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49話 宣戦布告
しおりを挟む1941年11月8日
日本国 総理大臣官邸記者会見室にて
記者会見室にはアメリア側マスコミ各社、欧米諸国等の新聞記者が約100名集まっていた。
もちろん日本側のマスコミ各社もいたものの、日本側の主立ったマスコミ各社の記者達は大会議室に待機し、記者会見室にいる日本側マスコミ各社は報道協定を守れない連中、つまりマスゴミと呼ばれている三流記者達と言えた。
大会議室に待機していたマスコミ各社の記者達には世界各国に発表以前に報道資料を与えており、その一つがビデオ映像である。
その報道内容は、日米会談の決裂後にハル長官が日本の外交団を軍隊を使用して襲撃したものであった。
日本側のマスコミ各社の取材陣で、報道協定を守れる大手記者は外国人記者取材陣には入っていなかった。
その理由は報道協定を守る代わりに、今回の襲撃事件の真相とその詳細について、三木特使外交団が帰国した時点で事前に秘密裏で記者会見を行っていたため、あえてこの時点で外国人記者と混じって取材する必要が無かった。
事前の記者会見の際は記者に公開するビデオが間に合わなかったが、今回宣戦布告の発表日に日本側の記者達にビデオ映像を事前公開をしていた。
「このビデオはチョットした戦争映画みたいですよね」
「しかし、この三木特使を守る彼女らは超強くて、とても人間業とは思えない動きをしています」
「ハイ、ご指摘の通りで、彼女らはこの日本を1940年の世界に転移させた神々達に遣える天使達で、我々の日本国を守り手助けしてくれる存在です」
「中破総理、もしかして彼女らとお友達ですか?」
「お友達というよりも、彼女ら神々達や天使達は我々の想像を遥かに超える超存在なものですから、私のような下々の者には尊き存在であります。
そろそろ私の出番ですので、以後は官房長官が皆様の対応を致します。
それでは私は下の記者会見室に向かいます」
日本国内の記者達にすれば、この天使達や超人達の人知を超えた動きが記録された映像をどう編集していくか少し頭を悩ませる問題でもあった。
「ま、CG処理で何とかなるか。少々報道らしく解像度を荒くすれば、現代の映像技術ならば1940年当時の技術では修正をまず見破られることはないな」
日本の大手マスコミ関係者は、政府から日本が神々達に愛され守護されている国であることを改めて知らされると同時に、神々等の事象に関するモノはタブー事項として、報道前に必ず政府と相談することを各社了解していた。
中破総理は記者会見室に現れて外国人記者達が注目する中で発表台の前に立ち、記者団の方を向いて語り始めた。
「重大発表の前に、今年初めから先日前まで日米交渉で会談を行うために日本の外交団がハワイホノルル空港内の施設で会議を行っていました。
その外交団がアメリア軍の襲撃に遭いましたが、何とか帰国致しました。その詳細については秘書官から説明します」
沙理江は総理の紹介に基づき、外国人記者団に日本の外交団がアメリア軍に襲撃された時の写真をスライド風に見せながら説明をしていた。
「、、、、、以上のアメリア軍兵士達から言われ無き襲撃を受け、SP2人の彼等は我々外交団を守るため、身を挺して尊い人命を捧げました。
改めて彼等のご冥福を祈念したいと思います。この後、総理から重大発表がありますので、そちらに注目願います。それでは総理、お願い致します」
中破は外国人記者達に向かって語り始めた。
1 アメリアに対する要求
我が日本国は、アメリア合州国政府コンラッド・ハル国務長官と約1年間にわたり交渉をし、ハル長官が提示したハル四原則に基づいて中国からの撤兵と中華共和国政府代表 勝介石との和平を実現した。
また、日独伊三国同盟の締結は取り止めたが日独伊防共協定は共産主義が世界中に広まることを防ぐための協定であり、コレはあえて残した。
そして、日米諒解案についても日本国は了承することで合意している。
しかしハル四原則の提案国であるアメリアは、太平洋上での平和的で平等な通商活動を行うことを求めたにもかかわらず、提案国自らが約定を破棄する形で日本への通商制裁や石油禁輸政策を行うことは、卑劣でならず者国家と言わざるを得ない。
加えて、ハル四原則に忠実に従えば欧州諸国の大半は植民地を元の住民達に返還しなければならず、特にアメリアはその植民地政策の主犯と言わざるを得ない国である。
何故ならば、独立13州は元々は無主地ではなく先住民族のインディアン諸民族と戦争して、諸民族を追い出して勝ち取るという血塗られた歴史の上に成立した。
この13州をアメリアの始まりとして次々と先住民族と戦って領土を広げてきたわけだが、そのアメリアの建国ですらハル四原則に忠実に従うと無効の国家と言えるわけで、アメリア全土を先住民族に返還し白人であるアメリア人は欧州諸国に帰国すべきである。
しかし、それらを純粋に解釈すればアメリアという国家が成立しないことに繋がるため、日本国としては大幅に譲歩してアメリアの国土成立までは認めることとする。
だが、その後も植民地主義に走り国外の植民地獲得に奮起してハワイ王国を滅ぼし、フィリピンでは住民30万人以上を虐殺し、プエルトリコのカリブ海諸国やグアムを始めとする太平洋の島々を次々と武力征服した行為は、鬼畜な海賊国家と言わざるを得ない。
これらのことから、アメリアの唱える自由と民主主義は見せ掛けであり、自国民以外の他民族へは弾圧と迫害を実行した歴史を抱える犯罪的国家である。
このように身勝手で理不尽な国が、他国へ自由と民主主義の押し売りをして内政干渉することは言語道断である。
上記の事由から、アメリア合州国は、現在植民地として統治した海外領土の主権を放棄し、先住民の主権を認めて植民地を先住民に返還すること。
2 欧州諸国に対する要求
欧州諸国は、国家が維持出来うる資源と国民に飢えや貧困の無い生活を約束していれば国内と周辺諸国との通商で国家が維持出来たのだが、欧州全体が貧しい国土に悲観して自助努力をせずに各諸国はその貧しさを解消するために争いに走り、その豊かさを欧州以外に求めて平和に暮らしていたアジア、アフリカ諸国の住民を愚かな下等人種として罵り、それらの住民を奴隷化してその地域を武力で制圧して植民地化する行為は、悪魔的所業そのものである。
このように有色人種を白色人種より下等に見下す差別主義は、植民地政策を推進するものであり断固粉砕すべき思想主義である。
欧州諸国は過去行って来た悪魔的所業を反省し、現在植民地として統治した海外領土の主権を放棄し、先住民の主権を認めて植民地を先住民に返還すること。
3 ルーシー連邦に対する要求
ルーシー連邦(以下ル連略)なる共産主義国家は、カミル・マルクスの共産主義を歪曲し、共産党一党独裁政治を支える共産党幹部は自らを貴族化階級と定めて国民を奴隷化して支配する類いのもので、国民の人権を無視し一切の自由を許さない社会体制といえる。
ル連政府はこれらの支配構造を守るために粛正と称して、罪無き者を反革命者の烙印を押して400万人以上の人々を処刑し現時点において数百万以上の者を思想犯とし強制収容所に送り、強制労働という極刑に処している。
このような基本的人権を一切無視し、粛正と称して次々と思想犯を殺害する共産主義国家は地球上に存在してはならず殲滅すべき対象である。
さらにル連は北欧のフィンランドに対して無法な侵略行為を行い、今も継続中である。
このような強大な国が弱小国を駆逐する等の鬼畜的行為は、アメリアや欧州諸国と同様であり、決して見過ごすことは出来ない。
ル連はフィンランドと直ちに停戦して、侵略行為により獲得した領土を返還し、共産主義という悪の権化と言うべき政治体制を捨て民主主義国家に変革することを日本国政府は強く要求する。
今一度世界中の国々に呼び掛けるが、次の条件に該当する国や地域、団体等か、またはこれから指名した国家に対して我が日本国は宣戦布告する。
なお、特にアメリアについては日本が平和的に外交交渉を実施していたにも関わらず、その国の代表である国務長官たる者が自分自身のスキャンダルを隠匿するために日本外交団に自国軍隊を使用して襲撃し、外交団一行を亡き者にしようとした戦闘行為は国際的に許されるものではなく、これらの行為は日本国に対する宣戦布告と認めざるを得ず、これらの暴力行為を実施する国家の存在を断固許すわけには行かず、今回の宣戦布告に至ったわけである。
該当条件
1 植民地支配国家等
植民地を持つ国で、現地住民を奴隷化して強制労働させている国、地域。
2 共産主義国家及びその地域、団体等
3 指名国
アメリア合州国、フランク共和国、イスパニア帝国、プルート王国、ホラント共和国、ルーシー連邦、オーストラリア、ニュージーランド等
4 解除条件
上記指名国を含めた植民地支配国家等が次に定める期日までに植民地を放棄する旨を日本政府に伝えるか、戦争開始後においても自己の植民地を放棄する旨を日本側に連絡すれば、戦闘行為は中止する。
さらに共産主義体制を取る国家については、民主制または共和制による政治体制に移行するか、共産主義体制が崩壊したことを確認するまでは戦闘行為は継続する。
現在、植民地支配を実行中の国家の中で、ドイツ帝国連邦の支配下になった欧州諸国は、ドイツ支配下になる以前に獲得した植民地は母国がドイツ帝国連邦の支配、庇護下にあるため植民地権利は全て無効であり、同植民地は即時放棄すること。
なお、同植民地に居住する現地民を支配する者が存在して未だに現地民を支配下に置いた状態ならば全て日本国の敵対勢力とみなし、現地民を解放するために日本国は軍事行動を実施する。
5 英国との関係
英国とは、現在日本と軍事同盟を締結済である。
英国は日本が技術提供する代償として、オーストラリア、ニュージーランドの両自治国を英国連邦から日本連邦に移譲する旨を誓約済である。
しかし、両自治政府は英国政府の意向に従わずに日本連邦への加入を頑なに拒否したことから、両自治国を敵対国家と認めて両国に対して武力行使をすることとした。
6 該当条件回答期日
『日本時間 1941年12月8日午前0時 グリニッジ標準時 12月7日午後3時』
までに上記該当条件の要求の返答が無い場合は、指名国及び植民地国家並びに共産主義国家団体等に対して宣戦布告する。
以上
1941年11月8日
日本国政府 総理大臣 中破 守
外務大臣 有川 吾郎
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