日本国転生

北乃大空

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19話 閣下とサリーと妹達の微妙な関係 その4

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 沙理江は地球の生命誕生まで遡り、人類発祥から自分が天使サリエルとして誕生した当時の状況を順に中破に説明を始めた。


 宇宙管理神の新人は『第3級宇宙管理神』の『研修神』で、仕事内容は初期の惑星管理にあり、宇宙船から生命生存に適した星系内、地球人は『ハビタブルゾーン』と称している星系にある惑星を生物が生存可能まで調整し、その後生命の種を撒くわけである。

 惑星誕生の頃は熱々のホットな状態だけど、コレを手っ取り早く冷やす方法として、神々は水惑星と呼んでいるビッグウォーターカプセル体を惑星に衝突させるのではなく、惑星に接近させることにより、ロッシュの限界で水惑星から霧雨状に変化した水分が惑星地表に降り注ぎ、海等を形成した。

 地球もその方法によって海が誕生したわけで、太陽系の一通りの惑星にも水惑星が通過しているが、海として残った惑星は地球と火星だけだった。
 しかし、火星は引力の弱さでドンドン水分が蒸発し、辛うじて水分が残ったのは極地方に氷として存在するだけであった。
 その後、海みたいに水分と空気が残っている惑星に次々と生命の種を撒いていくわけで、地球も同様に生命の種が撒かれたのである。

 その後、単細胞生物から多細胞生物に進化するように操作し、多細胞生物が動植物に分かれて、生物に惑星全体に満ちたところで新人達の生物遺伝子操作の練習教材として『カンブリア紀の生物大爆発』に繋がるわけで、その時代の生物は超奇天烈であり、異世界の魔物・魔獣と思えるほどであった。

 その後、海の高等生物である『魚類』の一部は陸上に活動の場を伸ばさせるために『両生類』に進化するように遺伝子操作して、順に『爬虫類』へと進化させるよう遺伝子操作させていった。

 この時も、新人管理神達は生物遺伝子操作実験を繰り返し、爬虫類を巨大化させることに成功して『恐竜』を誕生させたのだった。
 しかし、この結果を中央管理局に報告したところ、その『地球』と呼ばれている惑星は、管理者発祥の惑星『ウラノーツ』の初期によく似ており、地球に本来の高等生物が進化して文明を持つまでの間は、神々のリゾート地にしようと中央管理局は計画した。

 恐竜たちを開発した新人管理神達は、生物遺伝子操作で評価されて全員本星に帰還し、代わりに新人より少し経験がある『第3級宇宙管理神』の中で次の管理神に昇格するための幹部研修期間を終えた若手管理神達を派遣した。

 新人達が開発した恐竜は地球全体を満たして、恐竜惑星状態になっていた。
 若手管理神は地球上にいる殆どの恐竜種の遺伝子情報を本星に転送し、実物の一部は異世界惑星に転移させていた。
 地球上に残った多数の恐竜は、ベテラン管理神達の格好の獲物であり、狩りに未熟な若手の神々達には絶好の練習場でもあった。

 或る者は剣で、また或る者はハンマーや槍、斧等のあるとあらゆる古典的な武器を試し、あえて神々の能力を使わずに人間的な能力で戦っていた。

 そして、それらの武器が敵わない時は、異世界なら魔法と呼ばれている神々の能力で恐竜を倒していた。

 若手管理神達は地球中に蔓延っていた恐竜たちに『恐竜人』とか『龍人』等に進化させて恐竜に知能を与えようと色々生物遺伝子操作したが、恐竜は進化することはなく徒労に終わった。
 これ以上進化しなかった理由は、地球上の爬虫類はいくら生物操作しても『脳』の進化が停止しているため、『人化』することはなかったのである。

 神々達が行っていたハンティングリゾート場も、地球以外の別惑星に魔物等を繁殖させた新たな狩り場が開設され、恐竜達が興味の対象で無くなったことから、地球上の生物を次の生物に進化させるために恐竜が邪魔な存在になっていた。
 そこで、中央管理局は地球に小惑星を衝突させて地球環境を激変させ、次の生物進化を整えるために小惑星衝突オペレーションを開始した。

 その結果、小惑星はロッシュの限界でバラバラになり、次々と隕石群が地表に衝突し、残りの隕石群は月の引力に引かれて月地表に衝突した。

 地球上では、劇的な自然環境の変化で恐竜等の大型種は全滅し、何度も氷河期が訪れたが、小さい生物のみが生き残り、爬虫類の小型種になるか、または『鳥類』、『哺乳類』へと進化するように操作して行った。

 再び温暖な気候になり、多様な生物に分かれるよう遺伝子操作することで、様々な生物が生まれ、最後に類人猿が登場した。
 類人猿が生まれた時点で、次に神々の姿に近い人間が登場すると思いきや、類人猿はチンパンジー属以上のヒト属(ホモ属)には決して進化しなかった。

 若手管理神はチンパンジーを捕獲し、何度も遺伝子操作を試みるも、神々達の姿(肉体)と同等の現生人類にはなり得なかった。

 若手管理神の1柱は、試しに類人猿を『人化』させて『猿人』に進化するように遺伝子操作したが、文化が発展する代わりに猿同士の争う力が大きくなっていた。

 つまり、争う力の知恵だけが回るようになってしまった。
 個々の喧嘩は、やがて仲間同士で争いになり、それが拡大し種族同士の戦いに広がりながら、最終的には猿族全てが戦争する事態に発展した。

 事態を重く見た中央管理局が出した結論は、他の生命体を残しながら確実に進化猿だけを絶滅させる方法として、地球に氷河期を到来させた他、進化猿だけに感染するウイルスを蔓延させたことであった。
 この氷河期を数回地球上に到来させることで、寒さとウイルス感染した進化猿は絶滅させて、残りの猿種は熱帯地方のみに生息するようになっていった。

 若手管理神達が受けた中央管理局の出した指令は、『地球』を神々の母星であった『ウラノーツ』の環境に近づけることであり、即ち神々の姿に近い人間型生物を地球上に出現させることであった。
 そのためには、現生人類の元となるブランク体の使用を許可したのである。

 若手管理神達は、ブランク体から神々達の特殊能力(超能力)の元になっているナノマシンを細胞内外から除去し、細胞内に地球上生物の動物細胞に存在しているミトコンドリアを与えて、地球型生物と同じ細胞に遺伝子改造することで、数十組の人型雌雄体を地上に降下させた。

 そのあたりの話は伝説となり、地球上の聖書では天地創造やアダムとイブが誕生するような話に変遷されているが、人は猿から進化したのではなく、神々達が人を造ったのは決して間違いではなかった。
 それ故に聖書に書かれている記述も、ある程度正しいと言えよう。

 若手管理神達は、ブランク体を使用して現生人類の元になるホモ属を地上に住まわせ、彼等は進化猿とは大幅に違い道具を使用して次々と文明の元になる文化を着実に発展させ、最終的には、今の現生人類であるホモ・サピエンスに行き着いた。

 そして若手管理神達の『第3級宇宙管理神』の仕事はここで終了して、人類を進化させて文化を与えるのは『第2級宇宙管理神』の仕事であり、この時に中央管理局から派遣されたのが『女神ガイア』であった。

 彼女は、早期に人類の文化を発展させるため、原住民の一部を宇宙船に引き揚げて思考改造を施しながら、超文明を与え続けたところが、アトランティスを含めた超文明の一斉崩壊に繋がってしまった。

 彼女の処分については赴任間もなかった事故であり、当時彼女自身のランクは第2級クラスAで、間もなく第1級の管理神に上がる予定だったが、その時の事故で第2級クラスCにランクダウンされた。

 本来ならば、このような大災害ならば、2級から3級に降格されるはずであったが、運良く人類全体が絶滅せずに半分以上生き残ったことで、彼女自身は級の格下げされずにクラスのみの格下げ処分で済まされていた。

 周辺の島々に逃れた末裔が、現在高度文明を造りつつある民族で、三文明の末裔のアトランティス系がヨーロッパ諸国で、レムリア系が中国、インド、アラビアへ、最後にムー系が中南米のインディオと日本民族の原型になり、当初は世界四大文明の発祥を促し、現在高度文明を造りつつある民族の原型に繋がるのであった。

 アトランティス住民の一部も地中海沿岸に避難しており、これらの住民を使役させてパルティノン神殿の建設とギリシアの元になる国家を創立させ、神々達を迎える取りあえずのリゾート地として整えたのであった。
 ま、このあたりの話が、ギリシア神話の元になるわけである。
 神々達は精神体の時は大変穏やかだが、ブランク体を使用した肉体と精神体が結合すると、普段と違い欲望の塊に変わるのが或る意味不思議であった。

 その神々達の欲望の権化のような我が侭な行いが、宗教の思想に影響して、人類の統治に発展していくことに繋がっていくのだが、それは歴史や神話等がある意味証明されている。


 沙理江は話がギリシア神話まで来たところで、一旦話を中断した。

「話が長くなりましたので、一旦中断してお茶にしましょう」

「そうだな、久しぶりにダージリンを頼む」

「かしこまりました」


「4人は別のメイドロイドが運んできた紅茶やコーヒー等に手を付けながら、再び沙理江が話を始めた」

「ギリシア伝説の神々の神話は、歴史年代ではかなり食い違いがありますが、ある程度の部分は事実です。
 当時の地球は、神々のリゾート地でもあったのです。
 神々が地上に度々降臨して、一般女性と関係して神の子を作るわけです。

 当時、ガイア様もオリンポスの神々の中にいて、ガイア様は別な男神と度々関係していたのですが、オリンポスの神々による生殖行為は、神と人間との間に出来た子供達が沢山いると、人間社会を統治する上で障害になることから、中央管理局は地球を神々のリゾート地として活用することを取り止め、ガイア様以外の神々を地球から引き揚げた時期が、今から1万年前の頃です」

「当時、ミカエル以下3人とガヴリエル、サリエルも一緒にいたんだろう。
 ミカエル以下3人は、もしかしてオリンポスの女神達のセフレか?」

「実に御名答です。当初は女神達も男性神と同様に相当の数がいるし、彼女らの欲求を満たすセクスロイドが欲しいというところで、ミカエル、ラファエル、ウリエルの3体の男性型セクスロイドが造られたのです。
 そしてオリンポスの神々の誰かが神々の精巣の複製を与えたのです」

「なるほどね。天使の羽を格納すればイケメン男子だから、地上ではモテモテだっただろうな。だけどルシファーの話が出てこないけどな?」

「彼、否、彼女は、当初ウラヌス母星に居住する女神達のオモチャ的存在で造られた一番最初のセクスロイドで、男性か女性にするか揉めていました。
 そこで中間策として『ふたなり』として妥協点を見いだして、両性器を装着したのです。
 このあたりの話が、天使が両性具有であると広まったのでしょう。

 或る日ルシファーは、そんな神々達の傲慢さとワガママさに嫌気がさして、AI回路の一部が熱暴走で損壊したのです。
 後はミカエル率いるバトルロイド達にコテンパンにやられる話です。

 オリンポスの神々が去った後、ガイア様は寂しさを紛らわすため3人の天使達を愛し続けました。
 しかし、地球の管理をおろそかにしたため、地球世界が荒廃したのを立て直すのに、ミカエル以下3人の男性型天使と監視役でガイアの能力の大半を移譲したガヴリエルを3人の監視役として、彼等達を地上に派遣したのです。

 3人は超人的能力で、荒廃した世界に君臨していた悪魔的な支配者を倒し、平和な世界を取り戻したのですが、超人的存在として当時の女性にモテモテになり、次々と地上の女性達と交配して行きました。

 だが、神々とほぼ同様の能力が備わっている精子であるため、優秀な子が生まれ過ぎて人類統治が上手く行かなくなる恐れが出たため、ミカエル以下3人を引き揚げ、3人を中性的なバトルロイドに改造し直して、自分の戒めのためと仕事に没頭するために彼等の男性部分を無くしたのです。

 私達のアンドロイド体は1,000年位で機械がダメになり、その度に電子頭脳の記憶と意識を新しい機械体にインストールされ、ミカエル以下3人の方々は中性的な姿から徐々に女性的な姿に変わって行きました」

「アレ?この時蘭子と玲美は誕生していないの?」

「ガイア様は今までの地球を調整し、神々が人類に行っていたことを記録するためにアンドロイド体が必要になり、ラジエルが造られたわけです」

「人類の記録なら、母船のデータベースで済む話じゃないの?」

「ラジエルはデータベースのバックアップキーで、宇宙船のデータベース以外に地球の某場所にバックアップデータベースが存在するのです。
 万一、母船のデータベースが損傷した場合、別のバックアップを起動させるための『鍵』的存在なので、普段は暇な状態ですが常に遊ばせるわけには行かないので、人類の歴史記録と遺産収集係の仕事が主な担当です」

「玲美の誕生はどうしてなのか?」

「先程話したアトランティス伝説を思い出して下さい」

「ああ、他にレムリアとムー大陸があった話だよな」

「その大陸消滅は、ガイア様が当時の原住民にハイテク文明を教えたのが発端なのですが、或る日、現地人技術者が次元空間装置の操作を誤り、三文明ごと同時にブラックホールが大陸中央部分に出現し、現地人の大半はそれに飲み込まれたのです」

「だが、疑問に残るけど何故三文明が同時に滅亡するのか?」

「それは、当時のガイア様のミスで、三大陸の文明進化促進装置をリンク同調させていたからなの」

「なるほど、リンク接続で3カ所同時にブラックホールが出現し、ドカンか」

「ガイア様はその失敗を繰り返さないために、科学助手として『レミエル』を造り出したわけなの」

「その後、レミエルの協力によって『パラレルワールド時空管理システム』と『星系コピーマシン』を完成させて、再度地球管理の運用を始めたわけなのです」


「それじゃ、サリエルはいつ生まれたの?」

「ミカエルとガヴリエル以下3人が造られた直後ですね」

「閣下、神々と呼ばれている宇宙管理者は、精神体で動いていることを以前にガイア様から聞きましたか?」

「聞いたかも知れないし、あまりよく覚えていないな」

「それでは改めてお話します。
 普通、神々達は精神体で宇宙各所で稼働しており、そのエネルギー供給元が生物が発生させる精神エネルギーなのです。
 地球や他の惑星で生まれた生物の精神エネルギー、俗にいう良質な『魂』はカルマ(業)の程度に応じて元の惑星や別の世界に転生させます。

 その他大勢の精神エネルギーは、善悪全てを混入し中央管理局に送っていたのですが、悪人の負のエネルギーが年を経る度に多くなり過ぎて、エネルギー運用に問題が生じたのです。
 この時代になると、生まれ替わりが徐々に出現し、と同時にその魂が送った人生(業)を評価をする魂選別作業で、悪人の魂を調整排除するために私ことサリエルが造られたのです。

 善良な魂は転生するか神々に合一等をしますが、凶悪な魂は世間でいわれる地獄に送ります。
 

 人類の人口が少ない内は私の作業は順調でしたが、人類の人口は年々増加の一途を辿り、私とその手下のロイド達だけでは手に負えなくなったことを見かねて、ガイア様がレミエルに命じて魂自動選別作業装置を開発したのです。
 その装置の優秀さを中央管理局が認めてガイア様のランクがアップし、第2級のクラスCからクラスBになったのです。

 その魂選別作業から解放された私には、影の隠密天使の仕事を与えられたのですが、私の性分にはピッタリの仕事でしたね」

「沙理江、今の詳細な説明で天使達の仕事と神々達の役目がよく理解出来た。改めてありがとう」

「いえ、閣下の身に余るお言葉、痛み入ります」

 沙理江は神々と天使の仕事やその仕組み、関係等を人間である中破に話して良かったのか?と一瞬疑問に思っていた。
 しかし、中破はガイア様に選ばれた人間であったことを思い出し、もし歴史改変が成功した場合は、その時の状況に応じて神々の眷属の一員になるか、又は普通の人間として人生を送るかは現時点では分からなかった。
 しかし、万一人間として生活する場合は、ガイア様がガヴリエル姉様に命じ記憶と特殊能力を全て消去するので、何ら問題ないと半分確信していたから、宇宙管理者である神々と天使達の仕組みを話したわけで、そのことをサリエルは決して後悔していなかった。
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