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まっかっか

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「み、見ないでよ……」
 恥ずかしがって体を縮めるレイ。それにしても百点満点のテストで12点はひどかった。

「いや……。なにか事情があったのか? 遅刻したとか」
 聞いてみたがそんな事は無いはずだ。遅刻すれば目立つ。たぶん、真正直にテストを受けてこの点数。
「科目は……歴史?」
「そんなにまじまじ見ないでよ」
 信じられない。歴史と言えばいつかの授業で指名されて、答えていたはず。そうだ、ラダイト運動。

「授業の時は答えてたじゃん。機械に負けるのは悲しいとか」
「いや……。感想とかはすぐに出るんだけどね。テストを対策するって言う行為自体に忌避感があって」
 突然話題が難しくなった。でも、なにかレイの中身が見えそうなテーマではある。
「なんでぼくたちはテストを受けるんだろう」
「えぇ?」

「あぁ、また余計な事を考えちゃった」
 本題はあまりにも酷いテスト結果についてのはずだ。レイには独特の感性があって、何かを知ると想像力が働いてしまうらしい。素敵な事ではあるが、授業やテストでいつも引っかかっていたら、覚えられるモノも覚えられない。

「いつもこんな事、考え始めちゃうんだよ。ラダイト運動って答えた日も、家に帰ってからロボットと雇用の問題とか、シンギュラリティとか調べちゃって」
「それでテスト勉強はしていないと?」
 腕を組んで言ってみた。反抗してくるだろうか。
「……すいません」
 素直だ。謝る辺り、本音では良い点数を取りたいのだろう。なんだか可愛らしい。

「分かったよ。学校の勉強、テスト対策は俺が教える」
「えっ、いいの?」
 仕方ない。という風に頷いて見せた。これでもっと簡単にレイと居られる。そんな思惑もあるが、実際12点は教えないと不味いだろう。

「今日はもう遅いから、明日以降かな。英語の小テストも返ってくるし」
 いつの間にか紫織さんから受けたショックは和らいでいた。良い方向に行く気がする。レイに教えると言う目的があれば、授業や個人でしている勉強にも熱を入れやすい。

「やったね」
 レイが両手でガッツポーズをした。悔しいけど可愛らしい。
「ん?」
 ポーズの後、レイは流れるようにトートバッグを部屋の隅まで弾いてしまった。露骨に怪しい。

「レイ? なにしたの?」
「いや? べつに」
 そっぽを向いてシラを切る。そうされたら確認しないと気が済まない。トートバッグを漁ってみる。

「あっ。ヘンタイ! 見ないでよ」
 バッグの中にはグシャグシャになったテスト用紙だらけだった。

「俺が変態で、レイはおバカか」
 テスト用紙は悲しい位に赤点ばかりだ。
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