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1章

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  いつまでそうしていただろうか
  そろそろ離れようかと思うけど離れがたくて、、、
  "あともう少しだけ....." そう思いながら優人さんの胸元で目を閉じる
  すると少しだけ早く動く心臓の音が聞こえてチラッと優人さんの顔を見ればほんのりあかくて、、、

  すると見られているのに気付いた優人さんと目が合う
  さらに顔を赤くさせながら「見ないで....」なんて言いながら顔を背ける
  その顔が見たくて優人さんから少し離れ顔を覗き込む
  「ほんとにやめて....」と片手で必死に隠す姿は耳が真っ赤で笑みがこぼれる


  母親の事でまだ不安が完全に消えた訳じゃない、、、
  でも本当の事を知ってこうやって俺の為に泣いてくれる人がいる。
  力になりたい、傍にいたいと言ってくれる人がいる。
  そのおかげで少しだけ強くなれたような気がした。


  「もう遅いしそろそろ寝ようか。」

  その声に時計を見れば22時をさしていて、優人さんが俺を布団に寝かせる
  だけど倒れたあの時からほぼ一日寝ていたから正直眠くはない、、、むしろ元気だ
  そう思った時に少しの悪戯心が顔を出す

  近くに置いてあった紙とペンを持ち 〈さっきまで寝てたから寝れない!〉と書いて見せれば


  優人さんが「えっ?」と驚いたような困ったような顔をしたかと思えばすぐにニヤッと笑って「しょうがない。じゃぁ俺が子守唄を歌ってあげよう。」なんて言い出す

  まさかこんな風に乗ってくるとは思わなくて横になったまま驚いていれば本当に歌い出す
  おまけにかけた布団の上から胸元を軽くトントンと一定のリズムでたたく
  "これ完全に子供扱いされた、、" なんて思うけどそれがひどく心地良い。あんなに眠れないと思っていたはずなのに瞼がどんどん閉じていき眠りについた、、、


  翌日目を覚ませば優人さんの姿は見えなかった、、、
  "帰ったのかな...." 寂しくそう思っていれば扉が開いた

  「あっ。起きてたのか?」

  顔を見せた優人さんがそう聞いてきた
  やり取りの為にすぐに紙とペンを持ち書いていく

    〈ついさっき起きた。〉
  「そっか、戻ってくるタイミング良かった。」
   〈どこか行ってたの?〉
  「病院泊まること出来なかったから、昨日なつが寝た少し後に家へ帰ったんだ。」
   〈そうだったんだ、、、〉

  きっと帰った時間も遅かっただろうにこうして朝早くにきてくれた優人さんに嬉しくなる。すると

  「かずさんに昨日書いてくれた紙渡した.....」
   〈そっか、、、ありがとう〉

  しばらくの沈黙が流れた後にノックの音
  かずさんが入ってきて診察をする
  体調は運ばれた時にした点滴やたっぷりの睡眠でだいぶ回復していた
  でも体にある無数の跡や傷の事を考えてもう少し入院する事になった
  すると少し言いにくそうにかずさんが伝えてきた

  「優人くんから紙受け取って全部読んだ...あんなに何回も会っていたのに気付いてあげられなくてごめん.....。」

  そう言って頭を下げるかずさんに慌てる

  「俺の前ではいつも笑顔で話してくれたりする姿を疑うことなく一緒に過ごしてた。まさか1人であんなに苦しんでいたなんて、、、、」

  そう言って下唇を噛み悔しがる姿に胸がいたい
  でもその痛みは幸せなもので
  自分の事でこんなにも感情あらわに悲しんだりする人がいるなんて....どれだけ自分は幸せな人間なんだろう
  何度も "死にたい、消えたい" そう思った
  だけど2人のおかげで俺は今 "生きていたい"
 そう思える
  だから、、、ゆっくりとベッドから降りて2人に近付く
  2人の目の前に立って笑顔でありがとうと言った
  まだ声は出ないけどどうしても伝えたかったから
  だけど伝わったのか2人が俺を抱きしめてくれた
  
  すると思い出したようにかずさんが話し始める

  「大事な話があったんだ。なつくんの体の傷相当酷いものだったから病院側から警察に連絡がいってるんだ。だからごめんね、なつくんがくれたお手紙の中から少しだけ抜粋して軽く説明してる。なつくんからも落ち着いたら話を聞きたいと言っていたよ。」

  その瞬間ドクドクと心臓が早くなる
  警察となれば母親の耳にもそのうち入るだろう
  どうなるんだろう、、、ここに怒鳴り込んできたりするのかな、、、
  そうなると2人に迷惑がかかってしまう
  それだけは嫌だ、、、
  
  そう思った俺は母親にメッセージを送った

  
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