一旦日本に帰国させ別なところを攻めるとの話だ」
「別なところというと、南方面ではないですよね」
「そうだ、アメリア本土決戦に必要な軍団らしい」
「閣下、本当にアメリアを攻めるのですか?是非、その役目を私共にやらせて欲しいですね」
「上の者は、俺の毛唐嫌いを充分に理解しているようで、俺が司令官をしたら、アメリア合州国壊滅で飽き足らず、アメリア人全てを殲滅させてしまう危険を感じているのだろう」
「だが、ルーシー連邦とて同じ事じゃないですか」
「ル連はウラル山脈までアジアの領域。それに指揮する幹部はロシア人だが、下の者の殆どが地元民のアジア民族だ。進攻しても撃破する目標が違うだろう」
「そうか、ル連は幹部のみが悪いのですよね。思い違いをしていました」
「だが、ル連は広大だから進攻に俺らも苦労するかも知れん」
「我々はいつまでル連を壊滅に追い込めば良いのですか?」
「日本開戦後2年以内だ」
「うわ、厳しいですが本当に可能なのですかね?」
「今までの兵器ならばノモンハン国境止まりだったろう。
だが、今回はこれらの新兵器と、さらに航空支援が相当強力らしい」
「強力と言っても、本当にその航空支援は頼りになるのですか?」
「今までの陸軍航空部の航空機ならば、全然頼りにならなかっただろう。
しかし、満州国内の各空軍基地に配備される戦略爆撃機と近接航空支援機は超凄い性能だとの話だ」
「閣下でも、その飛行機の情報は分からないのですか?」
「うむ、それでも半年後に各空軍基地に配備されるらしいから、その時に拝むことが出来るな。それまでは我々は習熟訓練で腕を磨くことだな」
「了解!」
石原と酒井は、来たるル連戦までの期間を待つ様子は、子供が正月が来るのを待ちわびている姿によく似ていた。
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