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増殖の覚醒

冒険者ギルドに登録しよう

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「何故消えてないんだ?」
僕は少しばかり考えた。

思い当たる部分はあったけれど、それは余りにも都合が良すぎる。

そしてMPが0になると回復するまで気絶する事も分かった
僕は運がいいんだろう、1分ほどで目が覚めたので大事には至らなかった。
物陰に潜んでいたのが功を奏したのだろう。

そうなると一度落ち着ける場所に行きたいと思う。

一度追い出された城の門へと向かい、そこに門を守っている兵士がいるはずなのでせめてそんな場所でも教えてもらえないか駄目元で聞いてみよう。

「すいません、ちょっと聞きたい事があるんですけど。」

「ん、あんたはさっきの?なんだ何が聞きたい?」

「この辺りで仕事、もしくはお金を稼ぐ方法あとは宿なんかを教えて貰えないですかね。」

「あぁ 、それくらいならいいぞ。」

話を聞くとこの城を出ると大きな城下町があるらしく、その中でも真ん中を突っ切る大きな道があるそうだ。

その道を進むと冒険者ギルドと言う大きな建物があるらしい、そこへ行けば宿の紹介、さらには登録をすることで仕事を受けることが出来るらしい。
登録によってギルドが身分も保証してくれるらしい。

お金は有限なのでその情報はかなりありがたかった。


「兵士さん、ありがとう。」

「いいって事よ、それにしてもアンタも運が無かったな、これから頑張れよ?」

「ありがとうございます、出来る限りなんとかやってみます。」

そう言って僕は冒険者ギルドへと歩みを進めた。



「ここが冒険者ギルド、か?」
思っていたよりも大きな建物で少し驚いた。

「とりあえず入ってみよう。」
中に入ると左右にカウンター、中央に大きな掲示板があった。

右側は完了報告受付
左側は受注受付
と書いてあった。

今は人が少ない時間なのかそこまで多くの人は見受けられない。

左側の受注受付に少し暇そうにしている受付嬢がいたので話かけてみる事にした。


「すいません、ギルドに登録したくて来たんですけど、どうすればいいですか?」

「はい、登録ですね、まずこちらの紙にあなたの名前、年齢、出身地、レベルを記入してください。」

出身地は日本で大丈夫なのだろうか?
いや、気にしても仕方ないしそのまま書く事にしよう。

「はい、これで大丈夫ですか?」

「はい、確認させていただきますね。」
そう言って紙を確認する受付嬢。

「この日本というのはどの辺りにある国なのでしょうか?」

「えぇーと遠いところと言うしかないですね。」

「分かりました、念の為不明とさせていただきますね。」

「それで大丈夫です。」

「ではこれで登録させていただきますが、最初にルールを説明させていただきますね。」
内容をバッサリと説明すると
・ランクはE~S
・犯罪行為を行った場合ギルドカード(身分証)を剥奪、その罪に応じて罪を償ってもらう事。
・一定期間(3ヶ月)依頼を受けないとランクがダウンし、最低ランクで同じようにするとギルド資格を剥奪。
・一定のランク(Bランク)へ到達する事で国民権を購入する事が出来るようになる。
その国民権は自分の住みたい国へ行ってから購入する事でその国の国民として生きて行くことが出来るようになる。
価格は国によって異なるため注意。


「理解いただけましたか?」

「はい、問題ありません。」

 「他にも細かいルールはありますが、今の所気にしなくても問題無いかと思います。」

「分かりました。」

「ではギルドカードを発行させていただきますのでこちらの魔道具の中に指を入れて下さい。」

そうして差し出されたのはパルスオキシメーターのような物だった。
そこに指を入れると少しだけちくっとする。
すると木で出来たカード発券機のようなものからカードが出てきた。

「過去に犯罪歴がない事も只今確認出来ました、こちらがギルドカードとなっており、あなたの今後の身分証明書としてご利用いただけます。」

「依頼を受ける際も中央の依頼ボードより依頼書をお取り頂きこのギルドカードとともに受付カウンターに提出してください、そうする事で受注したいとギルド側が確認出来ますので。」

「わざわざありがとうございます、あと一つ聞きたいんですが、どこかにいい宿なんかはありませんか?少しの間ゆっくりしてから活動しようと思っているので。」
僕はお礼を言うとともに宿の場所を聞くことにした。

「でしたらギルドの向かいにあるザ・宿屋がオススメですよ、料理も美味しいらしく値段も手頃との事です。」
あまりにも安直すぎる名前に少し笑いそうになるけど、そこは我慢。

「名前が凄い安直だと思いましたね?」
何故ばれたんだろう。

「ま、まぁ・・・」

「皆さん同じ反応をされますので。」
そう言いながら少し微笑む受付嬢。

「それでは、ユウト=イガラシさん、お気をつけて冒険者としてお過ごしくださいね。」

「はい、えっと・・・」

「私の名前はエリーです、エリーとお呼び下さい。」

「ありがとうございます、エリーさん。」

「いえいえ、これが私のお仕事ですので。」

「それじゃあザ・宿屋に行ってみますね。」

「はい、また来てくださいね。」

「勿論です。」

そう言って僕はギルドを出て教えて貰った宿屋へと向かう。


「すいません、ギルドの方からここを教えて貰ったんですけど、これで何泊ほど出来ますか?」
僕はそう言って金貨を1枚取り出した。

「いらっしゃい、って事は宿泊だな、それは大金貨か、うちは銀貨1枚で素泊まり、銀貨1枚と大銅貨3枚で朝と夜を出してるんだが兄ちゃんはどうしたい?食べたい時だけここで食べるなら毎食大銅貨2枚で食べられるぞ。」
「それなら食事付きでお願いしたいです。」
どうやら僕の持っていた金貨は価値の高い金貨だったらしい。
当分生活には困らなさそうだ。

「おう、了解したぜ、そうなると大金貨1枚だと素泊まりで1000泊分だから食事付きだとおまけして770泊って所か。」
困らないどころじゃなかった。
約30年ここだけで過ごせる金額持ってた。

「さ、流石にそこまで長くいるかは分からないですね。」

「まぁ、そうだろうな。」

「とりあえず一月分でお願いしたいです。」

「了解した、だったら大銀貨3枚と銀貨9枚だな。」

「それだとこれは大きすぎますかね?」

「他の宿屋だと言われるかもしれんが俺のところならまだなんとかなるから大丈夫だ、ほれ金貨9枚と大銀貨5枚と銀貨10枚と大銅貨10枚だ。」
わざわざ細かいものを作って渡してくれた。

「えっとこれは、いいんですか?」

「構わないさ、どうせいつかは使っちまうんだ、使う時に大きいままだと不便も多いからな。」

「ありがとうございます。」

「ま、長いこと泊まってくれるみたいだしサービスさサービス、部屋は3階の310号室だ、ゆっくりしていってくれよな。」

僕はお礼を言い部屋の鍵を受け取った。
そのまま部屋へと向かい増殖スキルについて色々と試そうと思う。
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