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1章
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しおりを挟む初めて向けられた優人さんの笑顔に、自分でも分からない感情が芽生え戸惑っていれば
「おーい!なつ?どうした?」
そう呼びかけられ、ハッとする
「なんでもない、、、。」
「そっ。そんでなつは?」
「なにが?」
「いくつ~とか学校はどこ~とか。」
そう聞かれ戸惑う。
なんて答えようか迷っていた時、優人さんの携帯がなった
「ちょっとごめん。」
そう言って電話に出る。
終わるのを静かに待っていれば
「ごめん。行かなきゃ行けなくなった、、、。また今度な。」
そう言って急いで行ってしまった
正直助かった
夢もなければ学校にすら行ってない、、、そんな俺が話すことなんてなにもないから。
それから数日優人さんと会うことはなかった
"学校が忙しいのかな?今日も会えないのかな...."
会ってあの日と同じ事を聞かれたら困るのにそんな事を考えてしまう
もう少しで公園だ。そう思っていたら少し先に見覚えのある男性が歩いていた
"かずさん、、、?"
そう思ったら駆け出していた。
追いつき腕を掴めば驚いた様子でその男性が振り向く。
「やっぱりかずさん、、、。」
「あっ、、なつくん。」
かずさんはとても疲れた様子だった。
"仕事忙しかったのかな...."
そう思ったのが顔に出ていたのか
「ごめんね、連絡全然出来なくて....」
そう謝った
一緒にご飯を食べたあの日から、かずさんからの連絡は途切れがちだった
「別に、、、忙しかったんですよね、、疲れた顔してる、、、」
それを聞いたかずさんは力なく笑う
そして心配そうに
「ヒートは?大丈夫だった?」
と聞いてきた。
かずさんは、パートナーのいない俺のヒートの時にはまとめて時間をとってくれ面倒をみてくれていた
でも今回はそれが出来なかったから気にしてくれたんだろう。
かずさんと知り合ってしばらく経った頃、ご飯の誘いをヒートを理由に断った時があった
すぐに連絡があり、『体調は大丈夫?必要な物があれば持っていくから教えて欲しい。』そんな言葉が返ってきた。
初めてだった。
今まで出会った人達は『じゃぁ濡れやすくなってんの?』そう笑いながら言えばろくに準備をすることなく行為に及ぶ人ばかりだったから
だから自分の体調を気にかけてくれる人なんて初めてだったんだ、、、
その夜仕事を終え家にきたかずさんは
「あれから体調は?一応軽めに食べられるゼリーとか飲み物買ってきたんだ。」
そう言って優しく笑った。
数分まで乱暴に抱かれていた事やヒートで気持ちが不安定になってる事もあってか、ついかずさんの前で泣いてしまった、、、。
俺の涙をみたかずさんは慌てて俺に近付くと抱きしめながら背中を撫でてくれた。
「大丈夫? なつくんさえ良ければ落ち着くまでこうしてるから、、、」
初めての優しいぬくもりに俺は思わずかずさんにすべてを話したくなってしまった
でもだめだ、、、これ以上迷惑をかけてはいけない。
なんとか出てきそうになった言葉を飲みこみ、ただただ泣いた
かずさんはそんな俺の気持ちを察したのか、それ以上は何も言わずにただ静かに抱きしめてくれていた
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