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番外編

夜が明けてから誰が抱く? 1 *

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(作者コメント)
2人暮らしを始めた智暁と蒼空が、キス以上のことに進もうとするお話です。
挿入はありませんが、直接的な性表現、リバが苦手な方はご注意ください。
大歓迎という方は、ぜひ楽しんでいただけたら嬉しいです!
全3ページです。

◇◇◇



 ソファの上に寝転がり、目を閉じる。手の甲を口元に押し当てて、啄むように薄い皮を甘噛みしてみる。これは練習だ。

 ――蒼空とのキスは、いつも無我夢中って感じ。お互い絶対に譲らなくて、絶え間なく舌が行ったり来たりして、歯がぶつかったのも一度きりではない。

 俺が下手なのかな。ってか、壱星が上手かったんだな……。

 ふと浮かんでしまった過去の存在に、俺は首を振って抵抗する。

 違う違う。壱星との比較なんてどうでもいい。今、俺には考えなきゃいけないことがあるんだ。

 そう、蒼空とどうやってその先に進めばいいのかを……。

 初めから他人を受け入れ慣れていた過去のあいつとは違って、蒼空は完全に未経験だ。慣らすところから始めなきゃいけない。

 きっと最初は怖いだろうな……。キスをしながら体に触れて、少しずつ俺を許せる雰囲気に持っていけばいいのかな。

 あぁ、できるとは思えない。この俺に、そんなヤリチンみたいなこと。でも……正直、そろそろ我慢しきれなくなっている。ガッツいて引かれる前に、何とか覚悟を決めなければ。

◇◇◇

 蒼空と2人、ソファに隣同士に座ると、いつもと同じ優しいけれど熱の籠もった眼差しを向けられた。何度見つめ合っても何だか慣れずにソワソワしてしまう。

「蒼空……」
「智暁」

 名前を呼べば呼び返してくる。後頭部に手を添えれば首に腕を絡めて引き寄せてくる。

「んっ……んんっ」

 どちらからとも言えないタイミングで唇同士が触れ合った途端、間髪を入れずに舌が入り込んできた。

 いつも通りの俺達のキス。それでも何とか主導権を握ろうと蒼空を押し倒すと、熱い口腔内から一度離れて、耳元に顔を近づけてみる。

「あっ……何、くすぐったい」

 蒼空の体がピクリと跳ねて、大きな手が頭を引き剥がそうとしてきた。それを避けるように、今度は首筋に唇を触れさせる。

「んふっ……やば、智暁エロ。その動き」

 クスクスと笑う度に蒼空の喉が小刻みに震える。

「蒼空」
「何、智暁?」

 返事の代わりにチュッと音を立ててキスをしながら、Tシャツに指を滑り込ませて脇腹を撫でる。

 すると、蒼空も対抗するように背中側から服に手を入れてきた。相変わらず負けず嫌いな奴だ。ゆっくりと腰を撫でる手が意外とくすぐったいが、声が漏れないように再び首筋にキスをした。

 それと同時に脇腹を上へとなぞっていき、胸元を探ってみる。

「……あ、智暁、それって」

 蒼空はまた楽しそうにクスクス笑い始めた。

「あっ、やっぱそういうことするんだ?智暁、ちょっと……」

 ようやく見つけた控えめな突起を指先で転がそうとすると、蒼空は服の上から俺の手を掴んだ。

「何だよ、ダメなの?」
「ダメじゃないけど……」

 あぁ、やっぱまだ怖いのか。こいつは初めてなんだもんな。

 顔を上げてみると、蒼空は笑いを堪えるかのように口元をモジモジと動かしながら目を伏せていた。緩やかなカーブを描く睫毛が揺れる。

「……蒼空、ごめんんっ?!」

 手を止めて謝ろうとしたその瞬間、かなり強い力で頭を引き下げられて唇を奪われた。そのまま蒼空は俺の上へと覆いかぶさるように体勢を変える。

「んっ、まっ……蒼空っ」

 突然のことに、俺はされるがままだった。口を開こうとすればすぐにまた塞がれ、歯がぶつかるのもお構いなしに舌を押し込まれる。

「智暁っ……」

 名前を呼ぶ瞬間だけ唇が離れるが、すぐにまた噛み付かれる。蒼空の両手が俺のTシャツに入り込み、胸元を乱暴に弄られる。

「……あっ、んっ……はぁっ……」

 右手の親指で乳首を捏ねられ、左手は腰の下に捩じ込まれる。キスで硬くなった股間を太ももで押し上げられたタイミングで、俺はようやく強く抵抗した。

「そらっ……ちょっ!……ちょっと待って!」

 蒼空の顔の前に手を差し込んでキスを拒み、太ももを押し返す。

「何?待てない」
「いや、違うんだって。待てって」

 蒼空は俺の手を握って退けようとしてくるが、しばらくその攻防を続けてるうちに、ようやく諦めてくれた。

 想像してたのと全然違う。何で俺が迫られてんだよ。

 蒼空は「はぁはぁ」と荒く呼吸しながら、少し怒ったように顔を顰めた。

「何だよ、智暁。俺何か間違えた?」
「だ、だってこれじゃ……俺が押し倒されるのは違うじゃん」

 2人で同時に体を起こし、座った状態で向かい合う。

「……違わないだろ?」

 口元を拭いながら、不満気な目で俺を見る蒼空。

「だって、蒼空、それは……俺の役目だろ……?」
「え……?」

 もしかしたら、俺は勝手な思い込みをしていたのかも知れない。壱星相手だと俺が攻める側だったから……。

 前髪を掻き上げながらしばらく考え込んだ後、蒼空は半笑いで目を泳がせた。

「……男同士ってさ……そういうのどうやって決めんの?」

 そう言われてみれば、どうやって決めるんだろう。

「俺もわかんない……ってか、自然と決まるもんだと思ってた」



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