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53話 パナマ運河攻撃
しおりを挟む日本時間 1941年11月28日10:00
真珠湾攻撃の予定日時から10日前に、横須賀基地から出航する1隻の潜水艦があった。
潜水艦の型式は、NF炉型巡洋潜水艦で、この潜水艦は転移事象関連による在日米軍鹵獲品の原子力潜水艦であった。
在日米軍の人と原子力関係の燃料、放射能汚染された原子炉及び関連機器がスッポリと無くなっており、放射能汚染の心配は一切無かったが、全く動力が無いため横須賀米軍基地があった港に係留されていた。
2035年に日本が世界にいち早く核融合発電に成功していたものの、小型化するのがなかなか困難であった。
しかし、高田玲美(レミエル)の協力によって核融合炉(以下NF炉略)の小型化開発に成功、地上工場で組立したNF炉を高田蘭子(ラジエル)の協力により、亜空間収納と亜空間瞬間移動能力で、潜水艦にNF炉と蒸気タービンを設置する時間を大幅に短縮出来ていた。
NF炉型巡洋潜水艦は、海上艦船と同様にNF炉が造り出す豊富な電力で船体全体を電磁バリアで覆うことで水中抵抗が半減し、水中速度が空母並みに速くなる他、敵攻撃の無力化が最大のメリットであった。
また原潜であった時と同様に、海水から水と酸素を造り出せるため、食料の続く限りは長期間の無浮上の潜水行動が可能であった。
パナマ現地時間 12月7日 11:00
NF炉型巡洋潜水艦は、開戦日1日前にパナマ南方約150km座標の深海に既に到着し、パナマ現地時間12月7日10:30には潜望鏡深度まで浮上し、通信ブイを水面浮上させ、開戦の情報収集に努めていた。
「ほほう、空軍のB-1sが日本時間12/8 0:30にオアフ島に爆撃を開始したとの話だ」
通信ヘッドフォンを片耳に当てながら、艦長は真珠湾攻撃が始まったことを副長に知らせた。
「いよいよ始まりましたか。だけど爆撃の様子を映像で見たかったですね」
「その副長の願いが叶うぞ。低解像度だが衛星中継で各部隊が受信できるようにするみたいで、現地に無人機を飛ばしていて、リアルタイムで日本国内と各前線部隊に配信みたいだ。通信係、前面スクリーンに映像を流してくれ」
「了解、艦長」
通信係は艦長指示によりスクリーンに映像を流すと、艦内乗組員から歓声が上がった。
「おお!凄いな。次々とピンポイントで敵施設を爆撃していくぞ」
「流石に日韓戦争で、当時B-1Rが死の白鳥と呼ばれただけのことがあるな」
「無人機映像は、特殊偏光フィルターで撮影しているからB-1sの姿は見えているけど、敵さんはこの爆撃機は一切見えないのだろう?」
「間違っても敵にしたくない爆撃機だな」
リアルタイム映像を見ていた乗組員達の感想は、当初爆撃状況を見て驚嘆していたが、次第にB-1sの凄まじい性能に半ば畏怖めいたモノを感じていた。
「しかし、よくこんな爆撃機を50機も前世界のアメリカは売ってくれたな」
「だが、皮肉だよな。前世界のアメリカでの兵器が、同じようなアメリアを攻撃するとはな」
「副長、乗組員全員に話があるのでラウドに流して欲しい」
「了解!」
『乗組員全員、艦長訓示があるのでそのままで拝聴するように』
『あー、乗組員諸君!このアメリアは前世界のアメリカとは若干違いがあって、政治思想が白人至上主義オンリーであり、前世界のアメリカよりも差別意識が蔓延している国家である。
我々の同胞にあたる日本人が古くから移民として生活し、日系人も多数いるが、開戦前から相当な人種差別を受けている。
この人種差別は、日本人を含めたアジア民族に限らず、黒人、ヒスパニックやアメリアインディアンまで多岐に及んでいる。
このような人種差別は前世界にもあったが、この世界のアメリアの自由民主主義は、白人のための自由民主主義なのだ。
まして、あのクソ大統領は何れ日本人、日系人等を強制収容所に閉じ込める暴挙に出ることは間違いない。
その時は彼等の救出作戦に我々が加わることがあるかも知れない。
その点を含め、この世界のアメリアは我々の敵であることを改めて肝に銘じて欲しい』
「「「「了解!」」」」
リアルタイム映像は、B-1sの爆撃から空母機動艦隊から出撃したF-18改の爆撃映像に変わっていた。
「艦長、多分現地のラジオだと思いますが、真珠湾攻撃のニュースを流しているようです」
「ふむ、開戦から2時間近くか。そろそろかな副長?」
「コッチは何時でも準備OKです」
「よし、副長。我々は現地時間12:00に海面浮上、自爆型監視カメラ付無人機を発進させる。その後は即座に潜望鏡深度まで潜行して、通信ブイで無人機を遠隔操作しながら運河の様子を撮影する。
次に通常型トマホークをガツン閘門に向けて発射、ガツンと1発食らわす。
ガツン閘門攻撃発射10秒遅れでクラスター爆弾型トマホークを運河沿いにある軍事基地並びに関連施設の攻撃発射する。
続いてミラフロンス閘門への攻撃はガツン閘門攻撃の発射5分後に通常型トマホークを発射、同閘門を攻撃、10秒遅れでクラスター爆弾型トマホークを発射する。
これで両閘門と両軍事基地がほぼ同時に攻撃出来るはずだ。了解か?」
「了解、復唱します。艦長の親父ギャグは別にして、、、、、、」
潜水艦は浮上後に無人機を発進させ、その後トマホーク4発を順次発射し、パナマ運河の両閘門と周辺軍事施設等の殆どを壊滅させていた。
「しかし、このクラスター爆弾の威力は凄まじいな。前世界で禁止法案が出来たのが理解出来るな」
「艦長、コレは不発弾にならないタイプなのですよね」
「そうだ、副長。仮に不発だとしても24時間以内に必ず爆発するシステムを組み込んでいるのだ」
「どちらにせよ、パナマ運河はコレで1年以上は使い物になりませんね」
「そのとおりだ。任務終了、帰投するぞ」
「それでは、横須賀に帰投で宜しいですね」
「否、副長。ホノルルに立ち寄ってくれとの司令部からの指示だ」
「了解、ホノルルに進路変更します」
NF炉型巡洋潜水艦は、パナマ運河をほぼ完全破壊して一路ハワイオアフ島に向かった。
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