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1章
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しおりを挟む優人さんと番になってから2ヶ月が経った
少しづつ身体の傷が癒えてきていた事もあり、声が出せない事で限られてしまうけど出来るバイトがあるだろうと、週に1回程を目安に探していればそれを見た優人さんから猛反対をされてしまった。
しまいにはかずさんにも連絡され最終的には優人さん、かずさん、優人さんの両親から「気にしなくていいから今はまだゆっくり休みなさい。」と言われてしまった
"もう大丈夫なのに…" そう思いながらもこんなにも心配して大事にしてくれる人がいるというのはすごく嬉しくて、、、
それならせめて!と家事の腕を上げようと毎日頑張った
少しづつだけど腕を上げていく料理に優人さんは欠かさず褒めてくれ、掃除や洗濯をしていれば「ありがとう。」と言いながら頭を撫でてくれた
その全部が嬉しくて俺の心を満たしてくれた
3月に入り、優人さんの学校が春休みに入れば、2人で思い出を沢山作ろうと色んな所へ連れ出してくれた
カメラを買い、どんどんと増えていく写真にお互い一言添えてアルバムを作っていく
産まれてから今までそんな物などなかった俺には憧れで夢だった
優人さんはそんな俺の夢をこの休みでどんどん叶えてくれた
デートをする。手を繋ぐ。
お互いに頼んだものを食べさせ合う。
お揃いのものを身につける。
人によっては幼稚だったりするものだろうが笑顔で応えてくれた
「なつがしたかった事、したい事全部やろう!」
そう言って笑う優人さんが眩しくて暖かかった
楽しかった休みも終わりが近付いてきた日の夜、2人で海に来た
まだ寒いこの時期の海は少し暗かったけど、しっかりと握ってくれる優人さんの手の体温のおかげで怖くはなくて
少し歩いた所で腰を下ろす
押し寄せる波の音に耳を傾けていれば、優人さんが俺の名前を呼んだ
目を向ければポケットから取り出せれた四角い箱
最近観た映画で見た事のあるそれに視界は歪む
「なつ……俺と番になってくれてありがとう。遅くなってしまったけど、よかったらつけてくれるかな?」
そう言いながら開かれた箱からはリングが見えて、、、
その瞬間ぼろぼろと溢れ出す涙
そんな涙を優しく拭ってくれる手を取って頷けば
「指輪、俺が嵌めてもいい?」
そう遠慮がちに問いかけてきた優人さんにまたこくりと頷けば、俺の左手をそっと取り薬指に嵌めた
嵌めてもらった左手を少し上に上げれば街灯の明かりに当たりキラリと光った
そんな俺の横顔を見ながら優人さんが「綺麗だ。」と呟いた
そっと視線を指輪から優人さんに向ければまっすぐに俺を見つめる瞳と重なった
"優人さん、好き好きだ。暗闇の中をひたすらに無我夢中で歩いていた俺に、たくさんの優しさや愛情をくれた。そんなあなたにこの感謝を、愛しく思う気持ちを直接伝えたいのに伝えられないのが辛い"
ひたすら溢れ出す涙をまた優しく拭ってくれる手を取り自ら絡ませる
少し驚きの表情を浮かべる優人さんを見つめながら心の中で何度も言葉を送る
だけど声に出そうとすれば、はくはくと口が動くだけで言葉が優人さんの耳に届くことはなくて
"優人さん……優人さん………"
"好きです…愛しています……"
"あなたと番になれて私は幸せです"
涙でぐちゃぐちゃになった顔を気にすることなくただひたすらに口を動かした
自分の声で伝えたくて、、、
何度目だっただろう
「……き……で………あぃ……ま……」
ほんとに小さくだけど聞こえた自分の声に息が止まりそうになりながらももう一度動かせば
「す……き………です」
途切れながらも出てきた言葉
その瞬間強い力で腕をひかれ気が付けば優人さんの腕の中にいた
「なつ、、、、こえ、、、」
そう言いながら涙を流す優人さんを俺も負けじと強い力で抱きしめた
「ゆぅ…と……さん……ぁ………い…して……ます」
「俺も、愛してるよ、、、」
そう言って身体を離し俺の顔を見つめながら頬を撫でた
そしてゆっくりと近付いてくる顔に俺はそっと目を閉じれば重なる唇に身を委ねた
𝓯𝓲𝓷
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