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1章
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しおりを挟む話す事が出来ないから紙に全てを書くことにした
まだ勤務中のかずさんは仕事に戻り、優人さんと2人だけの病室で用意した紙を前に深く深呼吸をする
ペンを持つ手は震えていて、、、
伝えると決めたけど不安が大きくて
本当に伝えてもいいのか。
あんな風に言っていたけど伝えた後にやっぱり嫌われるんじゃないか。
不安が次々と溢れてきてとまらない
すると優人さんが俺の手を握り『大丈夫、ゆっくり、少しづつでいいから。』そう言ってくれた。
そして俺はペンを走らせた
父親はおらず、どこの誰かも分からない事
オメガだと分かった瞬間母親の扱いにひどさが増し、学校に行かせて貰えなかった事
やっと見つけたコンビニバイトも突然のヒートで出勤する事が出来なくてクビになった事
そして、その時起こったヒートの時に何があったのかを、それをきっかけに母親から身体を売ることを強要された事も、、、
ぼろぼろと涙を流しながらも何とかペンを走らせる
そしてあの日優人さんにあんな事を言った理由について触れる
月に決まった額を稼がなければいけない事
それが出来ずに焦っていた事
前に一度それで死ぬんじゃないかと思う程の暴力をふられたこと
それでどうしようもなくなってあの言葉を言ってしまったと、、、
あの後家に帰れば母親に殴られ、知らない場所へ連れていかれた事も
そこで何があったのかも、、、
された事を書く時には頭の中で何度もあの光景が思い出されおかしくなりそうだった
ガタガタ震え荒くなる呼吸にペンが止まる
その時優人さんが俺の手からペンを取り抱きしめる
『大丈夫。もう大丈夫だから。』そう言いながらゆっくりと背中を撫でる
「今日はもう終わりにしようか....」
俺の事を気遣いそう言ってくれる優人さんに首を振り再びペンを手に取る
すべてを書き終えた時、優人さんがずっと握っていた手を離し僕の頭を撫でると『ありがとう。読んでもいいかな?』そう優しく問いかける
俺が頷いたのを確認した後に視線を手紙に移す
読んでいる間また襲いかかる不安
どんな表情をしているのか見るのが怖くて下を向いたままただただ読み終わるのを待つ
たった数分だったと思う
だけど恐ろしい程に長く感じた
恐る恐る優人さんの方をみれば、下を向いて体が震えていた。
どうしたのかと思って近づく為に握られた手を離そうとしたらそのまま引き寄せられ思いっきり抱きしめられた。
「ごめん……。あの時なつの様子がおかしいとは思ったんだ……元気がなくて何か思い詰めてる雰囲気を感じてたのに………言われた事にショックをうけて、自分の気持ち優先であんな事を言って去ってしまった。あの時俺がちゃんと……ちゃんと聞いていたら………あの後なつがひどい目にあわずにすんだのに………。」
そう泣きながら言った。
優人さんは何も悪くない.....そう言いたいのに言えない、、何度も首をふりながら否定する
すると優人さんは少し離れて俺の顔を見つめながら
「もう二度となつにこんな思いはさせない。」
そう言って先程よりも強く抱き締めた
今までより強い力で回された腕は少し苦しかったけど嬉しくて、、、
だから俺は優人さんの背中に手をまわし強く強く抱きしめ返した、、、
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