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1章
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しおりを挟むこの気持ちを消す為にも完全に離れなくては、、、
そう思った俺は連絡先を消すことにした
"最後に何かメッセージを送った方がいいかな...いや、最後にみた優人さんの顔を思い出せ。あれはもう嫌われただろう、、、、そんな相手からメッセージがこられても迷惑かもしれない"
そう思ったら送る勇気なんかなくて、、、
結局何も送ることなくブロック削除した
いつの間にか寝ていたようで目が覚めれば部屋が明るくなっていた
"準備しなきゃ...." まだダルい体にムチを打ち用意を始める
外に出れば青空が広がっていた
目の前を小学生達がかけて行く
無邪気に笑い合いながら走っていくその姿に羨ましさが溢れそうになる
物心ついた時から最低限の生活すらなかった自分とは全然違うその姿がただただ羨ましくて
静かに目を閉じてその小学生に背を向けて歩き出す
待ち合わせ場所へ着き既に待っている男へ声をかけようとした時に気付く
"こえが、、でない、、、?"
何度も口を動かすけど声は出てきてはくれなくて、、、
しかたなく男の肩をたたき合図する
そのままホテルへ向かいいつも通りの流れで事をすます
結局1日声が出ることはなくて、、、
だけど風邪が酷くて出ないのかなんて軽く考えていた
どうせ合う人に俺の体の事を心配する人なんかいない。ヤレれば満足なんだから、、、
声が出なくても何も問題はないだろう、、むしろその方が好都合なんじゃないか、とまで考えていた
体はダルいまま声も出ず1週間が経った頃
"今日はいつもより酷いかもしれない....目眩までしてきた...." そう思いながら家に帰れば玄関前に人の姿
恐る恐る近づけばかずさんだった
「なつ!!何日も連絡が取れないから心配してたんだよ、、、」
そう言って俺の方へ近付き腕を掴む
その時痛みが僅かに走り顔が歪む
「あっ、、、ごめん。」
そう謝るかずさんに俺は首を振る
かずさんの掴む力は決して強くなんかなかった
あの日殴られ傷つけられたのが治りきる前に他の人にも同じように乱暴にされる事が増えたからだ
『なんだお前そっちもいけんの?』そう言えば返事を聞くことなくやられる
声の出せない俺はただ黙って受け入れるしかなかった、、、
「なつ、、、大丈夫?」
何も言わない俺にかずさんが心配そうに声をかける
それにも黙って頷く事しか出来なくて、、、
すると「なつ、、、」と聞き覚えのある、かずさんとは違う声で名前を呼ばれる
視線を向ければ優人さんが立っていた
「なつと連絡が取れなくて困ってたら駅で見かけて、、、なつがかずさんと会うって言ってた時に見た事があったから、、、それで思わず声かけて一緒にここに来た。」
そう話す優人さんに驚きが隠せない
だって嫌われたと思っていたから、、、
まさかたまたま見かけたかずさんに声を掛けてまで会いに来るなんて、、、
そう思っていたらいつの間にか優人さんも俺の前に来ていて
「なつ、、、何があったんだ?」
「何かあるのなら話して欲しい。助けになりたいんだよ、、、」
そう話す2人に涙が出そうになる
でも2人に知られる訳にはいかない
ここまで来てくれた2人には申し訳ないけど無視をして家に入ろうと向きを変えた時だった
視界がグラッと揺れる
"やばい、、、" そう思った時には体が倒れた
目が覚めると見慣れない真っ白な天井
さらに白いベッドに白い布団どうやら病院にいるみたいだ
起き上がろうと動けば手に柔らかい感触がする
見れば頭をベッドに乗せるようにして寝ている人が見えた
思わず手が伸びて顔にかかる髪を指でかるく触れれば優人さんがそこにいた
その時ふと優人さんの髪を触る自分の腕が目に入った
拘束された時に出来た跡、タバコを押し付けられたであろういくつもの跡が見える
思わずバッと布団の中に腕を隠す
"見られた?この腕を....?"
"いや、優人さんだけじゃない、あの時かずさんもいた、、、かずさんにも見られた....?"
あの日はただ体に染み付いた気持ち悪さをとろうと必死だったからどんな風になってるかなんて確認していなかったし、あれから行為の度に傷つけられるようになったから気にもしていなかった。急いで自分の体を見れば殴られた時に出来たであろう青あざに、腕と同じようにタバコを押し付けられた跡、、、
この体を見ておかしいと思う人がほとんどだろう。おまけにここは病院だ、、、どうしよう、、、あの母親に連絡がいくのだろうか。
その時母親がどんな反応をするのか分からない。また殴られたりするんだろうか、、、恐怖でガタガタと震える体。
次第に呼吸が荒くなっていく
"い…いき……が……うま…く…でき…ない……。"
"どうしよう"
そう焦れば焦るほどどうやって息を吸って吐いていたのか分からなくなってくる
気付けばぼろぼろ流れてくる涙に手先が冷たくなっていく感触
"こ…わい……ゆ…ぅ……と……さん"
そう思って手を伸ばすが震える手は届かない
するとモゾモゾと優人さんが動き起き上がる
顔を上げ俺の顔を見た瞬間慌てて駆け寄る
「なつ!!大丈夫か??」
そう焦って声をかけた瞬間扉がひらき
「優人くん、なつくんの様子はどうだい?」
そう言ってかずさんが入ってきた
だが、俺たち2人の様子がおかしい事に気付きすぐに掛けよれば
「過呼吸を起こしたんだね。」
「なつ、大丈夫。ゆっくり、、、吸いて、はいて、、、」そう優しく声をかけて背中を撫でてくれる
かずさんのおかげで落ち着いてきてゆっくりと深呼吸をする。すると
「まだ疲れてるだろう、今日はゆっくり休んだ方がいい。」
そう言ってゆっくり俺を寝かせれば頭を撫でられる。
優人さんも近付いてきて手を握り「かずさんの言うとおり今はゆっくり体を休めよう?」そう言ってきた。
そんな2人の心地良い温かさに次第に目が閉じていく、、、『おやすみ。』そう囁かれ俺は再び眠りについた、、、
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